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新たなフェーズを迎えた「コールセンター」~企業の課題と打開策~

作成者: randstad|Apr 29, 2025 3:00:00 PM

新規ビジネスの展開や、既存サービスの向上に不可欠な企業のコールセンター。コロナ禍におけるワクチン接種のバックオフィスなどをはじめとする行政の大型スポット案件の縮小に伴い、需要はやや減少したものの、この数年の市場規模は1兆円超をキープして堅調に推移しています。
今後も、問い合わせ業務などの需要は高まる見通しですが、企業のコールセンター運営は人材不足が顕在化しており、外部人材の活用やアウトソーシングを取り入れた運用法が必要となるでしょう。

これまで存在しなかったAI活用の到来などで、コールセンター運用が新たなフェーズを迎えるなか、最新の動きや課題、これからの展開を分析します。

 

Index

 

コールセンター市場の概況

 
 生産年齢人口の減少や人件費高騰など厳しい外部環境などが影響し、非対面型の対応が拡大。実店舗で企業の担当スタッフと顧客が直接向き合う接客ではなく、コールセンターやチャット、メールを活用して対応するもので、これらのアウトソーシング需要は伸びています。

矢野経済研究所の2025年公表の調査によると、2023年度のコールセンターサービス市場は1兆902億円(確報)で、2026年まで増加する予測を立てています。

インバウンド型とアウトバウンド型

コールセンターには「インバウンド型(受信)」と「アウトバウンド型(発信)」の2種類があります。前者は顧客からの問い合わせ受付、後者は企業から顧客に電話をかける形態です。具体的に分類すると、
 
インバウンド型
  • 商品やサービスに関する問い合わせ対応
  • 製品の取り扱いや不具合などメンテナンスに関するサポート対応
  • 通信販売の注文受付
  • 利用者からのクレーム対応
アウトバウンド型
  • 営業・面談アポイントの獲得
  • 商品購入後のサポートサービス
  • 既存サービスのオプションや新商品の紹介
  • アンケート実施や市場動向調査

となっています。

いずれも、常設と期間限定のスポットが存在し、電話による業務が主体ですが、いまはメールやチャットなどの各種チャネルの活用を織り交ぜているコールセンターが広がっています。
 

 

現状と運営企業の課題

 

コールセンターは、利用者と企業を結ぶ直接的な接点で「窓口」です。良し悪しや品質レベルの高低など、企業イメージを左右する重要な最前線部隊ですが、人材確保の難しさや定着率の低さなど、課題が散見されます。
コールセンター業界が直面している課題と改善策を整理します。

運営の課題
  1. 体制・陣容が充分でないために電話がつながりにくい
  2. 対応に手間取って時間を要し、次の顧客を長く待たせてしまう
  3. 離職率の高さから慢性的な人手不足に陥りやすい
  4. 繁忙期と閑散期における体制の弾力化が難しい
  5. 守秘義務や顧客プライバシーの関係で在宅勤務やテレワーク導入が容易でない
  6. 業務の効率化が進まず生産性が低い
  7. 問い合わせ内容が多岐にわたり、マニュアルが複雑化・高度化している

運営の改善策
  1. 業務の波動に合わせた派遣社員の活用
  2. コールセンターのアウトソース化
  3. 対応マニュアルの点検・見直し
  4. チャットボットの導入(※1)

※1 会話するように短いテキストや音声でコンピューターに指示し、その結果を受け取るユーザーインターフェースの一種。

企業におけるコールセンターの運用は、効率的・効果的な改善で利益拡大に結び付きます。繁忙期に派遣で専門人材を招いたり、運営を外注化したりする選択肢も有効です。

 

 

オペレーターに適した人材特性

 

コールセンター運営の主人公はオペレーターです。その業務は顔が見えない相手との対応や、相手の都合と機嫌による理不尽なクレーム対応など、常に気を張った状態の仕事です。職場の環境づくりなど、ストレスが溜まるオペレーターの精神的ケアとサポートが大切です。

では、オペレーターに適した人材とは、どのような特性を持った人なのでしょうか。コールセンター業務の派遣や受託を担っている人材サービス会社の分析を紹介します。

聞く、伝える、教える
相手の言いたい話を丁寧に聞き取り、困りごとの解決に向けた「道案内」を得意とする人

着座の仕事
基本スタイルである着座の業務を好む人

切り替え上手
顧客からの問い合わせはさまざま。前の顧客と次の顧客は別であり、切り替えを上手くできる人

オペレーターの研修は長期間にわたります。知識や技術はしっかり体得できるので、性格や落ち着き、包容力が決め手となりそうです。そうした観点から、プレシニア(45歳〜59歳)の活用が注目されています。この層の人口は約2700万人で20代未満の約2300万人を上回っているほか、シニア層(65歳以上)とも違って心身ともに現役としての活躍が期待できます。

 

コールセンター業界のこれからの動き

 

コールセンター業界は変化の過渡期にあります。新たな流れとして「AI活用」や「外国語対応」が挙げられます。

AI活用
コールセンター業界にもAI活用の波が訪れています。音声認識システムやチャットボットの導入で、さらなる業務効率化を推し進めています。電話での対話がメインのコールセンターの職場には、新たな手法で顧客対応する仕組みが拡大。「コンタクトセンター」と呼んで、コールセンターと併用するケースが増えています。

外国語対応
外国人観光客や日本で働く外国人が増加傾向にあるため、英語・中国語・韓国語などをはじめとする外国語対応の需要が急速に高まります。これからのコールセンター運営のポイントになる要素であり、多言語対応のチャットボット導入や派遣社員、外国語対応を得意とする人材サービスへのアウトソースが効果的です。

 

派遣活用・アウトソーシング利用のポイント

 

多様化するコールセンター業務で、企業が人材派遣を活用するメリットは、

  • 繁忙期や新サービスのスタート時における柔軟性
  • 採用コストの削減と育成コストの軽減
  • 経験のある人材の即戦力活用


繁忙期や新サービスのスタート時における柔軟性
派遣社員の活用で、繁忙期などに必要な人員を柔軟に運用でき、31日超から最大3年の弾力性があります。


採用コストの削減と育成コストの軽減
派遣社員の採用やコールセンター業務に必要な基礎的スキルは人材派遣会社が担当するので、採用まわりの経費負担や育成コストを削減・軽減できます。


経験のある人材の即戦力活用
自社採用の正社員やパート・アルバイトの場合、研修計画や教育・指導などすべてを自社内で実施しなければなりませんが、コールセンターに精通した派遣会社の利用で即戦力人材を活用できます。

 

 

まとめ

企業にとってコールセンターは重要です。一方で、人材難とAI進展のなかで運用・運営は難しくなっています。自社運営のなかに、業務波動に合わせた派遣社員の活用は打開策の一手となるでしょう。

日本人材派遣協会の「派遣社員WEBアンケート調査」(2025年1月発表)では、回答者の約9割が女性で、年齢層は50~55歳未満が最多の19.4%、次いで45~50歳未満が16.5%で平均は45.3歳となっています。「オペレーターに適した人材特性」で紹介した「聞く、伝える、教える」「着座の仕事」「切り替え上手」といった要素が多く重なる属性であり、コールセンターは有力な活躍の場のひとつになり得ます。

企業のコールセンターの効果的運用は、顧客の満足度と事業発展につながる重要なカギとなりそうです。

 

 

筆者プロフィール

株式会社アドバンスニュース
代表取締役(主筆)

大野 博司 氏

1970年、青森県出身。中央大学大学院戦略経営研究科( MBA)修士。
1994年、日本新聞協会加盟の地方紙に入社。社会部、教育、 核燃料サイクル、水産、港湾物流、 政経部を経て2004年に報道デスクに就任。
'05年に東京支社で国会取材担当兼論説委員に就き、 主に厚生労働省と経済産業省、内閣府の分野を取材。海外取材は、 労働行政や水産・物流をテーマに韓国、中国、 オーストラリアを訪問。
2010年にインターネット報道を主体とする雇用労働の専門媒体・株式会社アドバンスニュース(日本インターネット報道協会加盟)の設立に参画。
日本外国特派員協会会員の労政ジャーナリストとしてHR系雑誌などに執筆・寄稿しているほか、FMラジオ「Jwave」やNHKラジオ「Nらじ」などに出演して多様な働き方を解説。

政治と省庁、人材サービス企業の最前線で先行取材をこなす。

(文責:アドバンスニュース