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2023年4月から中小企業も「月60時間以上は50%」に!残業割増賃金率とは?

作成者: randstad|Feb 6, 2023 3:00:00 PM

割増賃金率とは?

まず「割増賃金」とは、所定の賃金に増し加えられる賃金のことです。どれくらい増し加えるかは、所定の賃金を基にした「割合」で示されます。労働基準法では、所定の時間数を超える労働や深夜の労働など、一定の条件を満たす労働に対して、雇用主が一定以上の割増賃金を支払わなければならないと定められています。

例えば労働基準法では、基本的に18時間、140時間を法定労働時間と定めていますから、これを超える時間外労働には、割増賃金の支払が必要になります。そこで、どれくらい割り増しするかの基準を示すのが「割増賃金率」です。

従来、時間外労働に対する割増賃金率は、時間数を問わず「通常の賃金の25%以上」とされていました。その後法改正によって、大企業は20104月から「月60時間超の残業については割増賃金率50%以上」を支払うこととなっています。

 

20234月の「割増賃金率の引き上げ」とは?

出典:東京労働局「しっかりマスター労働基準法ー割増賃金編ー」

 

大企業が「月60時間超の残業は割増賃金率50%以上」となった一方、中小企業は2010年以降も引き続き「時間数を問わず割増賃金率25%以上」となっていました。

しかし、202341日からは中小企業も大企業同様に「月60時間超の残業は割増賃金率50%」に引き上げられます。

ちなみにここでの「中小企業」は、中小企業基本法における原則的な定義(下記)を基に、企業単位で判断されます。

業種分類

中小企業基本法の定義

製造業その他

資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

卸売業

資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

小売業

資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

サービス業

資本金の額又は出資の総額が5千万円億円以下の会社又は常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

 

またこれに伴って、22:00~5:00に働く「深夜労働」や、法定休日労働以外の「休日労働」の割増賃金も月60時間を超える場合は引き上げられます。例えば月60時間を超える深夜労働では、深夜割増賃金率25%以上、時間外割増賃金率50%以上が合算されて、75%以上の割増賃金が発生します。

 

人件費負担の増加を防ぎつつ、人的資本を確保するには?

25%から50%と、月60時間を超えると一気に倍になる割増賃金率。長時間の残業を前提として業務を回してきた中小企業にとっては、割増賃金率引き上げによる人件費の大幅負担増が見込まれます。人件費の問題だけでなく、働き方が多様化する中で離職を防ぎ、人的資本を確保するためにも、長時間労働を前提とした体制は改善していくことが望ましいでしょう。対策としては、下記のようなものが考えられます。

 

■代替休暇

代替休暇、いわゆる「代休」によって、割増賃金の支払いを相殺する方法です。月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者に対しては、健康を確保することを目的に、割増賃金の代わりとして有給休暇を付与できます。例えば繫忙期が集中していて、それ以外の時期に代替休暇を与えることが可能な業種、企業に向いているでしょう。

ただし、代休を取る/取らない、また取得時期については労働者の選択にゆだねられます。企業側が「割増賃金は出さないから、閑散期を選んで休むように」などと強制できるものではありませんので注意が必要です。

 

■業務効率向上

業務内容の見直しやDXツールの導入による業務効率向上で、そもそもの残業時間削減に取り組む方法です。恒常的に残業時間が月60時間を超えていて、業務効率に課題があるような企業に向いています。

ただし、どれくらい残業時間を削減できるかは、課題解決に適した施策内容であるか、取り組みの推進具合はどうかといった要素によります。「残業代が減ると困る」という従業員がいる場合は、取り組みへの抵抗も考えられるでしょう。

 

■ワークシェアリング

短時間勤務のスタッフを増員するなどして業務をこれまでよりも多人数で分担し、働き手1人あたりの負担を軽減することで残業時間削減に取り組む方法です。業務の自動化が難しいなど、業務効率化による改善の余地が少ない企業に向いています。

ただし、1人あたりの残業時間が減っても全体の労働時間は減りませんから、削減できるのはあくまで割り増し分のみ。一方で増員自体にかかってくる費用もあるため、目に見える効果を出すには工夫が必要です。

 

働き方と人件費を見直すために、社外からのサポートも視野に入れて

「業務量は減らないのに『残業するな』という命令ばかりされて……」などという話はよく耳にします。そういった職場でも、もしかしたら代替休暇取得の推進や業務効率向上、ワークシェアリングなどの取り組みは行っているのかもしれません。ただ、働き手が納得するほど効果を上げるのは、社内の担当者だけでは難しいことも多いのです。

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