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展望2024年(第3部)~経済・社会・労働法制

作成者: randstad|Jan 23, 2024 3:00:00 PM

長時間労働の是正と同一労働同一賃金を2枚看板とする「働き方改革」は、施行から5年が経過し、社会全体に浸透してきています。これと並行して、労働法制における最近のトレンドは「2024年問題」と「多様な働き方の支援」です。これに関連する動きが活発に展開されており、2024年は企業の経営層や人事担当者にとって見過ごすことのできない法改正が相次ぎます。

新年特集「展望2024年」の第3部では、準備や対応が必要な労働法制の要所と留意点についてお伝えします。

 

【労働法制】注目される「障害者雇用率アップ」「フリーランス新法」など

施行や実施が確定している主な労働法制をみてみると、障害者雇用率の引き上げ(4月)、例外なく全業種に時間外労働の上限規制適用(4月)、フリーランス新法(秋予定)――などが企業と密接にかかわってきます。

 

法定雇用率を段階的に引き上げ、短時間のカウントも導入(4月施行)

障害者雇用率の改正は、現行の法定雇用率で企業が2.3%となっているものを4月に2.5%、26年7月から2.7%に段階的に引き上げるものです。法定雇用率は障害者(身体、知的、精神)の常用雇用者数と失業者数を分子に、全ての常用雇用労働者数と失業者数の合計を分母に割った数字で、障害者の雇用数が増えると半ば自然に雇用率は上昇。また、短時間労働者(週10時間以上~20時間未満)の適用拡大で1人につき0.5人とカウントすることも同時期にスタートするため、雇用率が上昇する条件は現行よりもアップします。

厚労省の試算では、対象となる短時間労働者は約10万人いて、障害者の常用雇用者と失業者にこれを加えると約102万人。一方、全ての常用労働者と失業者に短時間労働者の半分(0.5人分)を足すと約3753万人となり、雇用比率は2.71%になります。短時間労働者の拡大カウントが法定雇用率の大幅上昇につながるとみられています。

厚生労働省が発表した2023年「障害者雇用状況」調査によると、企業の障害者雇用数は64万2178人(前年比4.6%増)と20年連続で増加し、実雇用率も2.33%(同0.08ポイント増)と、どちらも過去最高を更新しています。2.3%の法定雇用率を達成した企業は5万4239社で、比率は50.1%(同1.8ポイント増)と過半数を上回りました。

法定雇用率の未達成企業は5万3963社あり、そのうち不足数が0.5人か1人の企業(1人不足企業)が66.7%の多数を占めています。未達成企業のうち、1人も雇用していない企業は58.6%にあたる3万1643社と改善傾向はみられません。

 

「2024年問題」、全業種に時間外労働の上限規制適用(4月施行)

全業種への時間外労働の上限規制適用は、いわゆる「2024年問題」と言われるものです。2019年の労働基準法改正により、労働時間に対する規制が強まりましたが、運送業界、建設業界、医師らは業務の特殊性から5年間の猶予を与えられていました。

残業などの時間外労働は「月45時間、年間360時間」が原則となり、特別な事情があれば「年720時間」まで可能になります。大企業は19年度、中小企業は20年度から適用されていました。猶予期間がありましたが、現場の対応は準備が整っていないのが実態です。国土交通省によると、物流業界の従業員数は約226万人で、そのうちトラック運送業は194万人、それもほとんどが中小企業。運送物は日用品がダントツに多く、金属製品、食料工業品なども運んでいます。物流全体の4割程度を占め、国民生活にとっては必須の産業になっているだけに、どの程度の不都合が生じるのか注視が必要です。

 

発注側の企業に知識と理解が不可欠、フリーランス新法(秋予定)

いわゆるフリーランスを保護する「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護新法)。発注者に契約内容を書面などで明示することを義務付けるなど、立場の弱いフリーランスの労働環境を守るのが目的です。新法の骨子はもっぱら、事業を発注する側の「特定業務委託事業者」の規制を強め、受注側の「特定受託事業者」が不利にならない内容にしています。

具体的には、発注者に対して業務内容や報酬などの契約明示を義務づけたほか、報酬を相場より著しく低く設定したり、契約後に不当に減額したりすることも禁止。報酬の支払い時期を、"製品"を受け取った日から60日以内とすることも義務化しています。また、フリーランス側が出産、育児、介護と両立したい場合は、配慮が必要となります。募集広告などでの虚偽表示を禁止するなど、「雇用者」に適用される内容が盛り込まれています。

発注側がこれらに違反した場合、フリーランス側は国の相談機関に相談でき、国は違反行為に対して指導や勧告などを行うことができます。命令に従わない場合は50万円以下の罰金を科します。

 

多様な働き方の支援拡充も準備中

施行期日と内容が確定している労働法制のほかにも、多様な働き方の支援を目的に施行の準備が大詰め段階の政策も目白押しです。そのうちのひとつが「仕事と育児・介護両立支援」で、厚生労働省は育児・介護休業法や次世代育成支援対策推進法の改正に入ります。

改正の主なポイントは、子供が3歳~小学校就学前までの、親の仕事との両立支援策で、企業は始業時刻の変更、テレワーク等、短時間勤務、保育施設の設置運営、新たな休暇の付与といった措置の中から二つ以上選択採用し、社員はその中から一つ選べるようにします。また、男性の育児休業取得を促進するため、公表が義務付けられている1000人以上企業から300人超企業に基準を引き下げます。「くるみん」マークの取得にあたり、男性の育児休業取得率を「10%以上」から「30%以上」に引き上げるなどの措置を盛り込みます。

一方、介護離職の防止については、すでに法的な両立支援制度があるものの、企業や従業員などに十分周知されていないことから、企業に介護と仕事の両立支援制度の早期情報提供を求めるよう、指針に加える考えです。

2024年も、企業と働く人に身近な雇用労働法制は活発に変容していきます。厚労省は今年、「働き方改革関連法」(労働基準法や労働者派遣法、パートタイム労働法など)の施行5年の見直し議論に着手するだけに、企業は人事戦略や事業計画をたてるうえで重要な1年になりそうです。