連合が3月15日発表した第1回春闘回答集計によると、ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率(771労組、加重平均)は5.28%で、33年ぶりの高水準。
また、有期・短時間・契約などの労働者は、賃上げ額(加重平均)が時給で71.10円、月給で1万5422円となり、いずれも引き上げ率が6%台で一般組合員を上回りました。
連合の芳野友子会長は同日夕の記者会見で、「交渉に真伨に応じ、社会の期待に沿った回答を決断した経営側にも敬意を表する」と延べ、今後の交渉と回答に期待をにじませました。
従業員300人未満の中小企業(358労組)の正社員になると、1万1912円、4.42%で、昨年よりは賃上げ額・率とも上回ったものの、5%には届いていません。大手の回答は正社員、非正規社員ともほぼ予想されたレベルであり、第2陣以降も高率で決着するとみられますが、中小で第1陣の平均を上回る回答が続くかどうかは予断を許さない状況です。
昨年の賃上げ率は連合の調査で3.58%、経団連の調査でも3.99%で、それ以前よりは高くなったものの4%台にも届きませんでした。このため、賃上げの恩恵を受けない家庭も含めた毎月勤労統計では、実質賃金が22年4月から今年1月まで22カ月連続のマイナスが続くという異常事態が続いています。
連合の芳野会長は初回の集計結果を受け、「物価高による組合員の家計への影響、人手不足による現場の負担増などを踏まえ、日本経済の成長につながる『人への投資』の重要性について、中長期的視点を持って
粘り強く真伨に交渉した結果と言える」と評価しながらも、さらに「先行組合が引き出した回答内容を中小組合、さらには組合のない職場へと波及させていくことで、すべての働く者の生活向上につなげていかなければならない」と気を引き締めています。
今年の賃上げは日銀の金融政策にも大きな影響を与えるとみられます。日銀が春闘の動向に注目するのは、バブル崩壊後に長年続けてきた超低金利、ゼロ金利の異常事態からの脱却の時機をうかがっているため
です。その条件としているのが「物価上昇を上回る賃金上昇」であり、具体的には消費者物価指数(CPI)の伸びが2%、賃金の伸びが4%程度での推移をイメージしています。
金融政策の正常化は喫緊の課題であり、今年の春闘がそのカギを握っています。日銀がマイナス金利政策の修正に踏み切るかどうかが焦点になっています。