同一労働同一賃金を徹底するため、厚生労働省は、都道府県労働局と労働基準監督署の連携による企業への指導強化に乗り出しました。労基署の労働基準監督官が、企業へ訪問調査をする際に、同一労働同一賃金の現状についてもチェックし、労働局へ情報を提供。労働局は、この情報を基に、より積極的に助言・指導し、正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差の解消を目指します。マンパワーを確保するため、全国に現在約3000人いる労働基準監督官を52人増員しました。
労働局と労基署の連携は、2022年10月28日に閣議決定された政府の「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に盛り込まれました。パートやアルバイト、契約社員の賃金を改善し、構造的な賃上げにつなげる狙いがあります。
同一労働同一賃金は、大企業では20年4月、中小企業では21年4月に施行されました。違反が疑われる企業に対しては、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、パート・有期雇用労働法に基づき報告を求め、指導する権限を持っています。ただ、雇用環境・均等部(室)は各都道府県に一つしかありません。そこで厚労省は、同一労働同一賃金の徹底に向け、全国に321カ所あり、面的に活動している労基署の力を借りることにしました。
労基署の労働基準監督官は、定期監督などで日常的に企業を訪問しています。そこで、企業へ行った際に同一労働同一賃金に関するチェックシートを配って回収し、雇用環境・均等部(室)と共有します。チェックシートの中身は明らかにされていませんが、正規雇用、非正規雇用それぞれに、基本給、手当、昇給、賞与、休暇などの労働条件がどうなっているのかを確認する内容とみられます。チェックシートを使った情報収集は、労働基準監督官を新たに増員する労基署だけでなく、全国すべての労基署で幅広く展開します。
労基署は、チェックシートで集めた情報を労働局へ提供し、雇用環境・均等部(室)がその情報を活用して、同一労働同一賃金の違反が疑われる企業を選定。報告を求め、違反が確認されれば是正に向けた指導や助言をします。また、違反とまでは言えませんが、改善が必要な企業には、厚労省の民間委託事業「働き方改革推進支援センター」の無料相談・コンサルティングを受けるよう勧めます。
厚生労働省は3月15日、今春闘における賃上げの流れを中小企業・小規模事業者にも波及させるため、同日から5月31日までを「非正規労働者の賃金引上げに向けた同一労働同一賃金の取り組み強化期間」に設定、集中的な取り組みを始めました。
情報サイト「賃金引き上げ特設ページ」を設けて啓発すると同時に、各業界団体、都道府県知事ら自治体首長に対して、地域企業への働きかけを協力要請します。また、最低賃金・賃金引き上げに向けた業務改善助成金、キャリアアップ助成金など中小・零細企業への支援策をPR強化します。