総務省が発表した「労働力調査(詳細集計)の2023年平均結果」によると、正規職員・従業員数は3606万人(前年比18万人増)で9年連続の増加、非正規も2124万人(同23万人増)で2年連続の増加となりました。失業者数は前年と同じ198万人でしたが、失業期間が1年以上の失業者数は59万人(同7万人減)で、コロナ明けの経済回復で人手不足が顕在化したことが背景にあります。
転職者数は328万人(同25万人増)と2年連続の増加。転職希望者数も1007万人(同39万人増)と7年連続の増加で、1000万人台を超えました。転職者は男性が151万人(同12万人増)、女性が177万人(同14万人増)で、女性の方が多くなっています。
また、非労働力人口(15歳以上で就業者と完全失業者以外の合計)4061万人のうち、潜在労働力人口(就業者でも失業者でもない求職者)は36万人(同1万人増)。この結果、未活用労働指標は6.1%(同0.1ポイント減)で3年連続で低下しています。未活用労働指標は労働力人口と潜在労働力を分母に、失業者、追加就労希望者、潜在労働力人口を分子にした比率で、失業者だけでなく、労働市場で十分に活用されていない層を幅広くとらえた指標です。
また、活発な転職市場を賃金でみてみると、23年の正社員の転職率は7.5%(前年比0.1ポイント減)と3年連続で7.5%前後の高い水準で推移。そのうち47.6%が30~50代のミドル世代の男性でした(求人情報会社調べ)。転職後に年収の上がった人は39.1%(同0.4ポイント減)で、平均では転職前の472.5万円から489.6万円に17.1万円(3.6%)上がっています。
リスキリング(学び直し)経験については、経験のある人は559.3万円(同25.1万円増)、経験のない人は419.5万円(同8.1万円増)となり、100万円以上の開きがありました。
また、7割の企業で残業対策を実施していますが、残業時間の減少幅は0.3時間程度にとどまり、若手社員の6割が残業の多さで転職を検討している模様です。企業に直近1年間の残業対策を聞いたところ、対策を実施している企業は70.2%にのぼり、業種では「2024年問題」を抱える「運輸・物流」が最多の78.8%ありました。
しかし、社員側に残業時間の削減について聞いたところ、「変わらない」が68.6%で最も多く、「減った」は18.7%程度。また、減った場合でも、昨年4月以前の月平均が14.8時間だったのに対して、4月以降は14.5時間とわずか0.3時間にとどまっています。また、「隠れ残業」の経験者は26.3%あり、理由は「労働時間と業務量が合っていない」「職場の文化として定着」「隠れ残業を評価する風潮」など、問題の根深さをうかがわせています。
残業が多いと転職を考えるかどうか聞いたところ、「考える」が18.9%、「やや考える」が36.6%で計55.5%にのぼり、中でも30代が65.0%、20代が62.0%と顕著な高さ。ワークライフバランスや自身の健康などに敏感な若者層の意識を浮き彫りにしています。