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2025年4月新設!「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」とは?

作成者: randstad|Dec 18, 2024 12:00:00 AM

※2024年12月時点での情報です。

2025年4月スタート!「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」

雇用保険法等の改正により、2025年4月1日から新たに「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付」が始まります。制度開始に備え、まずはこの2つの給付について理解を深めておきましょう。

 

「出生後休業支援給付」とは?

「出生後休業支援給付」とは、「共働き・共育て」の推進を目的に、育児休業中の収入減をカバーする給付金制度です。

「出生後休業支援給付」のポイントは、“夫婦そろって”育児休業を取得することで給付されるという点で、特に男性の育休取得を促すねらいがあります。

雇用保険の被保険者とその配偶者の両方が育児休業を取得した場合に、これまでの育児休業給付に上乗せして支給されます。

 

「出生後休業支援給付」の対象者・支給額

「出生後休業支援給付」の対象となるには、子の出生直後の一定期間内に、夫婦がともに14日以上の育児休業を取得する必要があります。

  • (男性)子の出生後8週間以内に14日以上の育児休業を取得
  • (女性)産後休業後8週間以内に14日以上の育児休業を取得

男性は「出生後8週間以内」とあるように、給付を受けるためには必然的に「産後パパ育休(出生時育児休業)」を利用することになります。

なお、「産後パパ育休」とは、子の出生後8週間以内に、合計4週間(28日。2回まで分割取得可能)を限度として育児休業を取得できる制度で、1歳未満(8週以後)の子育てを対象とした育児休業とは別に取得できるものです。

父親の育休をコマ切れに取得しやすくしており、母親の体調に合わせたり、母親の復職を容易にしたりと、家庭の事情に合わせて柔軟に利用できるようになっています。

関連記事:産後パパ育休(出生時育児休業)が施行!男性の育児休業取得を促進するために企業ができること



「出生後休業支援給付」の支給額

「出生後休業支援給付」は、最大で28日間、それぞれで休業開始前賃金の13%に相当する額が支給されます。

現行の「育児休業給付金」および「出生時育児休業給付金」の給付率は67%なので、「出生後休業支援給付」を上乗せすると休業開始前賃金の80%となります。

給付金には社会保険料がかからないため、育休前と同額の手取り収入(10割相当)が補償されることになります。これがいわゆる「休業給付が手取り10割になる」といわれる理由です。

 

<育児休業給付の給付イメージ>

厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要」より引用



 

「出生後休業支援給付」は既存の育児休業給付に上乗せされる

前述の通り、「出生後休業支援給付」は、現行の「出生時育児休業給付金」「育児休業給付金」に上乗せして支給されます。この2つの制度についても、簡単に押さえておきましょう。

<出生時育児休業給付金>

雇用保険の被保険者が、子の出生後8週間の期間内に産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合、一定の要件を満たすと受けられる。

 

<育児休業給付金>

雇用保険の被保険者が、原則1歳未満の子(※)を養育するために育児休業(2回まで分割取得可能)を取得した場合、一定の要件を満たすと受けられる。

※一定の要件に該当すると1歳2カ月、あるいは1歳6カ月または2歳に延長される。

 

受給要件の例外(ひとり親、自営業、主婦(夫))

「出生後休業支援給付」は、夫婦そろって出生後休業を取得することを前提としています。ただし、以下の1~3のケースは、「配偶者の育児休業の取得を求めずに支給する」、つまり、本人のみの育休取得で受給が可能となります。

  1. 配偶者がいない場合(いわゆる「ひとり親家庭」)
  2. 配偶者が雇用労働者以外(自営業やフリーランス)
  3. 配偶者が専業主婦(夫)

 

 

時短勤務者が対象になる「育児時短就業給付」とは?

「育児時短就業給付」とは、雇用保険の被保険者が、子育てのために時短勤務を選択した場合の新たな給付制度です。

時短勤務制度自体はこれまでもあったものの、制度利用者への給付金はなく、フルタイム勤務と比較し収入減となるため利用しにくいという状況でした。この収入減を給付金でカバーすることにより、「共働き・共育て」を推進するのがねらいです。

 

「育児時短就業給付」の対象者・支給額

「育児時短就業給付」の対象者は、2歳未満の子の育児のために、時短勤務制度(3歳未満の子どもを育てる男女従業員が希望することで1日の所定労働時間を6時間に短縮する制度)を選び、賃金が低下した従業員です。

支給額は、時短勤務中に支払われた賃金額の10%です。ただし、時短勤務の賃金と給付額の合計が時短勤務前の賃金を超える場合は、調整のため給付率が調整(下がる)されます。

 

育児時短就業給付の要件

「育児時短就業給付」を受けるには、2歳未満の子を養育するために時短勤務を行い、かつ、以下のA・Bいずれかに該当する必要があります。

A:育児時短就業を開始する前の原則2年間に、みなし被保険者期間(※)が12カ月以上あること。

B:「育児休業給付金」または「出生時育児休業給付金」を受けていた場合、その給付金にかかる休業の終了後、引き続き育児時短就業をしていること。

※「みなし被保険者期間」とは、休業開始日=被保険者でなくなった日(資格喪失日)とみなして、第14条(被保険者期間)の規定を適用した場合に被保険者期間に相当する期間を指す

 

 

育児・介護休業法の大幅改正!企業はさらに柔軟な対応が求められる

本記事で解説した2つの給付金も含め、育児・介護休業等にかかる制度は段階的に改定されています。たとえば、2025年4月施行予定の改正で就業規定などの見直しが必要な箇所として、以下のようなものがあります。

  • 所定外労働の制限(残業免除)の対象を、現行の3歳未満から、小学校就学前の子を養育する労働者に拡大。
  • 子の看護休暇を、「感染症に伴う学級閉鎖」や「入園(入学)式、卒園式」などでも取得可能に。対象も現行の小学校就学前から、小学校3年生修了まで拡大。
  • 3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることを、事業主の努力義務に。
  • 男性労働者の育児休業等の公表義務を、常時雇用する労働者数が現行の1,000人超から300人超の事業主に拡大。

 

 

誰でも育児と仕事が両立できる環境を目指して

「出生後休業支援給付」および「育児時短就業給付」の施行に向け、就業規則や育児休業規定の改定のほか、従業員への情報提供などの準備が必要です。行政からの詳細の公表を待ちつつ、現状でわかっている範囲で必要な準備を進めていきましょう。

厚生労働省では、「育児・介護休業等に関する規則の規定例」として、規定例や社内様式例、労使協定の例、周知やポスターに活用できる参考様式などを公開しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

※2024年12月時点での情報です。