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外国人技能実習制度の廃止と「実態に即した」新制度の行方

作成者: randstad|Jun 15, 2023 3:00:00 PM

外国人技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討すべき――。政府の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が今春、現行制度の廃止と新制度の創設を盛り込んだ中間報告を示しました。国内外から人権上の批判も挙がる実習制度を再構築し、外国人の労働力が貴重な担い手であるという「実態に即した」仕組みに見直すことを促しています。

有識者会議が半年前に検討を始めた際の論点は(1)技能実習制度を存続するか廃止するか(2)人手不足の12分野で外国人が働く「特定技能制度」に一本化して再編できるか(3)技能実習生の受け入れを仲介する監理団体の見直し――としていましたが、ヒアリングや議論を深める中で、下記の6項目を軸とする中間報告を取りまとめました。

 

  技能実習制度 新制度
目的 人材育成を通じた国際貢献 人材育成を維持、人材確保を追加
職種 87種に区分 「特定技能」にそろえる
受け入れ見込み人数 なし プロセスの透明性確保
転職(転籍) 原則不可 現行より緩和
監理団体・登録支援機関などの支援体制 監理監督の不十分な団体が存在 要件の厳格化で不適切な団体の排除
日本語能力 教育水準の定めなし 就労開始前と来日後の能力向上策を設ける

 

1、目的=人材育成機能は維持するが、人材確保も制度目的に加えて実態に即した制度とする 

2、職種=▽職種は特定技能の分野にそろえる▽外国人がキャリアアップしつつ我が国で修得した技能等を更にいかすことができる制度とする 

3、受け入れ見込み人数=人手不足状況の確認や受け入れ見込み数の設定については、決定までのプロセスの透明化を図る

4、転職(転籍)=人材育成に由来する転籍制限は、限定的に残しつつも、制度目的に人材確保を位置づけることから、制度趣旨と外国人の保護の観点から、従来よりも緩和する 

5、監理団体・登録支援機関などの支援体制=▽監理団体や登録支援機関は存続した上で要件を厳格化するなどして監理・支援能力の向上を図る▽外国人技能実習機構は存続した上で体制を整備して管理・支援能力の向上を図る▽悪質な送り出し機関の排除等に向けた実効的な二国間取り決めなどの取り組みを強化する 

6、日本語能力=一定水準の日本語能力を確保できるよう就労開始前の日本語能力の担保方策および来日後において日本語能力が段階的に向上する仕組みを設ける 

 

この「6つの改編点」の意図するところは、現行制度廃止のインパクトを前面に押し出しつつ、技能実習に変わる新制度創設で「特定技能」につなげる「柔軟かつ弾力的な仕組み」をつくるところにあります。

まず、「目的」については技能実習の「人材育成」機能を残しつつ、「特定技能」と同様に「人材確保」(労働力確保)であることをも明確にします。事実をごまかさず、「実態と乖離(かいり)した」という批判をかわしたい考えです。「職種」は基本的に特定技能の分野に合致させます。これは複数の業界団体や人材サービス事業者などからも要望が強かったもので、「新制度→特定技能」という連動がスムーズになります。この動きの中で、日本に通算何年滞在できるのか、また永住の機会をどうつくるのかも注目されます。 

有識者会議の議論はさらに進めて、今秋にも最終報告書を取りまとめる方針です。それを踏まえて来年の通常国会に関連法案が上程される見通しです。