法人向けHRブログ workforce Biz

平等よりも「公平」を目指す「エクイティ」!「ダイバーシティ」や「インクルージョン」との違いは?

作成者: randstad|Apr 18, 2023 3:00:00 PM

「エクイティ(公平性)」とは?

それぞれに合わせた支援内容で「公平に」

エクイティ(公平性)という言葉は、「エクイティファイナンス」などとして証券用語でも使われています。ただ、ビジネス一般においてはおおむね「多様なメンバーの1人ひとりがより高いパフォーマンスを出せるように、それぞれに合わせた支援を行い、公平な土台づくりをしていくこと」を指します。

マジョリティにマイノリティが合わせたり、マイノリティが諦めたりするのではなく、マイノリティもマジョリティと並べるよう1人ひとりの状況に合わせたツールやリソースを用意し、公平にパフォーマンスを高めることでの成功を目指す考え方です。

 

「イコーリティ(平等性)」とは別もの

エクイティは「イコーリティ(平等性)」と混同されがちですが、イコーリティは一人ひとりの置かれた状況にかかわらず、すべての人に同じ支援を行うことを指します。

例えば、マジョリティにもマイノリティにも同じ制度を適用して平等にチャンスを与えますが、もしマイノリティが不利な状況であったとしても、マイノリティへの支援は行われません。この場合マイノリティには不利をカバーする一層の努力が求められますし、努力だけでは補いきれない可能性もあり、公平な土台を作ることは難しいでしょう。

 

マイノリティを弾き出す「同質性」は企業のリスクに

日本社会はかつて「同質性が高い」ことが強みと言われてきました。「メンバーシップ型雇用」や「フルタイム勤務」のマジョリティを中心とした管理統制型マネジメントで、組織を成長させてきたのです。

しかし、エクイティどころかイコーリティにすら欠けるこうした同質性は、マイノリティはもちろんのこと、ライフスタイルの多様化などを見越したマジョリティにも疎まれる傾向にあります。

労働人口が減少していく中で、マイノリティに目を向けず、マジョリティだけで固まろうとすることは企業にとってリスクになりつつあるのです。

 

エクイティに欠ける例にはどんなものがある?

エクイティに乏しく、改善の姿勢も見えない企業は「旧態依然」と見なされてもおかしくない昨今。ここで、エクイティに欠けると思われる言動のケースをいくつか見てみましょう。

ケース1「出産の可能性がある派遣社員はいらない」

派遣社員の採用時に「当社では出産・育児を担う方への配慮ができないから」と、あらかじめ特定の年代の女性を紹介しないよう要望してしまうケースです。そもそも求人募集において年齢、性別を指定することは法律で禁じられています。面接などで出産予定について質問することも違法です。

 

ケース2「障がい者雇用にわずらわされたくない」

障がい者雇用での採用時に、いきなり「できるだけ会社側の配慮が必要ない人を採用したい」と明言してしまうケースです。もちろん職場環境によっては法に定められた「合理的配慮の提供」が難しく、採用に至らないケースもあるでしょう。しかし、具体的な話し合いや調整もせず、初めから支援の負担を避けようとする姿勢は褒められたものではありません。

 

ケース3「リモートワーク可能でも、オフィス勤務でなければ認めない」

会社にリモートワークが認められていて、業務にも差し支えがないのに、管理職の独断で「オフィス勤務でなければ認めない」とリモートワーク利用者への配慮などを行わないケースです。仮にオフィス勤務に一定の効果があるとしても、それを理由に会社が認めた多様な働き方を犠牲にしてよいとは言えません。

 

ケース4「時短や地域限定はキャリアアップできない」

時短勤務社員や地域限定社員など、特定の雇用契約を結んでいる社員に対して「キャリアアップの道を自ら手放した」と見なし、当人が希望しても支援などに応じないケースです。また、合理的な配慮を拒み、当人に「人一倍努力しないと」と負担を求める態度なども、エクイティに欠けていると言えます。

 

ケース5「年齢だけを理由に異動希望を却下

他部署への異動を願い出た従業員に「あの部署は若い子しかいらないから」、「定年まであと数年なのに今さら異動なんて」といった理由だけで希望を却下するケースです。逆に会社が「現在の部署にいるには年齢が高過ぎる」などの理由だけで従業員に異動を迫るのも、エクイティに欠けた振る舞いです。注意したいのは理由が「年齢」であること。当人の適性や会社側の業務戦略を踏まえ、異動が必要・不要と判断された場合は、不当な差別にはあたらないと見るのが一般的です。

「エクイティ」と「ダイバーシティ(多様性)」、「インクルージョン(受容・包括)」の関係性

エクイティと併せて語られることが多い言葉が「ダイバーシティ(多様性)」、「インクルージョン(受容・包括)」です。続いては、この三者の関係性について見ていきましょう。

 

もともとは「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」

近年の企業経営で積極的に取り入れられてきたのは、そもそも「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容・包括)」でした。多様性・受容・包括のそれぞれの意味から「性別や年齢、障がい、国籍、ライフスタイル、職歴、価値観などに関わらず、それぞれの個を尊重し、認め合う」ことを指す考え方です。

ビジネスにおいては「メンバー1人ひとりの多様性を受け入れ、お互いに認め合い、尊重しながら働くことで共に成長し、事業を成功させていく」といった意味合いも含まれます。

 

世界的な潮流は、D&Iにエクイティも含む「DEI」へ

D&Iに、多様なメンバー1人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できるための取り組みとして「エクイティ」が加わったのが「DEIDEI)」です。DEIでは、お互いを認め、尊重しながら働くだけでなく、それぞれの状況に合わせた育成や挑戦の機会を設け、誰もが公平に活躍できる環境を作っていきます。

このいわば「1人ひとりが受け入れられていることを実感し、力を発揮できる」環境では、ビジネスのイノベーションも促され、事業にポジティブな影響があるとされています。もちろん、企業イメージの向上や、DEIに関心の高い優秀な人材を確保するといった面でも効果が見込めます。

DEIに取り組むためのポイント

DE&Iで目指す姿を明確に示す

「これからはDE&Iだ!」という掛け声だけでなく、DE&Iを推進することで自社がどのようになりたいか、「自社の目指す姿、あるべき姿」を明確にしておきましょう。ゴールが見えていれば、メンバーの自発的な取り組みにもつながります。

アンコンシャス・バイアスをなくし、心理的安全性の高い組織へ

取り組みを阻む大きな要因となりうるのが、先述の「エクイティに欠ける例」でも散見された「アンコンシャス・バイアス(無意識な偏見)」や、偏見に抗うことで不利益を被りかねない「心理的安全性の低さ」です。

こうした要因を取り除く対策として、DE&I研修や社内広報などでDE&Iについて誰もが理解を深められるようにし、DE&Iへの無理解によるリスクを誰もが意識する状況を作っていきましょう。

職場環境や人事評価制度なども整えていく

知識や心構えが身についても、企業の制度が追いついていないのではDEIを実践できません。例えば勤務体系の柔軟化や休業制度の見直し、障がい者・外国人労働者向けの制度拡充などといった形で多様な働き方ができる環境を整え、またこうした制度利用者が不利にならないよう、人事評価制度なども見直します。

DEIの取り組み事例

A社では、DE&I委員会・サポーター制度の設置、社内制度・仕組みの見直し、DE&I研修や意見交換の場の設定などといった具体策に取り組むことを発表。また、経営層における女性比率を10年以内に半数近くまで引き上げると宣言しました。

経営層や管理職の女性比率については、目標値が先走り、達成のために「下駄を履かされているのでは」と懸念される向きもありますが、このケースでは女性社員のキャリア開発支援などといった「公平な土台作り」にも同時に取り組んでおり、まさにDE&Iの考えに基づいていると言えそうです。

 

多様な働き方をアプリケーションで疑似体験

B社では、グローバルリーダーを発掘するリーダーシップ・プログラム、管理職人材の多様化を推進する若手社員や女性社員の早期育成プログラム、副業制度などを導入しました。

また、制度を整えるのに併せて、多様な働き方を自分事として体験できるアプリケーションを開発。「子どもが発熱したため急ぎ迎えに来てほしい」といった指示に応じて自分の行動を選択する、いわゆるロールプレイング型のアプリケーションです。さらに、現実の業務を中断し帰宅する体験型プログラムなども組み合わせられており、ユニークかつ取り組みやすい形で、アンコンシャス・バイアスの解消や、多様性への理解・受容を進めています。

ランスタッドのDEIへの取り組み

ランスタッドは、すべての人が自身の価値を認識するとともに、それが尊重されサポートされていると感じられる世の中を目指します。ジェンダー平等を実現しインクルーシブな雇用を推進するために、2030年へ向けてさまざまな取り組みを行っています。詳しくはこちらからご覧ください。