「労働者」とひとことで言っても、そのライフスタイルやキャリアプランは千差万別のもの。今やそれぞれの持つバックグラウンドに合わせて、アルバイト、パート、派遣社員などといった従来の形に収まらない、さまざまな働き方の選択肢が求められています。また近年、新型コロナウイルス感染症の流行によって従来の働き方が制限されたことでも、テレワークや時短勤務などといった多様な働き方の実現が急激に進むことになりました。
もちろん、多様な働き方が実現したのは新型コロナウイルス感染症の影響だけではありません。例えば厚生労働省も、多様な働き方の実現に向けて「多様な正社員」制度の導入を推奨しています。この「多様な正社員」とは、「異動あり・転勤あり・フルタイム勤務・残業あり」という、いわゆる従来型の正社員に対して「職務内容、勤務地、所定労働時間などが限定されている」正社員のこと。正社員の立場を維持しながら、より自分のライフスタイルやキャリアプランに合わせた働き方ができる制度なのです。
法律上は他の雇用形態との明確な線引きはなく、条件は各企業の就業規則などで定められており、下記3つの条件が一般的です。
(1)労働契約に期間の定めがない (2)就業規則に明記されている所定労働時間がフルタイムである (3)直接雇用である |
ですが、会社規模によっては次の条件を含んでいることもあります。
・職務内容や勤務地を限定しない(部署異動や転勤などがある) ・時間外労働がある |
逆に、先ほど紹介した「多様な正社員」のように、職務限定正社員(部署移動がない)、勤務地限定正社員(転勤がない)、短時間正社員(フルタイム勤務でない)といった条件の正社員も近年増えつつあります。
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直接雇用であるものの「労働契約に期間の定めがある」社員のことをいいます。契約期間は原則3年以内、一部専門職は5年以内とされています。現役世代でフルタイム勤務が一般的な契約社員に対して、嘱託社員は「定年退職後に引き続き同じ職場で働く」といったケースが大半で、パートタイム勤務なども多いのが特徴です。
いずれも臨時雇いされる「短時間労働者」の通称です。雇用している企業の従業員ではあっても、社員とは見なさないのが一般的です。
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人材派遣会社に登録し、人材派遣会社の顧客である企業へ派遣されて働く労働者のことをいいます。一般的には人材派遣会社と派遣期間中だけ労働契約を結ぶケースを「派遣社員」と呼び、人材派遣会社の正社員として顧客へ派遣されるケースは「正社員型派遣」と呼ばれます。
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労働(人が労働する)契約ではなく、業務委託(ある業務を委任する)に対する契約や、その契約形式で働く労働者をいいます。「委託された業務を履行する」ことが主となるので、労働者は自分の裁量と責任で働くことができます。
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週休3日制とは1週間のうち3日間を休日とする働き方のことで、いわゆるフルタイム勤務や、それに相当するシフト勤務などに対して使われるのが一般的です。詳細はこちらもご覧ください。
始業時間・終業時間を設けず、一定期間の定められた総労働時間を満たす範囲で労働者が自主的に始業・終業できる制度をいいます。1日の中で必ず就業していなければならない時間帯「コアタイム」が設定されているのが一般的ですが、コアタイムのない「スーパーフレックスタイム」を取り入れている企業もあります。
情報通信技術(ICT)を活用し、自社オフィスなどの決まった職場以外で勤務する働き方をいいます。「在宅勤務」の場合、勤務場所は自宅ですが、テレワーク・リモートワークの場合は自宅に限らず、レンタルオフィスや飲食店、旅行での滞在先などさまざまパターンが見られます。
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企業で正社員として働くなど、いわゆる「主とする職業」がある中で、別の職業でも収入を得ることをいいます。従来は「従業員の総労働時間が不明瞭になり健康管理に差し支える」、「本業への影響が懸念される」などの理由から副業を禁止する企業が少なくありませんでした。しかし「本業と違う仕事に携わることがスキルアップや人脈開拓につながる」、「起業家精神のある優秀な人材の獲得につながる」などのメリットが注目され、副業解禁を図るケースも徐々に増えつつあります。
旧来の画一的な働き方を脱し、多様な働き方を受け入れることは「進取的な企業」というブランディングにつながり、優秀な人材の確保・定着を促します。もちろん、在職中の社員にとっても選択肢が増え、離職率の低下も望めます。自分に合ったスケジュールや環境で働けることで、生産性の向上にも期待できるでしょう。
就業時間や勤務地が一定せず、また管理職が直接勤務状況を把握できない場面も増えることから、勤怠管理や評価制度の複雑化が課題となりそうです。また、働き方の選択肢が増えればそれだけ、既存の一元化された業務フローやワークスペース、制度などの大幅な見直しが必要になるでしょう。
先にデメリットとして挙げた「既存の制度・設備の大幅な見直し」。だからといって及び腰で取り組んだのでは、「多様な働き方」が却って社内に混乱をもたらしかねません。まず「いつまでにどうするか」をはっきり決め、各制度の見直し、設備・システム導入それぞれに担当責任者を置いて、具体的な見直しとその内容周知に努めましょう。
テレワーク・リモートワークに使用する情報端末にはどのようなセキュリティ対策を施すか、業務に使用するネットワークやデータベースなどはどうやって外部のサイバー攻撃から守るのか、もちろんツールの導入やルールの策定も重要ですが、それを利用する従業員に情報セキュリティへの意識を持たせることも欠かせません。
せっかく多様な働き方を取り入れても、推進するべき立場の社員が「朝や夜にばかり打ち合わせを入れるのでフレックスタイムを活用できない」、「時間外にチャットで用件を連投し、すぐに返信を求める」といった振る舞いをしてしまうようでは、生産性は却って悪化しかねません。なんのために多様な働き方を目指すのかといった意識を共有し、会社全体で目的達成を目指して行きましょう。
この企業ではオフィス勤務者の原則的な勤務スタイルをテレワークとし、必要な場合のみ出社するスタイルに改めました。従来設けていたフレックス勤務のコアタイムも廃止ししています。また、単身赴任中の社員のテレワークによって業務支障がないと所属部門が認めた場合、単身赴任を解除。場所にも時間にもとらわれない柔軟な働き方を実現させています。
この企業ではテレワーク制度に「在宅勤務」、「会社が契約したサテライトオフィスを利用しての勤務」、「自宅でもサテライトオフィスでもない場所でのモバイルワーク」の3つの勤務形態を設けました。また、5:00~22:00の間で1時間から勤務時間を選択できる、より柔軟なスーパーフレックス制度も特徴的です。
ひと昔前なら、誰しも「正社員である以上、働き方の選択肢は限られている」という前提があったかもしれません。しかし今は、「正社員であってもさまざまな働き方を選び、自分らしいキャリアパスを描ける」時代を迎えつつあります。今後より良い人材を確保し定着させるためには、多少の負担があっても、多様な働き方を実現させることが欠かせないのです。
ランスタッドでは、拘束時間や出勤日数、契約期間などさまざまな形態の人材をご紹介しています。多様な働き方を取り入れることによって生じるリソース不足を、多様な人材をもってフォローいたします。詳しくはこちらからご覧ください。