厚生労働省が取りまとめた2022年度「過労死等の労災補償状況」によると、労災請求件数は3486件(前年度比387件増)で、うち支給決定件数は904件(同103件増)と大幅に増えました。ただ、904件のうち死亡・自殺件数は121件(同15件減)に減少しています。
労災のうち、脳・心臓疾患の請求件数は803件(同50件増)で、そのうち業務上と認定した支給決定件数は194件(同22件増)となり、認定率は38.1%(同5.3ポイント増)。死亡事故は請求件数が218件(同45件増)に増え、決定件数は139件(同30件減)、支給決定件数は54件(同3件減)となり、認定率は38.8%(同5.1ポイント増)となりました。
精神障害の労災補償は、請求件数が2683件(同337件増)、決定件数が1986件(同33件増)、支給決定件数が710件(同81件増)と大きく増え、認定率も35.8%(同3.6ポイント増)に上昇しています。請求件数、決定件数とも前年度より大きく増え、理由は「上司とのトラブル」「上司らのパワハラ」など対人関係が依然として多数を占めています。業種では前年と同様に「医療・福祉」の「社会保険、社会福祉、介護事業」が請求件数327件で最も多く、業界の体質改善が急務です。
自殺(未遂を含む)については請求件数が183件(同12件増)、決定件数が155件(同12件減)、支給決定件数が67件(同12件減)、認定率は43.2%(同4.1ポイント減)。これらのうち、裁量労働制下の就労者の労災は決定件数が脳・心臓疾患で5件、精神障害で14件。うち支給決定件数は各3件、8件でした。
また、過労死に限定しない「労働災害発生状況」でみてみると、2022年の死者数は774人(前年比4人、0.5%減)とわずかに減少し、過去最少となっています。しかし、休業4日以上の死傷者数は13万2355人(同1769人、1.4%増)に増えています。死者数は17年の978人から5年連続の減少。死傷者は01年の13万3598人以来の最多を記録しました。
いずれも新型コロナへの罹患によるものを除いており、コロナ罹患による死者は17人(前年比72人減)に減りましたが、死傷者は15万5989人と8倍に増えた。医療保健、福祉施設で9割近くを占めます。
死者で最も多かった業種は例年と同様に建設業の281人(同3人増)で、製造業の140人(同9人増)が続きます。死傷者では製造業が2万6694人(同270人増)で最も多く、商業が2万1702人(同264人増)。接客・娯楽が9140人(同903人増)と突出した増加ぶりでした。