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産後パパ育休(出生時育児休業)が施行!男性の育児休業取得を促進するために企業ができること

作成者: randstad|Oct 18, 2022 3:00:00 PM

産後パパ育休(出生時育児休業)とは?

育児・介護休業法で定められた「育児休業」は、本来男女(子の父母)どちらでも取得できるものですが、これまで男性の育児休業取得率の極端な低さが問題視されてきました。そこで、政府は「男性の育児休業取得率を2025年までに30%へ引き上げる」ことなどを目標に、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んでいます。新たな育児休業制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」もその一環です。

 

 

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

 

2022年10月1日から施行された「産後パパ育休」は、子どもの出生後8週間以内(母親の産後休業期間中)に4週間を限度として休暇が取得できる制度。これまでの「育児休業」とは別に取ることができ、先にまとめて申し出れば分割して取ることも可能です。また労使協定を締結している場合、労働者が合意した範囲で休業中に就業することもできるなど、柔軟な運用が特徴となっています。

 

「育休を取りやすくする」ための施策も登場

産休パパ育休制度の創設に合わせてこれまでの育児休業も改正され、同時に施行されました。まず、原則子どもが1歳(最長2歳)になるまでに分割して2回育児休業を取得できるように。さらに、育休開始日もこれまでは子どもの年齢で決まっていたのが柔軟化されたり、特別な事情がある場合には再取得できるようになったりと、より柔軟に育児休業を活用できるようになっています。

さらに2023年4月からは、従業員1,000人以上の企業に対し、年1回男性の育児休業取得率等の公表が義務付けられるなど、制度を作るだけでなく「利用しやすくする」ための動きが活発になっているのです。

 

 

男性の育児休業が促進されることで企業にもメリットが

従業員の働きやすさが向上し、企業への満足度が高まる

ここまで「法に定められた育休」について見てきましたが、育休に関する制度を整え、男性も取得しやすくすることは企業にも多くのメリットがあります。まず、これから出産や子育てを考えている従業員であれば、男女問わず企業への満足度が高まるでしょう。ワーク・ライフ・バランスを整えられ、長く働ける環境にあると安心できることは、仕事へのモチベーション向上にもつながります。

 

業務の属人化の解消、生産性の向上

ただ男性の育休取得をけしかけるだけでは事業活動への直接的なメリットはありませんが、育休を取りやすいように、また育休で人員が欠けても困らないように職場の環境を整えることは、事業活動にもさまざまなメリットをもたらします。

例えば、業務の見直し、棚卸しをすることで属人化を解消し、従業員の誰でも自分のタイミングで育休を取得できるようにしておくと、育休以外の休暇や休職でも人的リソースを効率的に活用することができ、全体的な生産性の向上につながります。

 

企業イメージの向上

男性の育休取得に積極的であることは「社会課題にしっかり向き合っている企業」、「従業員を長期的な視野で大切にする企業」、「ジェンダー平等の意識があり、先進的な考え方の企業」といったイメージにつながります。いずれも企業の将来性をはかるために重要なポイントですから、優秀な人材や顧客の獲得にもつながるでしょう。

 

助成金獲得の機会も

厚生労働省が「職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくり」のための事業主支援として実施している「両立支援助成金」。この助成金には2022年10月現在「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」が設けられています。

「男性労働者が、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得する」などを主な要件とする、いわば「男性の育休取得1件ごとに対する助成」に加えて、「男性労働者の育児休業取得率が上昇した場合に対する助成」もあり、男性の育休取得を推進するほど多くの助成を受けられるようになっています。

また、育休を取る社員の代替要員の確保や、職場復帰をする場合に支援を受けられる「育児休業等支援コース」も設けられています。

 

男性社員の育児休業取得を促進するために企業ができること

取得しやすい雰囲気づくり

育休制度が整っていても、受け入れる環境がなければ取得しにくくなってしまいます。まずはパタハラ(パタニティハラスメント)防止も兼ねて、管理職への育休への理解促進・教育や、従業員への育休制度の周知に努めましょう。一部の動きではなく「企業としての取り組み」であることを認識してもらうためにも、経営者・上司などから情報発信することで啓蒙活動を進めていくのがおすすめです。

 

育休取得者やほかの従業員への理解促進・ケア

育休制度で問題になりがちなのが、育休取得者以外の負担増加やそれに伴う不満の噴出です。育休取得者にも、育休取得時期を考慮するようけん制される、職場復帰が不利になるといったリスクへの不安が付きまといます。育休取得者への制度利用や復帰に関する説明はもちろん、業務面での不安や不平不満を感じる社員への十分な説明や、チーム全体のケアに努めたいところです。

 

職場環境の改善

長時間労働や残業の解消、チーム内でのワークシェアリングなどは、育休取得者による人手不足対策として機能するだけでなく、社員の不満解消、モチベーション向上にもつながります。「不足を補う」ことばかり考えず、積極的に取り組みましょう。

 

キャリア形成への制度整備

ひと昔前のように「育休取得はキャリアアップとトレードオフ」という状況はもはや許されません。育休取得や、その間の不在によって昇進に悪影響が出ないよう評価制度を見直し、資格取得の支援や研修制度の充実など、復帰した際の環境も整えておきたいところです。

 

男性社員の育児休業取得への取り組み事例

相互理解の場を積極的に作り不安を解消

A社では全社員を対象に男性育休に対するアンケートを実施し、要望の多かった「収入面での不安」解消に注力。給付金制度も含めて自分の収入の変化が把握できるシミュレーションツールを提供しました。また、男性の育休対象社員とその上司を集めて説明会を開催し、女性役員から育休取得を後押しする場を設けました。

 

柔軟な制度で一人ひとりに合う育休となるように

B社では、独自に法定期間を上回る3年間の育休取得可能期間を設け、最初の1か月を有給とする、最大4分割で取得できるなど、家庭の事情に合わせられる柔軟な制度を整えました。家庭での育休に関するコミュニケーションを促すミーティングシートや、育休取得者の声をまとめたガイドブックなど、社内外で役立てられるツールも提供しています。

 

 

形ばかりの取り組みではなく「本当に取れる育休」を

「法を満たす」のみを目的に最低限の取り組みをしているだけでは、いつまでも男性の育休取得は促進できません。従業員の理解を得るための活動や、育休とそれに関連する制度の整備、職場の環境整備によって「本当に取れる育休」にしていくことが重要です。

ランスタッドでは、男性の育休取得を推進するにあたって生じるであろう多様なニーズに合わせて人材を派遣。リソース不足をフォローし、あらゆる働き手に歓迎される育休環境づくりをサポートします。