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「カスハラ」の問題意識高まる 政府が法規制を視野に実態把握

作成者: randstad|Jun 24, 2024 1:44:50 AM

顧客との対面現場に集中、困難な「定義」付け

サービス業などで顧客による著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント=カスハラ)を防ぐ法規制の動きが本格化しています。政府は6月11日に明らかにした「骨太の方針」原案の中に、カスタマーハラスメントを含む職場におけるハラスメントについて「法的措置も視野に入れ、対策を強化する」と明記。

カスハラ防止策に向けた検討を初めて政府方針に盛り込みました。ただ、他のハラスメントと異なる側面もあり、どのような規制を敷くのが効果的なのか、今後の論議が注目されています。

 カスハラはコトの性格上、小売り、外食、宿泊などのサービス業で顧客との対面現場に集中しています。生活に関連するサービス業などで構成する労働組合・UAゼンセンが所属組合員約3万3000人を対象に実施したアンケート調査によると、直近2年以内に被害に遭った人は46.8%で、半数近くの人が経験しています。

 最も印象に残るカスハラを挙げてもらったところ、「暴言」の39.8%がダントツ。次いで、「威嚇・脅迫」の14.7%、「同じクレームの繰り返し」が13.8%、「長時間拘束」の11.1%、「権威的(説教)態度」の10.2%などが目立ちます。

 流通部門の具体例では「"女のくせに"と言われ、後日、顧客が日本刀を持って再来店した」「会計が終わっていないので声をかけたら、クレジットカードを投げつけられ、"何様のつもりだ"とどなられた」など、一線を越えた内容が列挙されています。

 これらに対して被害者側がどうしたかといえば、「謝り続けた」「毅然と対応」「上司に引き継いだ」がそれぞれ3割余。しかし、個人ではなく企業側の対応となると42.2%が「特に対策はない」というのが現実で、4年前とほぼ同じでした。「マニュアル整備」「専門部署設置」が少し増えたものの、組織としての対応が後手に回っている実情が浮かび上がっています。

 こうした実態の改善に向けて、政府・与党側も法制化に向けた動きを強めています。自民党はカスハラ対策プロジェクトチームを発足させ、カスハラの定義や労働者保護、企業などへの支援、消費者の権利と責任などについて、法的な明確化を求めました。

 これまで法制化されたハラスメント対策としては、男女雇用機会均等法でセクシャルハラスメント(セクハラ)、労働施策総合推進法でパワーハラスメント(パワハラ)防止を規定しています。

カスハラはこれらに続くハラスメント規制の一環で、これまでにも厚労省が企業向け対策マニュアルを作成するなど、一定の対策は打ってきましたが、法規制を本格化しようとすれば、セクハラやパワハラにはない独自の問題点をクリアする必要が生じます。

セクハラやパワハラは、会社など組織内部で生じることが多いため、経営者と従業員への周知徹底を図ることでかなりの改善を見込めますが、この点、カスハラは組織内部だけの問題ではなく、組織外の消費者の意識改革に訴えなければ大きな改善には向かいません。

普段の生活の中で、自身や家族が被害と加害の当事者になり得る「カスハラ問題」は、いよいよ国民的議論のステージに浮上してきました。