少子高齢化による人口構造の変化と、AIなどの急速なテクノロジーの導入という二重の課題により、日本のビジネスと雇用のあり方は大きく変化しつつあります。この変化の中で企業が成長を続けるには、各業界特有の人材の動向を見極めることが重要です。
ランスタッドは、日本全国を対象とする求人サイト、LinkedInを含むプロフェッショナルネットワーク、Lightcast社ならびにSalaly Expert社等から得られたデータをもとに市場分析を独自で行い、「IT&テクノロジー」「インダストリアル・エンジニア」「会計・財務」の3分野における「マーケット&サラリーレポート」を公開しました。ランスタッドでは幅広い業界のサポートを行なっておりますので、他の業界についても順次公開予定です。
各分野の主要職種における詳細な年収ベンチマークや人材の需給、スキル要件といった市場分析に加え、業界動向や経済・地域的要因が与える影響を考察。企業、求職者、業界関係者の皆さまが的確な判断を下し、成功を収めるための有益かつ実用的な知見を提供しています。
今回はその中から、特に変化の激しい「IT・テクノロジー業界」のレポートに焦点を当て、弊社の専門コンサルタントの考察内容も交えながら、特徴的なデータや分析を紹介します。
「マーケット&サラリーレポート 日本のIT&テクノロジー業界」の分析から、IT市場における需要はいくつかの層に分かれることが明らかになりました。
特に「データエンジニアリング」「データサイエンス」「サイバーセキュリティ」といった職種は、慢性的な人材不足と戦略的な重要性の高まりから需要が伸び続けています。中でも「サイバーセキュリティ」の求人件数は基準値の500%以上にまで急増しており、IT市場において極めて重要な分野であることがわかります。
中間層には「ソフトウェア エンジニアリング」「クラウド/DevOps」「プロジェクト/プロダクトマネジメント」といった職種が含まれ、持続的かつ安定した成長を見せています。
下位層・周期的カテゴリとしては、需要の低迷期から急上昇を見せる「テック系営業職」、時折急激な採用増加はあるものの持続的な成長トレンドが見られない「コンサルティング」が含まれます。これらの職種は需要の波が激しく、特定のキャンペーンやプロジェクトに連動した断続的かつスポット的な需要であると見受けられます。
少子高齢化による人手不足への対策として、あらゆる業界でAIなど新たなテクノロジーを導入する戦略が急速に進んでいます。ビジネスの根幹を支えるデータの活用や、デジタル化に伴うセキュリティリスクへの対応は、企業が持続的に成長するための最重要課題です。こうした戦略に対応するためこれらの分野を担う専門人材の需要が構造的に高まっていると見られます。
AI人材の獲得競争は特に激しく
ランスタッドの専門コンサルタントによると、日本では次のような採用動向が見られるといいます。
このように、AIをはじめとする先端分野の人材獲得を成功させるには、市場の動向を的確に捉え、給与、働き方、キャリア開発支援といった多角的なアプローチで候補者にアピールする必要があります。
レポート本編では、これらの需要分野における「市場で特に高く評価されている、より具体的なスキルセット」や「日本語と英語に堪能なバイリンガル人材の相場の変化」といった、より詳細な情報が、コンサルタントの視点による分析とともに盛り込まれています。ぜひ、貴社の人材戦略にご活用ください。
優秀なIT人材は、統計的に日本のどこに分布しているのでしょうか?レポートの分析から見えてきた地理的な傾向は、採用戦略を考える上で重要な示唆を与えてくれます。
同レポートの調査結果によると、アーキテクト、シニアSRE、プロダクト/DXマネージャー、ビジネスアナリストといったシニア・戦略レベルの人材は、その約80%が東京に集中していることが明らかになりました。他にも、IT戦略・企画・コンサルティングやDXマネージャーなどの職種郡も東京への偏りが見られます。
その一方で、インフラエンジニア、クラウドエンジニア、プロジェクトマネージャー、テック系営業などのフロントポジションは、各地に広く分布する傾向があります。特に大阪は、SAPおよびデータ/クラウドエンジニアにおいて、東京に次ぐ人材プールを形成しています。
突出した東京の給与水準ーーこの傾向をどう採用戦略に活かすか?
この人材分布の偏りは、給与水準にも明確に表れています。
地域別に見るとIT業界における東京の給与水準は突出しており、神奈川もそれに続いています。大阪や愛知といった地方主要都市は競争力はあるものの、東京・神奈川よりは低い給与水準にあります。埼玉は首都圏にありながら給与水準は東京・神奈川ほど高くはなく、最もコスト効率の高い市場となっています。大阪、愛知、埼玉をはじめとする地方主要都市は、ミドルクラスのチームを拡大するための費用対効果が高い地域と言って良さそうです。
こうした地理的傾向を活用することで「東京ではリーダーシップや戦略的専門知識を持つ人材を獲得、地方主要都市では効果的なコスト最適化を図る」という、2つの戦略を同時に進めることも可能になってきます。レポートで詳細な給与水準や、他の地方主要都市の様子を知ることによって、自社の状況にマッチした具体的な戦略も見えてくるでしょう。
IT&テクノロジー業界も他業界と同様、慢性的な人材不足の渦中にあります。しかしレポートを見ていくと、「完全リモート勤務への対応」や「地方主要都市におけるミドルクラス人材活用」など、企業側が柔軟な採用方針を採ることで、費用対効果を上げながら優秀な人材を獲得できるヒントが垣間見えます。
レポートにはこうしたヒントばかりでなく、「応募者のエンゲージメントを高める選考プロセス」など、採用を成功に導くための具体的なアクションなども豊富に含まれています。人材獲得競争を勝ち抜くため、まずはレポートをチェックして自社にできることを探しませんか。そしてIT&テクノロジー業界の動向に詳しいプロのコンサルタントへ相談することで、さらなる競争力強化を図っていきましょう。