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労働時間を効率的に配分する 変形労働時間制の仕組みやメリットをわかりやすく解説

作成者: randstad|Aug 7, 2024 12:00:00 AM

繁閑などに合わせて柔軟に労働時間を変える変形労働時間制。業務の効率化などにつながる一方で、勤怠管理が複雑になるなどのデメリットも。変形労働時間制の基本を解説します。

 

変形労働時間制とは

従業員の労働時間は労働基準法で定められており、「1日8時間以内、1週間40時間以内」が基本となっています(労働基準法第32条)。これを「法定労働時間」といいます。

変形労働時間制とは、一定の条件のもとで「法定労働時間」を超える労働時間の設定が認められる制度です。繁忙期には労働時間を長く、閑散期は短くといったように設定でき、時間や時期によって必要な労働力にバラつきがある場合に活用されます。

 

変形労働時間制の考え方 

変形労働時間制は、特定の期間で平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内におさまるように管理するのが基本的な考え方です。

変形労働時間制を採用している場合でも、法定労働時間の枠を超えた分の労働は時間外労働として扱われ、通常の残業と同様に残業代を支払う必要があります。

 

 

時間外労働の考え方は変形労働時間制で採用した単位(1年・1ヵ月・1週間)によって細かい違いがあり、詳細は厚生労働省の労働基準関係リーフレットで確認できます。

 

 

特別な配慮を要する労働者の場合 

変形労働時間制において、以下にあてはまる労働者は、その人が必要な時間を確保できるよう特別な配慮が求められます。具体的な配慮の方法は、企業・従業員の状況により異なります。

 

  • 育児を行う者
  • 老人等の介護を行う者
  • 職業訓練または教育を受ける者
  • その他に特別な配慮を要する者

また、「18歳未満の年少者」「妊産婦」については、変形労働時間制の適用に制限があります。

 

 

変形労働時間制の種類(単位)

変形労働時間制は対象とする期間によって、下記3つに分類されます。それぞれで運用方法が異なるため、検討する際には該当期間を明確にしましょう。


(1) 1ヵ月単位の変形労働時間制
(2) 1年単位の変形労働時間制
(3) 1週間単位の変形労働時間制

 

ただし、企業側が期間の単位や労働時間を自由に決めて運用してよいわけではなく、労使協定の締結・届け出や就業規則の設定が必要です。

労使協定においては労働基準監督署への届け出が必須であり、届け出せずに変形労働時間制を導入すると労働基準法違反となります。罰金が科されるだけでなく、企業としての信頼を失うことにもつながりますから、所定の手続きはしっかりと届け出るようにしましょう。

変形労働時間制に類似する制度に「フレックスタイム制」や「裁量労働制」があります。「フレックスタイム制」は始業時間・就業時間を労働者にゆだねていますが、変形労働時間制では企業側が定めます。また、「裁量労働制」は実際の労働時間にかかわらず、事前に定めた「みなし労働時間」に対して給与が支払われる制度です。

 

 

 

(1) 1ヵ月単位の変形労働時間制

1ヵ月以内の期間において、平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲(週平均40時間未満、特例事業は44時間未満)であれば、特定の日や週で法定労働時間を超えた労働日数・時間を設定できる制度です。対象となる業務に制限はありません。

1ヵ月の期間内で労働時間の配分が可能であるため、月初・月末など特定の週によって繁閑差がある事業場に適しています。「就業規則への記載」もしくは「労使協定の締結・届け出」のどちらかが必要です。労使協定の場合は労働基準監督署へ届け出ます。

 

(2) 1年単位の変形労働時間制

1ヵ月以上1年以内の期間において、平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲(週平均40時間未満)であれば、特定の日や週で法定労働時間を超えた労働日数・時間を設定できる制度です。対象となる業務に制限はありません。

1年の決まった月や季節で繁閑の差が出る事業場に適しています。3ヵ月、6ヵ月などの変形制も可能です。「就業規則への記載」および「労使協定の締結・届け出」の両方が必要です。労使協定は労働基準監督署へ届け出ます。

 

(3) 1週間単位の非定型的変形労働時間制

1週間単位で労働時間や休日を調整でき、週ごとに労働時間制を編成できます。ただし、常時使用する労働者が30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店のみが対象で、各日の労働時間について遅くとも1週間前には書面で通知する必要があります。

1週間あたり40時間、1日あたり10時間(特例事業も同)を労働時間の限度とし、それを超えた時間外労働・深夜労働・休日労働については割増賃金を支払います。「労使協定の締結・届け出」が必要です。労使協定は労働基準監督署へ届け出ます。

 

 

【変形労働時間制の概要】 

 

対象となる事業場

労働時間

手続き

1ヶ月単位

対象業務に関する制限はない。

1ヶ月以内の期間・期間内で定めた総労働時間の枠内。

「就業規則への記載」もしくは「労使協定の締結・届け出」のどちらかが必要。

労使協定の場合は労基署へ届け出る。

1年単位

対象業務に関する制限はない。

1ヶ月以上、1年以内の期間・期間内で定めた総労働時間の枠内。

「就業規則への記載」もしくは「労使協定の締結・届け出」の両方が必要。

労使協定は労基署へ届け出る。

1週単位

常時使用する労働者が30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店に限る。

1週40時間以内の範囲で、110時間を上限とした枠内。

「労使協定の締結・届け出」が必要。

労使協定は労基署へ届け出る。

 

 

変形労働時間制を導入するメリット 

業務量に合わせて労働時間の調整ができ、生産性の向上・残業代の削減につながる

まずメリットとして挙げられるのが、繁閑に合わせて効率的に労働力を配置できることです。閑散期の労働時間を短くし、繁忙期に多く働いてもらうことで、年間や月間を通じて残業時間や残業代の削減も期待できます。

 

メリハリのある働き方、ワークライフバランスの向上

従業員にとっては、仕事の少ないときは早く退勤でき、忙しいときに集中的に働くことでメリハリが生まれます。会社側から積極的に閑散期の時短や休暇取得を推進することで、過労や体調不良を予防できるため、従業員の健康維持の一助ともなるでしょう。

 

柔軟な働き方を実現すると共に企業イメージが向上する

閑散期・繁忙期など、状況に応じた柔軟かつメリハリのある働き方ができるため、企業イメージの向上にもつながりやすくなります。また、採用の場面でも自社のアピールポイントのひとつになるでしょう。

 

 

変形労働時間制を導入するデメリット 

導入の手間、および、運用コストの増加

変形労働時間制の準備として、労働時間配分の検討、就業規則の見直し、労使協定の締結および労働基準監督署への届け出などの導入コストがかかります。勤怠管理が複雑になるため人事や関連部署の負担が増え、勤怠管理システムの導入や人的リソースの追加を検討する必要もあるでしょう。

また、導入後も正しく運用されているか継続的に確認したり、複雑な勤怠・残業時間の計算を理解する必要があったりと、担当者の手間や負担が導入前より増える可能性があります。

 

社内外のスケジュール調整に影響が出る可能性がある

働き方が多様化することにより、決まった曜日や時間に行われていた顧客や取引先とのやりとりのスケジュール調整が複雑になる可能性があります。

社内においては、従業員の要望を踏まえたシフトや勤務日の設定が可能となる反面、勤怠決定後の急な変更には注意が必要です。事前に柔軟な対応策を練っておくとよいでしょう。例えば、急な変更に備えて予備のシフトや代替勤務者のリストを用意しておくことが有効です。また、緊急時には迅速にコミュニケーションを取り、労働者との合意を得ることが重要です。

 

従業員のモチベーションが低下するリスクも

企業側にとっては残業代の削減が期待できる制度ですが、従業員から見ると「残業代が今までより減る」ことはデメリットとなります。

また、変形労働時間制の性質上、労働時間が一定でないことがかえって負担になったり、繁忙期は休みくいと感じたりする可能性があります。従業員や部署の間で変形労働時間制と従来の勤務体系が混在する場合には、早く退勤できる状況であっても心理的に帰りにくいと感じる場合もあるかもしれません。

従業員の不満やモチベーション低下につながらないよう、導入前にその目的やメリットをしっかりと共有し、理解を得ることが重要です。

 

 

目的を明確にし、変形労働時間制を正しく導入しよう

変形労働時間制は繁閑に合わせた働き方が実現できるため、企業・従業員ともにメリットのある制度です。その一方で、管理や賃金計算が複雑になることで人事をはじめ関係部署の負担が増えたり、従業員にとっては残業代が減ったりといったデメリットもあります。

労働時間を適切に配分することで労働環境の改善につながる可能性や、閑散期に休みを取りやすくなるなどのメリットも含めて、従業員の理解が得られるよう制度導入前には十分な説明を行いましょう。

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