厚生労働省が発表した2022年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、総合件数は124万8368件(前年度比0.5%増)の微増。そのうち民事上の個別紛争相談は27万2185件(同4.2%減)に減った一方、労働基準法違反が疑われる件数は18万8515件(同10.8%増)と大きく増えました。
近年の総合件数は20年度に約129万件の過去最高を記録して以来、21年度は約124万件、22年度も125万件と"高止まり"が続いています。このうち、民事上の相談件数はほぼ一貫して増加が続き、21年度は約28万件の過去最高となりましたが、22年度は少し下がっています。
民事上の相談件数(延べ31万6815件)のうち、最も多かったのは「いじめ・嫌がらせ」の6万9932件(同18.7%減)で、次いで「自己都合退職」の4万2694件(同5.4%増)、「解雇」の3万1872件(同4.0%減)と例年と同じ傾向でした。
「いじめ・嫌がらせ」の件数減少は昨年4月に「パワハラ防止法」が完全施行され、22年度からパワハラ関連の相談を除いたためで、同法に基づく相談件数は5万840件、紛争解決の援助申し立て件数は1409件、調停申請受理件数は368件でした。
「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と企業との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、迅速に解決を図るための制度です。解決策として(1)総合労働相談(2)都道府県労働局長による「助言・指導」(3)紛争調整委員会による「あっせん」――の3つの方法があります。
(1)総合労働相談:都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など379カ所(2023年4月1日現在)に、あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応しています。
(2)都道府県労働局長による「助言・指導」:民事上の個別労働紛争について、都道府県労働局長が紛争当事者に対して解決の方向を示すことで、紛争当事者の自主的な解決を促進する制度です。助言は、当事者の話し合いを促進するよう口頭または文書で行うものであり、指導は、当事者のいずれかに問題がある場合に問題点を指摘し、解決の方向性を文書で示すものです。
(3)紛争調整委員会による「あっせん」:都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会のあっせん委員(弁護士や大学教授など労働問題の専門家)が紛争当事者の間に入って話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。
「パワハラ防止法」に伴い、同法に規定する職場におけるパワハラは「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として計上され、「民事上の個別労働紛争(のいじめ・嫌がらせ)」の相談件数には計上されていません。