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【イベントレポート】ボトムアップ型コミュニティ(ERG)で実現するエンゲージメント向上〜オランダ企業の先進事例とリアルな課題〜

作成者: randstad|Oct 14, 2026, 7:07:23 AM

 

近年、多くの企業で「社員の帰属意識(Belonging)が高まらない」「若手や多様な人材の離職を防ぎたい」「心理的安全性を確保したい」といった課題が叫ばれています。

こうした課題に対し、社員が主体的・ボトムアップで組織に関与する「ERG(Employee Resource Group:社員主体のコミュニティ活動)」への注目が高まっています。

2026年7月31日、駐日オランダ王国大使館、在日オランダ商工会議所(NCCJ)、ランスタッド株式会社、エヌエヌ生命保険株式会社の4社・団体共催によるオンラインセッション「オランダ企業と考える社員参加でつくるインクルーシブな組織」が開催されました。


登壇者情報

  • 開会挨拶:
    遠藤 有紀子 氏(エヌエヌ生命保険株式会社 チーフエンプロイーエクスペリエンスオフィサー)
  • ファシリテーター:
    マルタイン・フーレ 氏(駐日オランダ王国大使館 政策オフィサー)
  • ゲストスピーカー / パネリスト:
    スプロウツ 斐呂美 氏(ブルームバーグ・エル・ピー HR APAC Inclusion Insights & Governance Community Manager)
    北川 智子 氏(エヌエヌ生命保険株式会社 エンプロイーサクセス部)
    土橋 直子(ランスタッド株式会社 人事本部 EDI&B / エンプロイヤーブランディングマネージャー)

 

本レポートでは、先進的に取り組みを進める各社の実践事例と、当日参加した実務担当者からのアンケート結果をもとに、ボトムアップ型エンゲージメント向上の「理想とリアル」を紐解きます。

 

1. 現場のリアルな声:多くの企業が直面する「ERG運営・組織開発の3大ハードル」

本ウェビナー参加者(主に企業の人事・DEI推進担当者)へのアンケート結果を見ると、企業がボトムアップ型の組織づくりを進める中で直面するリアルな課題が浮かび上がってきました。

【参加者アンケート:自社におけるERG・心理的安全性に関する現状の課題】

  • 1位:成果や影響(エンゲージメント等)の測定が難しい(約67%)
  • 2位:参加者が一部のメンバーに固定化・形骸化している(約25%)
  • 2位:社員の自発的な参加や関心が薄い(約25%)

※複数回答 ※n数14

 

特に「成果の測定難易度」と「本業以外の活動に対する正当な評価・理解」については、参加者からも切実な声が寄せられています。

【参加者の生の声(アンケート自由記述より)】

  • 「ERGの取り組みで障がい者雇用の全社研修動画を作成し、非常に達成感がありました。しかし『自分の本業ではない』ため、上司から評価に値しないと判断されてしまう環境があります。ERG活動が個人の成長の機会として評価される制度があれば、参加意義を感じやすいと思います」

「社員の自主性に任せるだけ」では活動が形骸化してしまう――。では、この壁を先進企業はどう乗り越えているのでしょうか?

 

 

2. 実践企業が明かす「ボトムアップの活動を形骸化させない3つのアプローチ」

パネルディスカッションでは、ブルームバーグ、エヌエヌ生命、ランスタッドの3社が、具体的な取り組みと失敗させない工夫を語りました。

 

① 「正解を求めず小さく始める」と「個別の声掛け」

  • 最初から完成形を目指さない: ブルームバーグやランスタッドも、最初は有志の数人や手探りの試みからスタートしています。エヌエヌ生命の北川氏も「最初から完璧を目指さず、自社の雰囲気に合わせて模索していく」と語るように、段階的な変化を受け入れる姿勢が重要です。
  • 草の根の「個別アプローチ」: 全体アナウンスだけでは一歩踏み出せない社員に対して、ランスタッドの土橋は「イベント参加者へ個別に参加を呼びかけるなど、地道な声掛けが参加につながる」と明かしました。

② 心理的バリアの徹底的な排除(アライの参画)

  • 当事者/アライの区別を不要に: ブルームバーグのスプロウツ氏は、LGBTQ+などのテーマにおいて、参加時に「当事者かサポート(アライ)か」を表明させる必要をなくし、誰でも気軽にコミュニティへ参加できる環境を作ることを重視していると語りました。
  • 勤務時間内の開催とお楽しみ要素: 同じくブルームバーグでは、活動は原則「勤務時間内」とし、ランチタイムの開催や軽食を用意するなど、心理的バリアを下げる実務的な工夫が効果を上げています。

 

③ 活動を「経営・人材戦略(Win-Win)」として位置づける

最も重要なのは、ERG活動を単なる「サークル活動」ではなく、「会社にとっても社員にとってもメリットがある戦略的プラットフォーム」に昇華させることです。

  • 人材開発・スキルアップの場: ブルームバーグでは、ERGのリーダーシップロールを「人材戦略」の一部と位置づけ、年間計画・予算策定や一部の管理職向け研修へのアクセス権などスキルアップの機会を提供しています。また、ランスタッドでも、役員との接点増加や他部署とのネットワーク形成など、社員側のメリット(Win)を意識して運営しています。
  • 経営陣の巻き込み: 3社に共通しているのは、各社とも各ERGに役員やシニアマネージャーがスポンサーとして就任し、経営陣が活動を認知・後押しし、全社的なバックアップ体制を整えている点です。

 

3. 「ボトムアップ×エンゲージメント向上」の本質とは?

オランダのEDI&B(Equality, Diversity, Inclusion & Belonging)思想の根底にあるのは、「人を無理に組織の型に合わせるのではなく、多様な人に合わせて組織のあり方を柔軟に変える」という考え方です。

ERGというボトムアップの活動は、単に「社内コミュニティを増やすこと」が目的ではありません。社員自らが組織の文化づくりに関与し、異なるバックグラウンドを持つ同僚や役員と繋がり、本業とは別の場所で価値を発揮する過程を通じて、はじめて「この組織にありのままの自分で居ていいんだ」という深い帰属意識(Belonging)が生まれます。

 

まとめ

今回のイベントおよびアンケート分析から見えてきた、持続可能なボトムアップ型組織づくりのポイントは以下の通りです。

  • 成果を急がず、失敗を前提に小さく育てる
  • 個別の声掛けや勤務時間内の開催で、参加のハードルを下げる
  • 活動を「個人のスキルアップや評価」と結びつけ、会社と社員のWin-Winを作る

アンケートで多くの担当者が抱えていた「成果測定の難しさ」や「正当な評価」という課題に対しても、ERG活動を「人材育成・組織活性化の戦略」として位置づけ直すことが解決の第一歩となります。

自社に合った「社員主体の組織づくり」に向けて、まずは小さな対話の場から始めてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

関連情報:ランスタッドのEDI&B推進について

ランスタッドでは、「世界で最も公平で専門性を備えた人材会社」を目指し、社内でのERG活動や多様な働き方の推進に取り組んでいます。

具体的な推進事例や各種レポート・コラムも公開していますので、ぜひご覧ください。