同じ水準の待遇を用意し、同じメッセージで採用募集をかけたのに、部門ごとの定着率に差が生まれているなどといった現象に心当たりのある企業の方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは施策があっているかよりも、部門や分野ごとに働き手の志向が異なることが原因かもしれません。
世界34の国と地域で実施される世界最大級の調査「ランスタッド エンプロイヤーブランドリサーチ 2026」から、専門分野別に整理した5つのレポートが発行されました。対象はIT、財務・会計、物流、エンジニアリング、ライフサイエンスの5分野で、専門性が高く、企業の枠組みを越えた人材流動性の高い領域です。あわせて、5分野を同一基準で比較した「セクター・職種別 比較クイックガイド(日本版)」も発行されています。
この記事では、調査から得られた各分野の差異をもとに、働き手の異なる本音を読み解きます。
日本の働き手が企業を選ぶ基準は、1位が魅力的な給与と福利厚生で59.2%。以下、職場の雰囲気の良さが49.4%、良好なワークライフバランスが48.7%、雇用の安定が45.5%、やりがいのある仕事内容が43.5%と続きます。
報酬が最上位に立つ点は5分野すべてに共通している一方で、その重要度や2位以下の順位には分野ごとの個性が表れます。以下で紹介する数値は、いずれも日本国内の労働者4,464名を対象とした調査に基づくものです。
たとえばIT分野では、全体平均を上回る63.9%が給与・福利厚生を重視する一方、「職場の雰囲気の良さ」は、45.9%と平均を下回りました。また最新技術の活用(29.5%)への要求が平均の約2.7倍に達しており、勤務環境が快適であることより、自身の市場価値を高める開発および技術環境の有無が、職場選びの基準になっていると言えそうです。
これに対して物流分野は対照的です。最上位の給与・福利厚生(54.7%)に続いたのは「職場の雰囲気の良さ」(50.0%)で、「ワークライフバランス」(39.3%)に大きく差をつけています。休憩時間の確保や公平な仕事量の配分など、働きやすさは当然の基本条件となっており、さらに日々の職場の雰囲気の良さがより強く求められている傾向が伺えます。
残る3分野でも、求職者が求める価値観が異なることが分かります。高いワークライフバランスと高給を同時に求める分野もあれば、「仕事のやりがい」や「企業のパーパス」を上位にあげる分野もありました。一律に働きやすさを訴求したメッセージが分野によって響きにくいのは、こうした根本的な構造の違いが背景に存在するためです。
会社ごとの労働環境に関する情報は、以前よりも社外から見えやすくなっています。男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務は、2026年4月から従業員101人以上の企業にも広がり、育児期の柔軟な働き方に関する措置も企業規模を問わず義務づけられています。
求職者は求人票に並ぶ条件だけでなく、公表された数値からも複数の企業を見比べられるようになりました。制度を備えているだけでは、他社との優位性を訴えることはできません。報酬や制度が一定の水準に達したうえで、その先に何を提供できるかが問われる段階に入っています。働き手にとっては、企業を選ぶ材料が充実したことは歓迎すべき変化だと言えそうです。一方、横並びで比べられることが前提となった企業にとっては人材獲得と定着のハードルは上がり続けています。
今回の5分野のレポートによれば、働き手が企業に求める条件そのものは、大きく変わっていません。しかし掲げられた条件が日々の業務のなかでどれだけ一貫して守られているかを見る目が厳しくなっていることは繰り返し指摘されています。休暇制度や柔軟な勤務の仕組みが整備されていても、業務量の配分や上司のマネジメントといった点が不十分なら、働き手はワークライフバランスが確保されているとは評価しません。
ただ、社内調査だけで実態と評価の隔たりを客観視するのは困難です。従業員満足度調査は自社の状態を映しますが、その水準が労働市場のなかでどのあたりに位置するかまでは教えてくれないためです。そこで外部の物差しが必要になります。
人材定着の角度からも、興味深い差が現れています。
過去半年で実際に転職した人の割合は、日本の5分野とも1割前後にとどまりますが、分野によって「今後の流動性」には明確なギャップが存在します。
たとえば「働きたい魅力度ランキング」で全16セクター・職種で3位につけ、高い人気を誇る財務・会計では、現職の約5人に1人が他社への転職を検討しており、全体の平均を大幅に超えています。一方、IT分野の他社転職意向率は平均を下回り、見た目上は穏やかな分野です。同じ企業内でも、流動性について大きな部門差が存在することは明らかです。
そして数値が低いからといって離職リスクが低いと判断するのは早計かもしれません。ITでは社外への転職意向を上回る割合で、社内異動を希望しているというデータが得られました。転職に伴うリスクは慎重に捉えているものの、社内で環境を変えたいという心理が伺えます。離職率だけで判断すると、こうした数値に表れにくい人材の心理には目が向きにくくなります。しかし、転職によるハードルを上回るような条件が他社から提示されれば、離職は起こり得るでしょう。
また離職を検討する際の引き金も、分野によって分かれます。IT分野では「不十分な報酬(44.0%)」が離職の最大要因となり、待遇面のシビアな見方が目立ちます。次いで「ワークライフバランス(35.7%)」「通勤やデジタル環境などの利便性の低さ(33.5%)」も離職のきっかけとなっています。これに対し、財務・会計分野で離職の引き金の上位に挙がったのは「やりがいの欠如(39.0%)」と「成長機会の不足(34.3%)」でした。「ワークライフバランスの欠如(25.5%)」は大きく下回っており、労働環境の改善だけでは離職を防止しづらいことが分かります。企業は、挑戦的な仕事や成長の機会をどう用意するかが問われることとなります。
今回ご用意したダウンロード資料は、自社の現在地を多角的に分析できるよう、「セクター別レポート(5本)」と「セクター・職種別 比較クイックガイド(1本)」で構成されています。
5つのレポートは同じ構成をとっており、前半には日本市場における注目ポイントを、後半では34カ国・地域に共通するトレンドを掲載しています。世界各国と日本の課題をそれぞれ比較できるようになっていることから、日本特有の課題なのか、それとも国際的に共通した流れなのかを検討、確認するうえでも有効です。
国内パートでは、各分野の働き手が企業に求めるものや、期待と現実のギャップについても詳しく記載されています。給与や雇用の安定への評価が高い分野であっても、昇進機会や職場の雰囲気には改善の余地があるなど、それぞれの現在地を確認できます。
後半のグローバルパートでは、報酬、雇用の安定、ワークライフバランスの再定義、採用プロセスの変化といったテーマ別で世界的に何が起きているか5つのトレンドがまとめられています。あわせて、企業が取り組むべき優先事項を戦略的提言として整理しているのも特徴です。
日本と世界の比較に加えて、自身に関連の深い分野と他分野を横に並べるプロセスにも意味があります。今回新たにセットとなった「セクター・職種別 比較クイックガイド」では、ランスタッド独自の国内データ(4,464名)をベースに、IT・財務会計・物流・エンジニアリング・ライフサイエンスの5分野を同一基準で横断比較しています。16セクター・職種の魅力度ランキング、企業選びの基準12項目一覧、分野別の離職トリガーまで、採用・定着に関わる主要データを対比できる内容です。
単独分野の数値だけ観察しても、その数字が高いか低いか判断することはできません。5分野を並べて読むことで得られる示唆を、自社に活かすことができるのはこうした比較を経てこそだと言えます。
今回、以下のリンクから、すべての資料を一括でダウンロードいただけます。明日からの採用・定着戦略のアップデートに、ぜひご活用ください。
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▼ 5セクター別レポート&比較クイックガイド(計6点)を一括DL 日本の独自データ(4,464名)による5分野の横断比較から、IT・財務会計・物流・エンジニアリング・ライフサイエンス各分野の詳細レポートまで、フォーム入力1分で一括ダウンロードいただけます。 |
本記事で紹介したのは、5本のセクター・職種別レポートおよび比較クイックガイドに収められたデータのごく一部です。各資料には、分野ごとの働き手の本音を多角的に映すデータが収められています。ここまで触れていない4つの視点を紹介します。
グローバル調査において、エンジニアリング人材の約6割が、制度そのものよりも、疲労回復のための時間やマネジメントの柔軟性といった日々の労働環境を重視していると答えました。ITでも、適切な業務量や十分な休暇、助け合える職場文化はもはや特典ではなく必須条件とみなされています。制度を導入しても評価が上向かない企業にとっては、方針見直しの起点になるかもしれません。
採用チャネルとしては、どの分野でも求人サイトが最も広く使われています。ただし、採用成功に結びつく決定打は分野によって大きく異なります。例えばグローバル全体の傾向を見ると、物流では、採用成功に人的ネットワークやリファラルが大きく寄与しており、その傾向は世界の全産業平均と比べても際立っていることが分かりました。またライフサイエンス分野でも、専門性の高い職種やベテラン層の採用において、プロフェッショナルネットワークや業界コミュニティといった「人脈・繋がり」が成果を左右する傾向が顕著です。このように、投資すべきチャネルは、分野によって変わります。
働きたい魅力度で16のセクター・職種の頂点に立った分野があります。ところがその分野では、職場環境の悪さとワークライフバランスの欠如が、いずれも離職の引き金として上位に並びました。技術やイノベーションへの投資不足を挙げる割合も、日本平均の2倍以上に達しています。採用時のブランド力の強さが、そのまま定着につながるとはかぎりません。
財務・会計では、世界の人材の約8割が、情報収集と応募の場面で人事担当者や面接官との直接的なやりとりを重視しています。さらに日本市場においても、財務・会計職では約7割が対話を強く求めており、「求職初期からの人との直接対話・繋がり」を重視する傾向が顕著にあらわれています。採用のデジタル化が進むなかで、どの接点に人を介在させるかのプロセス設計が分かれ目となります。
採用のデジタル化や制度整備が直接、求職者の心を動かすわけではありません。分野が違えば、企業に求めるものも、離職理由にも差があります。全社共通の施策で十分なところ、もしくは分野や職種ごとに設計を分けるべきところを検討する材料として、資料をご活用ください。
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▼ 5セクター別レポート&比較クイックガイド(計6点)を一括DL 日本の独自データ(4,464名)による5分野の横断比較から、IT・財務会計・物流・エンジニアリング・ライフサイエンス各分野の詳細レポートまで、フォーム入力1分で一括ダウンロードいただけます。 |