景気回復に伴い、「コロナ後」の労働市場では再び人手不足が急速に進んでおり、有効求人倍率や完全失業率を見る限り、「コロナ前」の水準に近付いています。しかし、労働人口の減少で求職者数は減少傾向にあり、多数の人手を必要とする産業・企業はコロナ前以上の人手不足に悩まされる可能性が高く、省力化・DX化などの可否が生き残りに直結する事態になりつつあります。
2022年の年間有効求人倍率は1.28倍(前年比0.15ポイント増)、完全失業率は2.6%(同0.2ポイント減)となり、求人倍率は3年ぶりの上昇、失業率も3年ぶりの低下となりました。コロナ前の19年の1.60倍、2.4%には届きませんでしたが、再びコロナ前の水準に向けた動きが鮮明になりました。
しかし、総務省によると、就業者数(自営、雇用などの合計)は6723万人(同10万人増)に増えたものの、19年の6750万人までには及びませんでした。また、コロナ前までは毎年30万~70万人の勢いで増え続けていましたが、コロナ後の増え方は鈍化しています。その原因は男性の3699万人(同12万人減)に対して、女性が3024万人(同22万人増)となり、男性が減った分を女性の増加でカバーしているものの、男性の減少は3年連続で、今後も増える可能性は低いためです。
その背景にあるのが右肩下がりの労働力人口(15歳以上の就業者と失業者の合計)です。12年の6565万人から毎年増え続け、19年に6912万人のピークを付けましたが、コロナで減少に転じ、22年は6902万人とピーク時より10万人減りました。ここでも男性の減少が目立ち、女性の増加と対照的な動きとなっています。
産業別にみると、最も増えている業種は「医療、福祉」で、毎年20万人前後のペースで増え続けています。次いで、「情報、通信」では10万人単位で増加中。「教育、学習支援」も毎年1万~8万人ずつ増えています。逆に、「建設」「製造」「生活関連、娯楽」などでは減少が続いています。
非労働力人口(15歳以上で病気などのため働けない人、高齢者など)は22年で4128万人(同43万人減)。12年当時の4543万人から415万人も減少しており、定年後の高齢者や専業主婦だった女性が働きに出るという「1億総就労」状態になりましたが、減少ペースはやはり鈍化しており、これ以上、新たな労働力の“原資”になるかどうかは不透明です。