労働人口が減少の一途をたどる日本において、コロナ禍にあっても外国人労働者への依存は変わりません。厚生労働省が発表した2021年10月末現在の「外国人雇用状況」(届け出)によると、外国人労働者数は172万7221人(前年比0.2%増)で、届け出が義務化された07年以降で過去最高を更新しました。ただし、一昨年から続く新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2015年から続いていた2ケタ台の大幅増が2年連続でストップ。21年はコロナ初年の20年とほぼ横ばいの微増となり、「技能実習」は初めて減少しました。
コロナ禍による入国制限は、国内のあらゆる産業に著しい影響を及ぼしています。政府は段階的な制限緩和に向けた方策とタイミングを探っていますが、具体的な対応は早くても3月上旬になる見込みです。現在の外国人労働者を巡る状況と特徴をみてみると、在留資格別では「身分に基づく在留資格」(永住者、日本人の配偶者など)が最多の58万328人、全体の33.6%でした。次いで、「専門的・技術的分野」が39万4509人、「技能実習」が35万1788人、「留学などの資格外活動」が33万4603人と続きます。
コロナ禍の特徴としては、「技能実習」が前年に比べて12.6%減少したことで、調査開始以来、初めて減少となりました。ただ、コロナ禍の特例措置で、「技能実習」の期間を終えても「特定活動」という資格で残ることができたり、19年4月に創設した「特定技能」に移行したりするケースも見られ、入国制限の中にあっても全体の人数が「横ばい」を保った理由とみられます。
技能実習制度は1993年に導入。この間、入国管理法や労働関係法令の違反が絶えず、国内外から人権上の批判も挙がる一方で、時代に合わせた対象職種の拡大や実習期間の延長を求める要望が相次いでいます。政府は2017年11月に新法となる「外国人技能実習適正実施法」を施行。技能実習生の受け入れにあたって重要な役割を担う監理団体を許可制としましたが、問題点の解消には至っていません。
一方で、実態としては「技能実習」に変わる方策として創設した新たな在留資格「特定技能」は、スタートから丸3年を迎えます。
こうした実情を踏まえ、古川禎久法相は今年に入って、「技能実習」と「特定技能」の両制度のあり方を検討する勉強会を設置しました。外国人労働力が不可欠な現実を直視しつつ、迎えるうえでの環境整備と職種拡大などの弾力運用という「規制強化と緩和」の両面を検討する模様です。 古川法相は見直しに関する現時点のスタ ンスとして、「具体的な見直しの方向性や終了時期は設定していない。制度の賛否を含めて多様な意見や指摘があることは承知している」と強調。外国人労働者の受け入れ拡大を目指す政府は、両制度の難点を再び見直すことで、批判の多い現状を打開したい考えです。
取材・文責 アドバンスニュース