労働政策審議会(清家篤会長)が12月6日開かれ、事務局の厚生労働省が2025年度の予算概算要求と主要施策と11月22日に閣議決定された総合経済対策の労働関係施策のほか、各局所管の労政審分科会・部会の審議状況などを説明しました。
最低賃金を含む持続的な賃上げを軸に「三位一体の労働市場改革」や「多様な人材活躍」などの推進を掲げる厚労省の方針に対して、労働者側と使用者側の両委員は実効性ある事業の展開と中小企業への支援強化を求めました。
冒頭、労働担当の鰐淵洋子副大臣が「政府を挙げた最重要課題のひとつが賃上げ。今年の賃上げは5%を超える33年ぶりの高水準となったが、一過性ではなく持続的に定着させていくことが重要」と強調。
賃上げの環境整備のための具体策を盛り込んだ総合経済対策を11月に閣議決定したことに触れ、「地方における更なる賃上げの機運醸成に向けて今年度の地方版政労使会議も充実させていく」と述べました。
厚労省は労働分野の概算要求で、(1)最低賃金・賃金の引き上げに向けた支援、非正規雇用労働者への支 援(2)リスキリング、ジョブ型人事(職務給)の導入、労働移動の円滑化(3)人材確保の支援の推進(4)多様な人材の活躍促進と職場環境の改善に向けた 取り組み(5)女性の活躍推進――の5点を推し進めます。
具体的な項目として「最低賃金・賃金の引き上げに向けた中小・小規模企業支援、非正規雇用労働者への支援」「障害者や高齢者、多様な人材の活躍推進」「ハラスメント防止対策、安心安全な職場環境の実現」「フリーランスの就業環境の整備」「男女間賃金格差の是正に向けた取り組みの推進」「子育て中の女性に対する就職支援の実施」――など10項目を挙げました。
これを受けて労使委員はそれぞれの課題意識を基に厚労省側と質疑を展開。
最低賃金と賃上げを中心にした意見が目立ち、使用者側からは「最低賃金の決定プロセスはデータに基づき、納得感のある決定が大切だ。中小・小規模事業者にとって支払い能力を超えた過度な引き上げにならないよう注視し、中小企業への支援も強化すべき」などの声が聞かれました。
一方、労働者側からは「中小企業の賃上げは全体平均を下回り、企業規模間の格差が拡大している。労務費を含む価格転嫁や取り引き慣行の問題が原因となっているので、その打開に向けた政策を推し進めてほしい」などとの指摘が挙がりました。
厚生労働省が12月6日発表した毎月勤労統計調査の10月速報値(従業員5人以上)によると、労働者1人 あたり現金給与総額は29万3401円(前年同月比2.6% 増)で34カ月連続のプラスとなりました。
一方、物価上昇分を差し引いた実質賃金指数(20年=100)は82.9(同0.0%)で、8、9月と続いたマイナスからは3カ月ぶりに抜け出しました。実質賃金は夏ボーナスの寄与で6、7月と2カ月連続でプラス転換しましたが、ボーナス効果が消えた8、9月と再びマイナスに戻っています。