参院厚生労働委員会は3月30日、職業安定法上の募集情報等提供事業者(求人メディア)の対象範囲拡大や「届け出制」の導入などを盛り込んだ改正職安法を賛成多数で可決しました。これを受けて厚生労働省は、改正法に沿った運用ルールについて政省令・施行規則などの整備を進める方針です。新たな求人メディアの定義を4類型に整理して対象範囲を大幅に広
げ、「届け出制」にして実態を把握する仕組み。施行は原則10月1日で、改正後は従来までの指針に基づく助言・指導などに加え、改善命令や停止命令、立ち入り検査ができる法令違反に格上げされます。
AIやITなどの進化に伴い、雇用の仲介的サービスには職安法に位置づけられた職業紹介や求人メディア以外にも、求人情報を集約化するアグリゲーターや人材データベース、SNS、スポットマッチング、クラウドソーシングなど、伝統的なイメージを超える多様なサービスが存在。入職経路として若者を中心に活用が広がっており、こうした「新形態サービス」の実態把握は的確な雇用政策を打ち出すうえで欠くことのできない環境になっていました。
改正の方向性としては規制強化の側面だけでなく、「イノベーションを阻害しないことに留意しつつ、雇用仲介事業者が依拠すべきルールを明確化」するもので、新形態サービスを需給調整の一翼を担う事業者と位置付けます。具体的措置としては、「募集情報の的確性」「個人情報の保護」「官民の連携」「国による労働市場に関する情報の収集、提供」「事業者団体との協力」「求人メディアの把握」「苦情処理」「求職者等からの報酬受領の禁止」「事業情報の公開」「違反への対応」を推し進めます。
厚生労働省は4月から夏前までに、労働政策審議会で政省令を確定させ、10月の施行に向けた周知に努める方針です。
厚生労働省が3月31日発表した2020年度労働者派遣事業報告書(4万2065事業所、速報)によると、派遣労働者数は192万6487人(前年度比4.9%増)と増えました。内訳は無期派遣が71万2896人(同18.0%増)、有期派遣が121万3591人(同1.5%減)、登録者数は685万3094人(同10.8%増)。派遣先件数は75万959件(同7.6%増)、売上高は8兆6209億円(同9.6%増)となり、2年連続の増加となりました。
派遣料金(8時間換算)は平均2万4203円(同2.4%増)で、内訳は無期派遣が2万5270円(同2.0%増)、有期派遣が2万8円(同3.0%増)。派遣労働者の賃金(同)も平均1万5590円(同2.3%増)で、同様に無期が1万6157円(同1.9%増)、有期が1万3232円(同3.1%増)で、どちらも伸びました。
19年度は前年度の労働者派遣法の改正の影響が一巡し、売上高は2割以上伸びています。20年は2月ごろから新型コロナウイルスの感染が急拡大し、多くの企業がテレワークの実施や非正規雇用の縮小に動きましたが、政府が雇用調整助成金の支給要件を大幅緩和するなどして、企業側に派遣労働者を含めて雇用維持を強く働き掛けました。派遣の場合、テレワークなどの職種向けが多いこともあって、企業の雇用意欲は衰えず、中途採用の減少で市場が大幅ダウンした転職と対照的な動きをみせた格好です。
21年6月時点の派遣労働者、8%増の169万人一方、厚労省が同日発表した2021年6月1日時点の労働者派遣事業報告(速報)によると、派遣事業所は4万2448事業所(前年比1.1%増)、派遣労働者数は168万6697人(同8.0%増)でした。そのうち、無期雇用が67万6861人(同10.8%増)、有期雇用が100万9836人(同6.1%増)となり、無期、有期ともに増えています。
取材・文責 アドバンスニュース