ランスタッドでは、「ワークモニター」という労働市場調査を全世界規模で実施しています。
この労働市場調査は、18歳から67歳までの2万7000人の働く人々を対象とし、世界でも最大規模の調査になります。
今年で21年目となる2024年調査は、2023年10月23日~11月11日の期間、18歳から67歳までの、週24時間以上働く会社員(被雇用者)と求職中の失業者、個人事業主(フリーランサー)を対象にオンラインで調査を行ないました。
調査地域は、ヨーロッパ、アジア太平洋、南北アメリカの計34の国と市場です。
この記事では、ワークモニター2024のレポートの中から、特筆すべき点をご紹介します。
ワークモニター2024レポート全文は、下記ジよりダウンロードできますので、より詳細をご覧になりたい場合はダウンロードしてご確認ください。
近年、採用や仕事の評価、人事考課においては、職場の公平性がより重視されるようになり、従業員個々の事情に配慮すること(理解)が必要になってきています。
公平性と理解について、世界の労働者はどう考えているか見ていきましょう。
2024年調査では、働く人に「自分にとって最も重要な職場の公平性など“EDI&B”(*注)に関する考え方・方針は何か」について重要なものを3つあげてもらったところ、「ジェンダー間の賃金の平等」が65%となり、他のEDI&Bの考え方の中で、断トツの最上位となりました。
*注:EDI&Bとは、以下の4に関する方針を指す。E=エクイティ(公平性)、D=ダイバーシティ(多様性)、I=インクルージョン(包摂性)、B=ビロンギング(所属意識)
上のグラフにあるように、2位となったのは、「全人材が利用できる家族休暇」で、3位は「多様な背景をもった従業員」でした。
ただ、今年の調査の回答者は、「給与」、「育児休暇の方針」、「企業価値」にも、前年よりわずかに強い関心を向けています。
その理由は、目下、世界が経験している「複合危機(ポリクライシス)」から生じた経済的圧力の反映だろうと思われます。経済が失速し、労働者全体として失業への懸念が増加しているからでしょう。
他方、日本の場合は、「ジェンダー間の賃金の平等」や「全人材が利用できる家族休暇」よりも、「多様な背景をもった従業員」「多様な背景をもったリーダー人材」「CSR」を選んだ回答者が多かったのが特徴的です。
ジェンダーギャップや家族との時間といった問題への意識が、諸外国に比べて高くないことが見て取れます。
会社や組織における「世界観(価値観)」は、回答者の多くは、(2023年の調査からわずかに減少したものの)現在の自分の仕事にとって非常に重要性が高いと評価しています。
回答者の10人に7人は、 企業・雇用主の「価値観」および「パーパス(目的意識・存在意義)」が、「持続可能性」「多様性」「透明性」などの領域で「自分の考え方と一致している」と述べています。たとえば、南北アメリカでは、回答者の4分の3近くが、「雇用主の価値観と(自分の価値観が)一致している」と答えています(中南米:74%、北米:73%)。
また、調査回答者の38%は、次に転職する際には「企業のリーダーの考え方に賛同できなければ仕事を引き受けない」と答えています。これは、とくにアジア太平洋地域で最も高くなっています(43%)。
そして、同じ割合(38%)の回答者が、「社会問題および環境問題に関する価値観が自分自身の価値観と異なる雇用主を選ばない」と答えています(ただし、2023年の42%からはわずかに減少しています)。この点が最も高く表れているのは、アジア太平洋と中南米の国々で、それぞれ46%と45%でした。
上記の質問(どんな場合は仕事を引き受けないか)に関して、日本の場合は、「リーダーの考え方に同意できない場合」が32%(世界全体:38%)、「組織が多様性と公平性の向上に積極的に取り組まない場合」が27%(世界全体:37%)、「社会問題と環境問題について自分の価値観と合致しない場合」が40%(世界全体:38%)となっています。
価値観および世界観の労使間の一致に関してキーとなる概念は「理解」です。回答者のおよそ3分の1(29%)が、「自分たちの世代のことを雇用主は理解していない」と答えています。
このような、連帯感の欠如ともいえる意識が原因となってか、回答者の約4分の1(26%)は、自分の考えを周囲と共有することに不安を感じるようになっています。自分の考えを表明することで、上司や周囲から批判されたりや差別されたりすることへの恐れがあるためだとも言えます。
実際に、全回答者の半数以上(55%)は、仕事上での自分自身の本当の姿をある程度まで隠しながら働いています。とくに、Z世代とミレニアル世代においては、この数値が平均を大きく上回っています。企業側・雇用主は、彼らを組織に引き込むことにより一層の努力をする必要があります。
なお、日本の場合には、「私の雇用主は私の世代を理解していない」と答える人が22%(世界全体:29%)とやや低め、「自分は仕事上で自分自身をある程度隠している」と答える人が56%(世界全体:55%)とほぼ同じ結果となりました。
さらに、興味深いことに、労働者は、特定の課題に取り組む際、その責任をもつのは、「自分」なのか、または「雇用主」なのかについて、比較的明快な考えをもっていることが分かっています。報告書で明らかになった他の箇所と同様、企業側・雇用主は、職場での適切なバランスを確保できるように、労働者へのいっそうの繊細な理解と配慮が求められるでしょう。
全世界の労働者の3分の1以上は、「多様性と公平性の改善」(37%)や「持続可能性の改善」(35%)を目指さない企業では、働くことを忌避するようになってきています。ただ、この割合は、前年から7パーセント減少しています。他方、働き手は、こうした目標の実現について、雇用主に全責任を負わせているわけではありません。
「公平性、ダイバーシティ、環境フットプリントの改善を主導するのは企業・雇用主側であるべきだ」という意見がある一方で、 メンタルヘルスおよび働く意欲を向上させるための責任は、働き手の側にもあることに大半の人が同意しているようです。ワークライフバランスやキャリアアップなどの領域では、労使間の両者に同等の責任があること、パートナーシップ(協力関係)のアプローチが必要なことなどが示唆されています。
働き手は、自分が働く組織との一体感(帰属意識)を求めている。数字はわずかに減少しているものの、公平な職場、および自分や自分の価値観を気にかけてくれる雇用主を求める気持ちは、依然として強い。異なる世代やグループの意欲とニーズを理解することが、人材を惹きつけて維持するためには非常に重要である。従業員との会話・対話の場をつくることで、雇用主は若い世代や多国籍で構成されるチームとの一体感をより強くすることができる。
働き手の3分の1は、「職場でありのままの自分でいることはできない」と感じ、5分の1は、「職場とプライベートとで性格を使い分けている」と述べている。こうした感情は、上司や同僚に非難されることを恐れて、自分の考えを共有できないと感じていることに原因の一部がある。この傾向は、雇用主が積極的に取り組むべき企業文化の「アンバランスさ」を明確に示している。
また、人材が転職に慎重になっているのは不確実性の時代のせいもあるが、これまでの過去のワークモニター報告書から、経済が回復するとそうした傾向は弱まることがわかっている。定着率を高めたい雇用主は、長期的な視野をもつ必要がある。
働き手は、「公平性」「理解」「社会問題および環境問題での価値観」を共有することに関して、おもに雇用主が努力すべきと考えている。しかし、一方で、自分たちは傍観していればいいと考えているわけでもない。調査結果によると、労働者は必要な改善に何らかの形で貢献したいと考えている。このような意欲があれば、雇用主は働き手のエネルギーを引き出して、あらゆる施策に人材を参加させることが可能だ。企業は働き手の参加の機会をより多く作ることによって、公平性とインクルージョンを大きく推進しながら、全従業員の関与を高めることができるだろう。
いかがでしたでしょうか?
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