この10年余り日本で働く外国人労働者数が急増していたものの、2020年~2021年は横ばい となっています。
新型コロナウイルス感染症の影響はもちろん、記録的な円安の影響を受けて日本で働くメリットが目減りしてしまい「外国人労働者の日本離れ」が起こっているといった事情もあります。日本の労働人口減少の打開策として見込まれている外国人雇用ですが、現状としては優秀な人材を確保するのが難しい状況にあるといっていいでしょう。
難しい局面にある外国人雇用ですが、その一方で事業者を支援する動きもあります。例えば厚生労働省は、2023年度に日本で働く外国人労働者を対象とした公的統計を始める と発表しています。
この統計には外国人を雇用している事業所を対象に雇用状況を聞く調査と、外国人労働者本人を対象に就労期間や世帯収入を聞く調査があり、これまで人数以外の具体像が見えていなかった外国人労働者について、経歴や待遇、仕送り状況などといったデータをもとに実態をつかもうとしているのです。事業者にとっては、雇用対策を考える重要な資料にもなり得るでしょう。
国内の労働人口減少に伴って起こりつつある人手不足を、外国人雇用によって解消する動きは珍しくありません。また「若い年代の人員が少ない」、「平均年齢が高い」といった年齢構成の偏りを、若い年代の外国人を採用することで平準化していく効果も期待できるでしょう。
グローバルな視点の取り入れやダイバーシティの推進は日本企業に課せられた急務とも言えますが、そもそも日本の文化やビジネスしか知らない人員でこれを推し進めるには限界もあります。外国人雇用により自社に足りないものを改めて学ぶことは、こうした動きを推進できるだけでなく、海外進出のステップにもなり得ます。
外国人雇用に取り組むことは「自社に応募できる求職者の総数が増える」ということでもあります。応募数が増えれば採用に至るまでの期間の短縮が見込まれ、採用活動にかかるコストの削減にもつながります。
日本人の雇用と比べて、企業側に環境整備などの負担が生じやすい外国人雇用。そのハードルを下げるべく、採用の際に利用できる助成金が設けられています。次は、外国人雇用で利用できる助成金制度について見ていきましょう。
外国人労働者を雇用した上で、所定の基準を満たしている事業者は、外国人雇用に特化した助成金である「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」 が利用できます。
主な受給要件は次のようになっています。
(1)外国人労働者を雇用している事業主であること (2)認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること
(3)就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること |
出典:厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
この他にも、雇用関係の助成金共通の要件などいくつかの受給要件があります。すべての要件を確認するには厚生労働省への個別の問い合わせが必要です。
雇用調整助成金、トライアル雇用助成金、キャリアアップ助成金など、人員雇用の際に利用できる一般的な助成金は、それぞれの助成金の要件を満たせばもちろん外国人雇用の場合でも利用可能です。つまり、同じ条件であれば外国人雇用の方が受けられる支援の幅が広くなるとも言えます。
メリットの多い外国人雇用ですが、支援が手厚い裏にはやはりトラブルが起きやすいという事情もあります。例えば、母語の違いによるコミュニケーションの問題もそのひとつです。従来は求職者側へ「職務に必要な日本語能力」を求めるのが一般的でしたが、今やその方針では採用が難しくなっています。ここで発想を転換し社員の英語習得に注力すれば、採用した外国人とのコミュニケーションはもちろん、企業自体のグローバル化の足掛かりにもなるはずです。
求職者の国や宗教によっては、業務時間中の礼拝など、従来の契約内容では想定されていない対応が必要なこともあります。また、こうした目に見える形での違いだけでなく、業務指導の方針や休憩時間の過ごし方など、ちょっとした文化の違いで食い違いが起きることも考えられます。就業環境を変えたくないベテラン社員などは「郷に入っては郷に従え」と言うかもしれませんが、そればかりでは早期離職につながりかねません。就業前や就業後に本人にヒアリングを行いその内容を周知するなど、お互いに理解を深め、歩み寄るための取り組みが必要です。
外国人雇用には、日本人の雇用の際には必要ない、在留資格などに関する手続きも煩雑なものが多く注意が必要です。次は、外国人雇用特有の手続きについて見ていきましょう。
外国人雇用といっても、雇用する労働者が「就職に際し国外から移住する」場合と、「就職する前からすでに国内に在住している」場合では必要な手続きも変わります。就職に合わせて移住する場合は就労ビザや在留資格の申請から行わなければなりません。国内在住者を雇用する場合も、知らずに不法就労させてしまわないよう、在留資格をチェックしましょう。具体的には「在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格18種類」に該当するか、もしくは「永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者」に該当 しなければなりません。
2007年10月より、すべての事業主には外国人労働者の雇入れまたは離職の際に、労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、ハローワークを通じて厚生労働大臣へ届け出ることが義務付けられました。これはいわゆる努力義務ではなく、届出を怠ったり虚偽の届出を行ったりした場合には、30万円以下の罰金の対象となります。この届出の様式を「外国人雇用状況届出書」といい、ハローワークの窓口やオンライン などで配布しています。
ここまでに見てきたとおり、外国人雇用は短期的にも長期的にも多くのメリットを企業にもたらします。しかし、雇用にあたっては本人や受け入れ部署だけでなく会社を挙げて取り組むべき課題もあり、企業側にかかる負担も決して小さくありません。
採用が難しくなりつつある外国人雇用ですが、だからといってこうした課題を軽視し無理に推し進めれば、外国人労働者本人の離職につながるのはもちろん、社内の反発を生む可能性もあります。ここは社外の国際経験豊富なパートナーの手を借り、よりスムーズに外国人雇用を進めていくことも検討してみましょう。
ランスタッドはグローバル企業ならではのノウハウを活かし、外国人も含めた必要な人材をニーズに応じて柔軟にご紹介しています。