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企業の「価値」は何で示されるのでしょうか。売上や株価を反映した財務指標や、消費者調査によるブランドイメージランキングなど、企業の価値を評価する指標はさまざまあります。数ある指標のなかで、ランスタッドが長年にわたり独自に調査を続けている「エンプロイヤーブランド」は、企業の“勤務先としての企業の魅力・価値”を評価するためのもの。「働きたい会社」としての価値を示す指標です。
深刻な人材不足が続いている現状において、働き手から「働きたい会社」として選ばれるためのエンプロイヤーブランディングを避けて通ることはできません。エンプロイヤーブランドを高める活動は、企業の人事戦略や経営戦略にも密接に関わっているのです。
有価証券報告書を発行する大手企業を対象に、日本でも2023年3月期決算から人的資本に関する情報開示が義務付けられました。従業員を資本ととらえる「人的資本経営」が注目される今、高度なスキルや知見を持つ優秀な人材の獲得は企業の経営戦略において極めて重要な意味を持っています。働き手から「この会社で働きたい」と選ばれるかどうかは、企業の持続可能性にも関わる課題となっているのです。
「働く場所としての企業の魅力度」を示すエンプロイヤーブランドをかたち作るのは、給料や福利厚生などの就労条件面だけではありません。職場環境の快適さや自身のキャリアアップの機会、会社がどれだけ社会貢献をしているかなどさまざまな要素が絡みあい、ブランドイメージを作り上げているのです。
働き手やその家族、求職者などのステークホルダーに向けたエンプロイヤーブランディング活動に注力し、エンプロイヤーブランドを高めることは、採用活動の円滑化や優秀な人材の獲得、離職率の低下といった成果につながると考えられています。それはすなわち、企業の競争力に直結しているのです。
ランスタッドではこれまで22年にわたり、世界最大規模のエンプロイヤーブランド・リサーチを続けてきました。このリサーチ結果には、人事戦略や中長期的な企業価値向上につながる人的資本経営のヒントが詰まっていると考えています。
最新の2023年版では、30を超える国と地域において約16万3千人の回答者を対象としたエンプロイヤーブランド調査を実施。世界の6,022社を対象とした独自調査で、日本国内では大手150社について「雇用主としての魅力」を考察しています。エンプロイヤーブランドを査定する側としては、従業員や求職者、その家族など日本国内で選出された18歳から64歳までの一般の人々(就業の有無は問わず)が対象となっています。
エンプロイヤーブランド・リサーチの調査対象とならないからといって、中小企業はエンプロイヤーブランディングが必要ない訳ではありません。規模や売上の大小に関わらず、顧客がいる以上すべての企業にとってエンプロイヤーブランディングは重要です。なぜなら同様のサービス・商品を提供している複数の会社があった場合、消費者はより魅力的な企業、共感できる企業のサービス・商品を選ぶ傾向があるからです。
「働きたい会社」としての価値を示すエンプロイヤーブランドは、次の3つの要素に分類される10項目の指標から評価されています。この10項目の指標は、ランスタッドが続けてきた歴史ある調査からエンプロイヤーブランドに影響を及ぼすとして選定されたもの。この項目を分析することで、調査対象企業のどの点がより魅力的であるかを明らかにすることができます。
経済的側面
心理的側面
職務的側面
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厳しい人材獲得競争が続く状況という背景もありながら、サステナビリティ経営・ESG経営の流れや非財務情報の開示の動きもあり、企業が従業員のリスキルや研修など人的資本に投じる予算は増加していくことが予想されます。ステークホルダーと共に長期的な事業継続と成長を目指すためには、競合他社と比較されてもなお人材に選ばれる場所、働き続けたいと思われる魅力的な場所でなければなりません。
コロナ禍を経て、人々の価値観は大きく変化しました。働き方は多様化し、働き手が企業に求めることも変化しています。先の見えない不確実な時代に、会社がどのような姿勢で従業員と対峙し、どのような大義や信念を持って事業を展開し、働く場としてどのような成長機会ややりがいを提供するのか。働き手とその家族は、それを見極めていることでしょう。
エンプロイヤーブランディングにより企業の評価が高まれば、採用力が高まり採用活動がスムーズになるとともに、優秀な人材が集まりやすくなります。それは組織の活性化と業績向上につながり、それがさらに採用力を高める好循環につながります。そんなストーリーを思い描いても、広範にわたるエンプロイヤーブランドの領域の前で「どこから手をつければ良いのか」と途方に暮れるような感覚に陥ってしまうかもしれません。
前述の10の指標からもわかるように、エンプロイヤーブランディングのために対応すべき領域は多岐にわたります。人事部や広報部など特定の部署だけの取り組みでは、エンプロイヤーブランディング活動を推し進めることは困難でしょう。ますます重要性を増すエンプロイヤーブランドを向上させるためには、全社を横断した組織体での取り組みや経営層の強力なコミットメントが重要になっています。
では実際にエンプロイヤーブランディングに取り組むには、何からはじめれば良いのでしょうか。まず知るべきは自社の客観的な評価と世の中の動向、高評価を得ている企業のグッドプラクティスです。
口コミサイトやSNSでのエゴサーチで、自社がどのように書かれているかをチェックしてみましょう。従業員や元従業員からどんな評価をされているか、第三者からどのように見られているのかを直視するところから、エンプロイヤーブランディング活動ははじまります。
また、新入社員には「どこに魅力を感じて入社を決めたのか」「入社後どこにギャップや不満を感じたのか」をヒアリング。可能であれば退職していく社員にも同様のヒアリングを実施し、データとして蓄積して改善活動につなげていくとエンプロイヤーブランドの向上につながります。
もしランスタッドが実施しているエンプロイヤーブランド・リサーチの対象企業になっていれば、企業別の調査結果レポートをご提供することができます。ぜひ専用フォームよりリクエストをお送りください。
働き方や労働者の意識だけでなく、世の中の仕組みや法律も刻々と変化を続けています。今、勤務先として求められていることは何なのか。今、働き手はどんな制度や提供価値を雇用主に求めているのか。転職市場の動向はどのようになっているのか。常に情報を収集し、最新の知識にアップデートしていく必要があります。
エンプロイヤーブランド・リサーチで上位にランクインする企業は、何が評価されているのでしょうか。先進的な取り組みを行っている企業のグッドプラクティスを参考に、自社の取り組みに活かせるところがないか検討してみるのも良いでしょう。
ランスタッドの「エンプロイヤーブランドリサーチ国内レポート」では、上位企業のランキングや調査の分析結果などをまとめています。無料でダウンロードいただけるので、ぜひご活用ください。また、ランスタッドのサイトからは、さまざまな企業のエンプロイヤーブランディングの事例やインタビューをご覧いただけます。
これからの時代、短期的な目先の利益ばかりを追いかけていては、働き手に選ばれる企業になることはできません。エンプロイヤーブランドを向上させ、「働きたい会社」として選ばれ続けるためには、ステークホルダーと真摯に向き合う必要があります。
掲げている自社のパーパスやビジョン、経営理念などと一貫した経営方針で事業が運営されているのか。多様な価値観や人材、働き方を受け入れ、時代の変化に柔軟に対応しているのか。従業員のキャリア開発やリスキルに積極的に投資しているのか。首尾一貫した姿勢で透明性の高い情報を開示しているのか。社会の持続可能性に配慮しているのか。
エンプロイヤーブランドに影響を与える項目は多岐にわたりますが、一つひとつがステークホルダーからの信頼を獲得するために重要な要素です。
成果を数字として実感しにくいエンプロイヤーブランディング活動は、KPIなどを設定して達成度を測ることができず、評価しづらいという声もよく聞かれます。しかしたとえ取り組みの成果が明確に数値化できなくても、その活動を蔑ろにはできません。エンプロイヤーブランドは、企業の競争力の礎となる採用活用や従業員のエンゲージメントに大きな影響を及ぼすと考えられるからです。
企業から従業員への価値提案(EVP:employee value proposition)を続け、他社の事例も参考にしながら自社のエンプロイヤーブランドを再評価し、修正・アップデートしていくこともが、会社の事業成長の推進力につながっているのです。
働く場所としての企業価値を評価する指標であるエンプロイヤーブランド。優秀な人材の獲得が困難を極め人的資本経営に注目が集まる状況のなか、エンプロイヤーブランディングへの取り組みは急務となっています。
《エンプロイヤーブランディングに期待される効果》
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《エンプロイヤーブランディングの第一歩》
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従業員やその家族をはじめとするステークホルダーと真摯に向き合いエンプロイヤーブランディングに取り組むことは、企業の人事戦略・経営戦略と持続可能な事業成長に貢献することでしょう。
ランスタッドはエンプロイヤーブランディングの調査活動を通じて、企業の魅力度向上と働く人にとって魅力的な労働市場創造に貢献していきたいと考えています。歴史あるエンプロイヤーブランド・リサーチの最新レポートは無料でご覧いただけますので、ぜひご活用ください。