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実質賃金、プラス転換は今夏にも? 25カ月連続の“最長不倒”に終止符へ

作成者: randstad|Jun 17, 2024 4:53:51 AM

実質賃金のマイナス幅が2%前後から0.7%に大幅縮小

実質賃金のマイナスはいつまで続くのでしょうか。厚生労働省の統計では4月もマイナスとなり、これで25カ月連続と“最長不倒”を更新。ただ、今春闘の「大幅賃上げ」が奏功し始めており、プラス転換に向けた視界は良好になりつつあります。

厚労省が6月5日に発表した毎月勤労統計調査によると、4月速報の名目賃金は前年同月比2.1%増で28カ月連続のプラスだったのに対して、物価上昇分を差し引いた実質賃金は同0.7%減と25カ月連続のマイナス。名目、実質とも2年以上に及ぶ長期間の“足踏み状態”が続いています。

 実質賃金のマイナスは生活水準の低下を意味し、国民の消費意欲が盛り上がらない最大要因となっています。ただ、4月の結果を詳細に見ると、わずかな変化も出てきました。実質賃金のマイナス幅がこれまでの2%前後から0.7%に大幅縮小したことです。物価上昇が2.9%と3%台に近い一方で、名目賃金がこれまでの1%前後から2.1%の高い伸びになったことが縮小の主要因と考えられます。

 

名目賃金の柱である所定内給与(基本給)が4月は2.3%伸び、これまでの1%台から大きく上昇。1994年10月以来の高い伸びですが、言うまでもなく今春闘で大企業を中心にした大幅賃上げの影響が現われた結果と言えます。

 連合がまとめた最新の春闘6回目集計では、回答企業の平均賃上げ額は1万5236円(賃上げ率5.08%)。5000近い労働組合の約289万人分をカバーしており、前年同期より1.42ポイント上回っています。企業規模では、従業員300人以上の中堅・大企業が1万5784円(同5.16%)なのに比べ、同300人未満の中小企業は1万1361円(同4.45%)と少し低くなっています。それでも、5月末時点の結果としては、どちらも比較可能な13年以来、金額、賃上げ率とも最も高い水準を維持しています。

 これに対して、さらに規模の小さい中小・零細の場合をみてみると、日本商工会議所の調べでは、全国1979社の賃上げ(正社員)は平均9662円(同3.62%)で、従業員20人以下では8801円(同3.34%)とさらに下がっています。回答企業の半数が20人以下の零細企業であり、組合のない企業も多いことを考えると、経営者の相当な努力の跡がみられます。

 とは言え、大手並みに4%以上を賃上げした企業は3割余にとどまり、残る6割強は4%未満。19.5%が1%未満で、5.2%が「賃下げ」しています。全体に人手確保のための「防衛的」賃上げが6割ほどを占めるなど、中小・零細の“台所事情”を浮き彫りにしています。来年以降の賃上げは不透明で、物価上昇によるコスト増を製品価格に転嫁できる環境整備が持続の可否を握るとみられます。

 4月の毎月勤労統計には、早期回答した企業の賃上げ分しか反映されていない可能性が高く、5月以降はさらに高まるとみられます。また、6月以降は夏のボーナスが支給される時期で、賃上げ不足分をボーナスで補填する企業も多いと予想されることから、賃金をめぐる環境は力強さに欠けるものの、かなり好転しつつあるようです。