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[労働市場調査]柔軟さ(働き方の自由度)は?

作成者: randstad|Jul 26, 2024 12:00:00 AM

ランスタッドでは、「ワークモニター」という労働市場調査を全世界規模で実施しています。

この労働市場調査は、18歳から67歳までの2万7000人の働く人々を対象とし、世界でも最大規模の調査になります。 

今年で21年目となる2024年調査は、2023年10月23日~11月11日の期間、18歳から67歳までの、週24時間以上働く会社員(被雇用者)と求職中の失業者、個人事業主(フリーランサー)を対象にオンラインで調査を行ないました。

調査地域は、ヨーロッパ、アジア太平洋、南北アメリカの計34の国と市場です。

 

この記事では、ワークモニター2024のレポートの中から、特筆すべき点をご紹介します。

ワークモニター2024レポート全文は、下記ジよりダウンロードできますので、より詳細をご覧になりたい場合はダウンロードしてご確認ください。

 

 

 

 

柔軟さ(働き方の自由度)に関する調査

「柔軟性」=働き方の自由度について、世界の労働者はどう考えているか見ていきましょう。

コロナ禍を経て、世界および日本の労働者は、より柔軟で自由な働き方を求めるようになってきており、企業側・雇用者側も、それに応じることを求められています。

 

 

勤務形態をめぐり、企業側と人材・労働者側との対立が生じている

コロナ禍では当然もしくは仕方なしに行われてきた「在宅勤務」(リモートワーク、ハイブリッドワーク)についても、雇用主と人材側との考え方のギャップが生じてきているようです。

6か月前と比べて、労働者は、雇用主からより多く勤務することを望まれているかどうかについて、そう思う回答者は35%、そのようなプレッシャーを感じなかった回答者は34%と拮抗しています。しかし、どの程度、雇用主が強く出勤を求めていたかという問いに対しては、41%が「雇用主は出勤に関して厳格になった」と回答しています。
93%)。

そして、4割近くの人材にとって、宅勤勤務(リモートワーク)は、すでに仕事をする上での譲れない条件の一つになっているようです。どんなときに仕事を辞めることを検討するかについて、37%の労働者が、「出勤時間を増やすよう求められれば辞めることを考える」と答えています。

 

 また、新しい仕事を受ける際の譲れない条件についての質問には、37%が「勤務場所に融通性があること」と答え、41%が「勤務時間に融通性があること」と回答しました。さらに、すでに前回の「成功願望とモチベーション」の記事でも説明したように、近年の特徴的な事象として、仕事と生活における柔軟さ、すなわち「ワークラーフバランス」を重視する人材が非常に多くなっていることが挙げられます。

 

 

国によって異なる「柔軟さ」に対する考え方

ただ、働き方の柔軟さや自由度については、国・地域により考え方が大きく違いがあります。今回の対象地域(ヨーロッパ20ヶ国、アジア太平洋8ヶ国・地域、南北アメリカ6ヶ国)のうち、柔軟な働き方の必要性を最も高く示しているのはアジア太平洋地域でした。

 

働き方の「柔軟さ」に対する国・地域による差

どの項目について柔軟さ欠けるとその仕事は引き受けないかを聞いた質問では、インドでは、「より柔軟な勤務“場所”」が64%、「より柔軟な勤務“時間”」が61%となっており、中国ではそれぞれ、“場所”が50%でした。どちらも平均より高い数値ですが、柔軟さに関する重要度が両国とも、“場所>時間”となっているのが特徴的です。

 調査地域全体では、“場所”が37%、“時間”が47%で、柔軟さに関する重要度の大小も、“場所<時間”となっており、北米でも、“場所”が39%、“時間”が43%と出ています。世界との違いがだいぶ大きくあるようです。

 アジア太平洋地域と言っても、日本はかなり特殊です。同じ質問に対し、日本では“場所”が28%、“時間”が33%となっており、“場所<時間”であるのは、アメリカ、カナダと同じですが、重要度そのものは全地域と比べても低くなっています。

 

 

業種・業界によっても「柔軟さ」に対する考え方は異なる

国や地域だけでなく、業種・業界によっても明らかな違いが見られます。知識労働者の割合が高い分野ほど、勤務時間と勤務場所に柔軟さを求める労働者を最も多く雇用しています。その業界の例としては、IT、金融サービス、通信などがあり、そのすべての業界で世界平均を上回っています。

近年の働き手が仕事において求めている「柔軟さ」とは、「リモートワークが可能」であるなど、単に勤務場所に関するものだけではないことがわかったと思います。インドや中国では逆転していますが、世界の平均では、新しい仕事を決める際には、勤務“場所”の柔軟性(37%)より勤務“時間”の柔軟性(41%)のほうが重視されています。

 

 

世代間における働き方の柔軟さに対する差

働き方に関する考え方は、若い世代ほど柔軟さを重視しています。

 勤務場所と時間の柔軟さ・自由度を最も大切にしているのはいわゆる「Z世代」(1997年~2005年生まれ)でした。Z世代では、次の転職先を探す場合に、46%の人が勤務“場所”の柔軟性を優先し、51%の人が、フレックスタイム(“時間”の柔軟性)を優先しています。また、Z世代の48%は、在宅勤務ができることを「譲れない条件」と考えています。

 それに対して「X世代」(1965年~1980年生まれ)では、勤務“場所”に柔軟性がない職務は断ると答えた人は32%しかおらず、勤務“時間”の柔軟性を重視する人も37%でした。

 「団塊の世代」(1946年~1964年生まれ)では、その割合はさらに少なくなります。勤務“場所”の柔軟さを優先する割合は31%、勤務“時間”の柔軟さを優先するのは35%に過ぎません。意思決定者の年齢が高い組織では、勤務時間や場所に関する柔軟性に考慮が及ばない可能性もあります。人材の募集や退職防止の観点からは、十分な注意が必要です。

コロナ禍を経た現在、世界中の労働者はプライベートに合わせた柔軟な働き方を求め続けています。2024年の調査結果のデータは、今年、企業側と労働者側での「オフィスに戻るか戻らないか」のせめぎ合いが続くことを示しています。

 労働者の多くは、あくまでも平均ですが、勤務“場所”よりも勤務“時間”の柔軟性に強い関心をもっていると予想されます。つまり、柔軟さに関しては、「オフィスか在宅か?」という問題に限られるものではなくなっているようです。

 企業側・雇用主側としては、業務上の優先度よりも、従業員が勤務場所で過ごす時間をどのようにアレンジするかついて、今後より真剣に考慮する必要がありそうです。企業戦略と、人材獲得・人材の定着(退職防止)を両立するためには、もはや、この問題は避けては通れません。

 

 

 

柔軟さについての日本の労働者の考え

日本の場合、柔軟さに関する希望・要望は高まりつつも、雇用主や企業への要望としてハッキリと示されるまでには至っていないようです。いずれの数値も、調査地域全体の平均と比べ、低めに出ているのが特徴です。

「勤務“場所”について柔軟性がない仕事は引き受けない」と答えた日本の労働者は、28%(世界全体:37%)、「勤務“時間”について」は、33%(世界全体:41%)とかなり控えめな数値です。

 「雇用主がオフィスでの勤務時間の延長を求めるなら仕事を辞めることを考える」と答えた人が24%(世界全体:37%)、「在宅勤務は私にとって不可欠だ」と回答した人が34%(世界全体:39%)でした。

ただし、「私の雇用主は、在宅勤務に関して十分な柔軟性を提供していない」と回答する人は31%で、世界全体の42%よりは少ないものの、柔軟性に関する勤務環境に不満がある人は3割近くいることが示されています。他方、「過去数か月間に雇用主がスタッフのオフィス勤務を厳格に求めるようになった」と述べているのは22%で、世界全体の41%の半分程度となっています。

また、コロナ後も在宅勤務が続くという想定に基づいて、ペットを飼い始めたり転居したりするなど、生活様式を変えた労働者は16%しかおらず、世界全体の37%よりも大幅に少なくなっています。

 

 

 

「柔軟さ(働き方の自由度)」まとめ

 

1.引き続き柔軟さは優先されていく

多くの人々が、リモートワークなどの柔軟な働き方で暮らすようになってきている。そして、在宅勤務、ハイブリッド勤務は、今後も半ば永続的に続くものと期待している。一方、理由は様々だが、企業側・雇用主側は、従業員にオフィスでの勤務時間を増やすように求めてきており、労働者の意識とのせめぎあいが始まっている。
ビジネスリーダーは、企業戦略と、従業員を辞めさせないことの間で、実現可能なバランスをとる必要に迫られている。企業・雇用主は、従業員と会社の方針について話し合える場(フォーラム)を提供するとともに、ルールを変更する際の「透明性」を確保する必要がある。



2.場所よりも時間の柔軟さが求められるようになってきている

柔軟な勤務時間は、リモートワーク、在宅勤務の制度化で可能になってきている。しかし、ワークモニター調査結果によれば、多くの場合、柔軟な勤務“時間”のほうが、柔軟な勤務“場所”よりも、高く評価されてきている。
この調査結果は、従業員に、オフィスでの勤務時間を増やしてもらいたい雇用主にとっては、重要な示唆を与えるだろう。企業組織は、従業員が、勤務“場所”に関して不安にならないように、勤務時間の自由を拡大するよう検討しなければならない。これは、従来のように「出勤」「勤務時間」を基本とした管理をするのではなく、プロジェクトの目標を設定することによって実現可能となる。
従業員がオフィスにいる時間を決めるのではなく、その日の目標を達成したらオフィスを離れられるようにするほうが、より大きな利益をもたらす可能性がある。(ただし、日本の場合は、法制度との関係でより慎重に対応する必要がある。)



3.チームと公平な職場づくり

世界全体として、働き方の柔軟さに対する要求は上昇傾向にある。一方、国・地域間、世代間では、意識の明確な違いもある。仕事を遂行するチームがグローバル化し続けている現状にかんがみて、企業の経営層は、異なる国・市場にいるチームメンバー間のつながりを確保し、各メンバーの考えか方や価値観を見定め、グローバルでありながら公平な職場を作り上げる必要がある。
勤務時間と勤務場所に関して経営者みずから新しく柔軟な提案を行うことで、より幅広く優秀な人材を確保することができ、そして、社員の流出を防いで、人材の定着率を高めることができるだろう。やみくもに規制ばかりして柔軟さを失うと、社員は辞めていき、正反対の結果になる可能性が高い。

 

 

いかがでしたでしょうか?

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