帝国データバンクが発表した2022年度の賃金動向に関する企業調査によると、54.6%の企業が「賃金改善」を見込んでおり、1年前より12.6ポイント増の大幅増となりました。改善のトップは「ベースアップ」。この結果、総人件費の増加を見込む企業も67.1%(同12.9ポイント増)に増えています。
改善の見込みのある企業は2年ぶりに過半数を超え、「ない」は19.5%(同8.5ポイント減)に減少。具体的な賃上げは「ベア」の46.6%(同10.5ポイント増)で、「賞与」も27.7%(同7.4ポイント増)と増えました。ベアの増加割合は2010年度の調査開始以来の最高となっています。コロナ禍による先行き不透明感はあるものの、「労働力の定着・確保」が最大の理由となっている模様です。
同社によると、コロナ禍や燃料・原材料価格の高騰といったマイナス要因はあるものの、多くの企業がコロナ後を見据えた人手不足を意識している結果とみています。ただ、収益環境は厳しさを増していることから、「生産性を高めるDX投資やリカレント教育などの施策を講じる必要がある」と分析。調査は全国2万4072社のうち、1万1981社から有効回答を得ています(回答率49.8%)。
今年の春闘はヤマ場を越え、これまでのところは組合側要求に満額回答の企業が相次ぐなど、3年ぶりの「賃上げ率2%」の成果を生み出しています。連合が発表した中間集計によると、月例賃金の平均賃上げ額(加重平均)は6319円(前年同期比2.11%増)。これは2189労組、組合員約217万人の平均で、最終的には約4700労組に上るとみられることから、ほぼ半数の企業で回答を引き出したことになります。
これを企業規模別にみると、労組員300人以上の企業(823労組、約202万人)では6413円(同2.12%増)、同300人未満の企業(1366労組、約15万人)では5125円(同2.06%増)となっており、中堅・大企業の方が賃上げ額、賃上げ率とも高め。一時金(ボーナス)は年間企業で4.94カ月分(同0.24ポイント増)、半年企業で2.44カ月分(同0.15ポイント増)といずれも前年を上回り、年収ベースで「社員に還元する」(経団連)という経営者側の考えが反映されています。
また、非正規社員については、時給ベースの賃上げ額(加重平均)は25.52円アップの1053.46円。月給ベースの賃上げ額は5584円となり、賃上げ率は2.5%前後と正社員のアップ率を上回っています。今年の春闘は、コロナ禍で企業の慎重姿勢が続いていた20、21年に比べ、経営側は「各企業の実情に即した賃金を」(経団連)と一律賃上げには否定的でしたが、好業績の企業には積極的な賃上げを要請していました。