エクイティ(公平性)という言葉は、「エクイティファイナンス」などとして証券用語でも使われています。ただ、ビジネス一般においてはおおむね「多様なメンバーの1人ひとりがより高いパフォーマンスを出せるように、それぞれに合わせた支援を行い、公平な土台づくりをしていくこと」を指します。
マジョリティにマイノリティが合わせたり、マイノリティが諦めたりするのではなく、マイノリティもマジョリティと並べるよう1人ひとりの状況に合わせたツールやリソースを用意し、公平にパフォーマンスを高めることでの成功を目指す考え方です。
エクイティは「イコーリティ(平等性)」と混同されがちですが、イコーリティは一人ひとりの置かれた状況にかかわらず、すべての人に同じ支援を行うことを指します。
例えば、マジョリティにもマイノリティにも同じ制度を適用して平等にチャンスを与えますが、もしマイノリティが不利な状況であったとしても、マイノリティへの支援は行われません。この場合マイノリティには不利をカバーする一層の努力が求められますし、努力だけでは補いきれない可能性もあり、公平な土台を作ることは難しいでしょう。
日本社会はかつて「同質性が高い」ことが強みと言われてきました。「メンバーシップ型雇用」や「フルタイム勤務」のマジョリティを中心とした管理統制型マネジメントで、組織を成長させてきたのです。
しかし、エクイティどころかイコーリティにすら欠けるこうした同質性は、マイノリティはもちろんのこと、ライフスタイルの多様化などを見越したマジョリティにも疎まれる傾向にあります。
労働人口が減少していく中で、マイノリティに目を向けず、マジョリティだけで固まろうとすることは企業にとってリスクになりつつあるのです。
エクイティに乏しく、改善の姿勢も見えない企業は「旧態依然」と見なされてもおかしくない昨今。ここで、エクイティに欠けると思われる言動のケースをいくつか見てみましょう。
エクイティと併せて語られることが多い言葉が「ダイバーシティ(多様性)」、「インクルージョン(受容・包括)」です。続いては、この三者の関係性について見ていきましょう。
近年の企業経営で積極的に取り入れられてきたのは、そもそも「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容・包括)」でした。多様性・受容・包括のそれぞれの意味から「性別や年齢、障がい、国籍、ライフスタイル、職歴、価値観などに関わらず、それぞれの個を尊重し、認め合う」ことを指す考え方です。
ビジネスにおいては「メンバー1人ひとりの多様性を受け入れ、お互いに認め合い、尊重しながら働くことで共に成長し、事業を成功させていく」といった意味合いも含まれます。
D&Iに、多様なメンバー1人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できるための取り組みとして「エクイティ」が加わったのが「DE&I(DEI)」です。DE&Iでは、お互いを認め、尊重しながら働くだけでなく、それぞれの状況に合わせた育成や挑戦の機会を設け、誰もが公平に活躍できる環境を作っていきます。
このいわば「1人ひとりが受け入れられていることを実感し、力を発揮できる」環境では、ビジネスのイノベーションも促され、事業にポジティブな影響があるとされています。もちろん、企業イメージの向上や、DE&Iに関心の高い優秀な人材を確保するといった面でも効果が見込めます。
「これからはDE&Iだ!」という掛け声だけでなく、DE&Iを推進することで自社がどのようになりたいか、「自社の目指す姿、あるべき姿」を明確にしておきましょう。ゴールが見えていれば、メンバーの自発的な取り組みにもつながります。
取り組みを阻む大きな要因となりうるのが、先述の「エクイティに欠ける例」でも散見された「アンコンシャス・バイアス(無意識な偏見)」や、偏見に抗うことで不利益を被りかねない「心理的安全性の低さ」です。
こうした要因を取り除く対策として、DE&I研修や社内広報などでDE&Iについて誰もが理解を深められるようにし、DE&Iへの無理解によるリスクを誰もが意識する状況を作っていきましょう。
知識や心構えが身についても、企業の制度が追いついていないのではDE&Iを実践できません。例えば勤務体系の柔軟化や休業制度の見直し、障がい者・外国人労働者向けの制度拡充などといった形で多様な働き方ができる環境を整え、またこうした制度利用者が不利にならないよう、人事評価制度なども見直します。
A社では、DE&I委員会・サポーター制度の設置、社内制度・仕組みの見直し、DE&I研修や意見交換の場の設定などといった具体策に取り組むことを発表。また、経営層における女性比率を10年以内に半数近くまで引き上げると宣言しました。
経営層や管理職の女性比率については、目標値が先走り、達成のために「下駄を履かされているのでは」と懸念される向きもありますが、このケースでは女性社員のキャリア開発支援などといった「公平な土台作り」にも同時に取り組んでおり、まさにDE&Iの考えに基づいていると言えそうです。
B社では、グローバルリーダーを発掘するリーダーシップ・プログラム、管理職人材の多様化を推進する若手社員や女性社員の早期育成プログラム、副業制度などを導入しました。
また、制度を整えるのに併せて、多様な働き方を自分事として体験できるアプリケーションを開発。「子どもが発熱したため急ぎ迎えに来てほしい」といった指示に応じて自分の行動を選択する、いわゆるロールプレイング型のアプリケーションです。さらに、現実の業務を中断し帰宅する体験型プログラムなども組み合わせられており、ユニークかつ取り組みやすい形で、アンコンシャス・バイアスの解消や、多様性への理解・受容を進めています。
ランスタッドは、すべての人が自身の価値を認識するとともに、それが尊重されサポートされていると感じられる世の中を目指します。ジェンダー平等を実現しインクルーシブな雇用を推進するために、2030年へ向けてさまざまな取り組みを行っています。詳しくはこちらからご覧ください。