職安法改正案要綱を了承、労政審予算関連の雇用保険法改正案などと束ねて一括上程労働政策審議会労働力需給制度部会(山川隆一部会長)は1月13日、職業安定法上の募集情報等提供事業者(求人メディア)の対象範囲拡大や「届け出制」の導入などを盛り込んだ職安法の改正案要綱について、「概ね妥当」と答申しました。
施行は10月1日。厚生労働省は今月17日召集の通常国会に改正法案を提出し、3月末までの成立を目指します。法案は、予算関連の雇用保険法改正案、職業能力開発促進法改正案、労働保険徴収法改正案などと束ねて一括上程します。5年に一度の職安法改正で、労働市場整備を推し進めます。
AIやITなどの進化に伴い、雇用の仲介的サービスには職安法に位置づけられた職業紹介や求人メディア以外にも、求人情報を集約化するアグリゲーターや人材データベース、SNS、スポットマッチング、クラウドソーシングなど、伝統的なイメージを超える多様なサービスが存在。入職経路として若者を中心に活用が広がっており、こうした「新形態サービス」の実態把握は的確な雇用政策を打ち出すうえで欠くことのできない環境になっていました。
改正の方向性としては規制強化の側面だけでなく、「イノベーションを阻害しないことに留意しつつ、雇用仲介事業者が依拠すべきルールを明確化」するもので、新形態サービスを需給調整の一翼を担う事業者と位置付けます。そのうえで、職安法上の新たな求人メディアの定義を4類型に整理して対象範囲を拡大、届け出制にして把握する仕組み。改正後は、従来までの指針に基づく助言・指導などに加え、改善命令や停止命令、立ち入り検査ができる法令違反に格上げとなります。
この日の部会では、労使双方ともに法案要綱に異論はなく、使用者側からは「届け出制の記載内容や手続き方法を簡素にしてほしい」、労働者側は「改正が労働者保護につながる形になってほしい」と意見が添えられました。
今回の職安法改正案の要点を整理すると、
(1)新たな形態の求人メディア(ネット上の公表情報を収集する求人メディア等)について、「募集情報等提供」の定義に含めるとともに、求人メディアをハローワークと相互に協力するよう努める主体として法的に位置付ける
(2)求人メディアに募集情報の正確性や最新性を保つための措置、個人情報保護、苦情処理体制の整備を義務付けるとともに、現行の助言・指導に加え、改善命令などの指導監督を可能とする
(3)特に、求職者情報を収集する求人メディアは事前に届け出を行うこととし、迅速な指導監督を可能とする
――となっています。
法案を踏まえた運用に関する事項は、成立後の同部会で議論して細部を詰める方針です。
労働政策審議会の雇用保険部会(守島基博部会長)は1月7日、失業手当などに充てる「失業等給付」の保険料率について、22年度4月~9月を現行通り労使折半の0.2%とし、10月~23年3月を0.6%に引き上げる報告書を了承しました。
新型コロナウイルスの感染長期化に伴う雇用調整助成金(雇調金)の支給が急増し、財源が枯渇したことから、労使の負担増を決めたもの。これを受け、厚生労働省は雇用保険法改正案などを17日召集の通常国会に提出します。
雇調金については、多くの委員がこれまでの特例措置が失業の抑制に効果を発揮した点を評価したものの、財源の枯渇については、使用者側委員から「制度の安定化を図るため、財源の議論が必要。すでに予算を使い切っており、不足分は一般会計で負担すべきだ」との意見が出ました。