原油・原材料価格の高騰が続いている中で、東京商工リサーチが発表した価格転嫁に関する調査によると、サービス業を中心に約7割の企業が「価格転嫁できていない」と答えていることがわかりました。価格高騰は長期化の様相を呈しており、スムーズな転嫁が進まないと、いずれ人件費コストなど雇用面に及ぶ懸念も強まりそうです。
原油・原材料の価格上昇に伴うコスト増を価格転嫁できているかどうか聞いたところ、68.7%が「できていない」と答え、「5割程度(できている)」が6.4%、「10割」が4.2%、「8割程度」が3.9%と続きました。「できていない」企業を規模別にみると、大企業は73.1%で、中小企業は68.1%と大企業が苦労している様子がうかがえます。
「できていない」企業を業種別にみると、「情報サービス業」が90.7%で最も高く、「その他生活関連サービス業」が90.4%。情報サービスはソフト開発の受託事業などが多く、その他サービスは旅行・ブライダルなどが目立ちます。今後、価格がどの程度上昇すれば営業赤字になるか聞いたところ、「すでに赤字」が29.1%で最も多く、「11~20%」が24.3%、「21~30%」が14.1%など。「すでに赤字」は繊維・衣服等卸売り、道路貨物運送などが多い傾向にあります。
政府は昨年暮れ、「転嫁円滑化施策パッケージ」を策定し、取引の公正化・適正化に向けた取り組みを公表していますが、同社は「転嫁できていない企業が多いことがわかった。政策の実効的な取り組みが急がれる」と指摘しています。
また、帝国データバンクが発表した2022年度業績見通しの企業調査によると、「増収増益」を見込む企業は24.1%(前年比3.3ポイント減)、「減収減益」を見込む企業も23.9%(同2.1ポイント減)と減少する一方、「増収減益」が9.7%(同4.2ポイント増)に増えています。
業種別では増収増益見込みが最も多いのは「電気通信」の45.5%で、次いで「旅館・ホテル」の38.3%。減収減益見込みが最も多いのは「医薬品・日用雑貨品小売り」の39.3%で、「農・林・水産」が38.8%で続きます。見通しの上振れ材料として最も多いのは「新型コロナの収束」の40.2%、「個人消費の回復」の37.7%、「原油・素材価格の動向」の26.9%など。一方、下振れ材料としては「原油・素材価格の動向」が最大の52.0%で、「新型コロナの拡大」の43.6%、「個人消費の一段の低迷」の30.5%、「カントリーリスク」の25.1%など(複数回答)。
下振れ材料としての「原油・素材価格の動向」は1年前が20.8%、「カントリーリスク」は6.3%に過ぎませんでしたが、ウクライナ情勢の緊迫化で一気に上昇。新型コロナ、ウクライナ情勢とも先行き不透明感が強く、今年は多くの企業にとって見通しのむずかしい局面となっています。
取材・文責 アドバンスニュース