労働者派遣法に基づき、派遣元が「労使協定方式」を選んだ際に用いる来年2025年度の一般賃金水準(一般基本給・賞与など)について、厚生労働省は直近の統計データを用いて集計しました 。
8月23日に開かれた労働政策審議会労働力需給制度部会(山川隆一部会長)で公労使委員に概要を説明、8月中に局長通達として発令する見通しです。政府が「働き方改革」の一環として同一労働同一賃金を導入した際、派遣事業に適用した方式で、2020年度のスタートから来年度で6年目となります。
いわゆる「同一労働同一賃金」に伴う20年4月施行の改正派遣法は、派遣労働者の賃金や待遇について「派遣先均等・均衡」(派遣先方式)か「派遣元による労使協定」(労使協定方式)のいずれかの待遇決定方式を義務化。この選択制2方式のうち、「労使協定方 式」を採用した場合には、局長通達の一般賃金水準より「同等以上」であることが要件となります。
施行5年目となる現在運用されている賃金水準は、「22年度職業安定業務統計」(ハローワーク統計)と「22年賃金構造基本統計調査」(賃構統計)の2種類が基になっています。
今回、局長通達で示す来年25年度適用分は、「23年度のハローワーク統計」と「23年の賃構統計」を最新データとして、一般賃金水準に用いる各指数も更新されます。
厚労省の説明によると、主要なものとして「通勤手当」は72円(時給換算)から73円に増加、「学歴計初任給との調整」は12.6% 、「退職金割合」は5%、「賞与指数」は0.02でいずれも「変更なし」となっています。
また、ハローワーク統計の職業計は30円増の1248円 。賃構統計の産業計は44円増の1320円で、昨年度より上がる職種が85、下がる職種は44となっています。なお、ハローワーク統計は、厚生労働省編職業分類をもとにしていますが 、25年度適用分の一般賃金水準から分類改定後のものを使用しているため、上がる職種・下がる職種の比較をしていません。
加えて、前年度の局長通達の本文に初めて「協定対象派遣労働者の待遇改善を進める観点から、改訂後の一般賃金水準を順守した上で、昨今の経済・物価動向及び賃金動向を勘案して賃金を決定するよう労使で十分に協議すること」と記載していますが、引き続き同様の文言を付す考えを明らかにしました。
厚生労働省が8月23日発表した2023年「賃金不払いが疑われる事業場に対する監督指導結果」によると、全国の労働基準監督署が扱った年間件数は2万1349件、対象労働者数は18万1903人、金額は101億9353万円に上っています。
このうち、労基署の指導によって23年中に賃金を支払ったのは各2万845件、17万4809人、92億7506万円。前年に解決した件数、労働者数は9割を超えましたが、金額は7割未満。これに対し23年は金額も91%と9割を超えました。業種別の件数と労働者数では「商業」が4407件(全体に占める比率は21%)・2万5320人(同14%)が目立ちます。