法人向けHRブログ workforce Biz

解析・2022女性活躍推進法~企業が対応すべき要所~|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|May 31, 2022 3:00:00 PM

2016年4月に施行された「女性活躍推進法」。正式名称は「女性の職場での活躍を推進する法律」で、女性が能力や個性を存分に発揮できる社会の実現をめざし、国・地方公共団体と民間企業が果たすべき義務を明確にした法律です。

具体的には、企業に自社の女性活躍に関する「状況把握」「課題分析」「行動計画策定」「情報の公表」などを義務付けています。そして、施行から6年が経過した2022年4月、これらの義務の対象企業拡大や公表する情報内容を強化した改正法がスタートしました。時代の流れに合わせて進化する「女性活躍推進法」の最新動向と要所を7つのステップで解説します。

 

 

1、女性活躍推進法は「時限立法」


女性が働きやすい環境づくりを企業に求めている法律ですが、実は施行から10年間という期限を設けた「時限立法」です。恒久法とせずに、敢えて集中期間にすることで、「スピードをあげて実現を図る」という政府の意思と狙いが込められています。

女性活躍推進法には「3つの基本原則」があります。

(1)女性に対する採用、昇進の機会の積極的な提供と活用、性別による固定的役割分担を反映した職場慣行が及ぼす影響に配慮する

(2)仕事と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にする

(3)女性の仕事と家庭生活との両立について、本人の意思を尊重する

 

2、対象となる企業規模


対象となる企業規模が2022年4月から拡大しました。立法期間の半分を過ぎ、改善点を加えてバージョンアップした格好です。

(旧)2016年4月 常時雇用する労働者が301人以上の企業

(新)2022年4月 常時雇用する労働者が101人以上の企業

※100人以下の企業は「努力義務」となります。

 

3、企業が果たす2大義務


大きく2つの義務があります。

(1)行動計画の策定と公表…自社の女性の活躍に関する①状況把握・課題分析②行動計画の策定・社内周知・公表③行動計画の届け出(各都道府県労働局)④取り組みの実施・効果の測定――の4つの公表

(2)女性活躍推進に関する企業情報の公表…①女性に対する仕事に関する機会の提供の実績②仕事と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の実績――から選択して公表

 

 

4、「行動計画の策定と公表」のポイント


「2大義務」を企業内でどのように実施すればスムーズに運用できるのか、そのポイントを整理します。


(1)行動計画の策定と公表

①状況把握・課題分析の手法とは

➡採用点検=「直近の事業年度の女性の採用者数(中途採用含む)」÷「直近の事業年度の採用者数(中途採用含む)」×100(%)
➡平均の残業時間数=「各月の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働)の総時間数の合計」÷「対象労働者数」
➡管理職に占める女性比率=「女性の管理職数」÷「管理職数」×100(%)



②行動計画の策定・社内周知・公表とは

①の結果などを踏まえて、自社独自の行動計画を策定します。行動計画には必ず「計画期間」「数値目標」「取り組み内容」「取り組みの実施時期」の記載が必要となります。「社内周知」については、パート・契約社員を含むすべての労働者に周知しなければなりません。例として、事業所の見やすい場所への掲示や電子メールでの送付、書面配布などがあります。

また、「公表」は社内のみならず、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載、自社のホームページへの掲載など外部向けも必要となります。



③行動計画の届け出(各都道府県労働局)とは

手順を踏んで行動計画を策定した際には、管轄の都道府県労働局に届け出ます。電子申請、郵送または持参でも可能です。



④取り組みの実施・効果の測定とは

数値目標の達成状況や行動計画に基づく取り組みの実施状況を点検・評価し、定期的にその結果を計画に反映させることが求められています。

 

5、「女性活躍推進に関する企業情報公表」のポイント


(2)女性活躍推進に関する企業情報の公表

企業情報の公表は2つに区分されます。

まず、①女性に対する仕事に関する機会の提供の実績②仕事と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備の実績――のいずれかを選択します。

そして、①を選択した場合は下記から2項目以上を公表します。

・採用した労働者に占める女性の割合(雇用管理区分ごと)

・男女別の採用における競争倍率(雇用管理区分ごと・中途採用を含む)

・労働者に占める女性の割合(雇用管理区分ごと・派遣社員を含む)

・係長級にある者に占める女性の割合

・管理職に占める女性の割合

・役員に占める女性の割合

・男女別の職種、雇用形態の転換実績(雇用管理区分ごと・派遣社員を含む)

・男女別の再雇用または中途採用の実績(中途採用の対象者はおおむね30歳以上の正社員)

 


②を選択した場合は下記から2項目以上を公表します。

・男女の平均継続勤務年数の差異(対象は無期雇用者)

・10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合

・男女別の育児休業取得率(雇用管理区分ごと)

・労働者の1カ月当たりの平均残業時間

・労働者の1カ月当たりの平均残業時間(雇用管理区分ごと・派遣社員を含む)

・有給休暇取得率 (雇用管理区分ごと)


これらの公表内容は、年1回以上更新が求められ、いつの情報(更新)なのかが分かるように明記しなければなりません。

 

6、企業メリットと違反リスク


女性活躍推進法に罰金はありません。しかし、実施企業にもたらされるメリットは大きく、対応しない企業にはリスクがあります。実施企業のメリットとして厚生労働省は「優秀な人材の確保と定着」「企業イメージの向上」「他社との差別化」を挙げています。

具体的には、厚生労働大臣が定める「えるぼし」認定マークを商品や広告に付与することで、女性活躍推進企業であることをアピールでき、優秀な人材の確保と定着に結び付ける効果が期待できます。また、女性が働きやすい企業をPRすることで企業イメージの向上につながり、企業価値の向上が期待できます。企業文化の改革や業務改善に積極的に取り組んでいる企業としても、広く認知されます。

反対に、対応しないリスクとして、法律で事実上可視化されていることもあって企業イメージの低下が懸念されます。また、現段階で罰金などの罰則はありませんが、行動計画は多くの対象企業が届け出ているため、近い将来、罰則規定が設けられる可能性があります。現時点でも、行政は必要に応じて企業に報告を求めて助言・指導、勧告を行うことが可能となっており、法律の趣旨から指導が入る可能性があります。

 

7、行動計画策定に向けた行政の支援ツール


生産年齢人口の減少が続く日本。女性が働きやすい社会をつくることは本来あるべき姿としても、労働生産性を高める観点からも不可欠と言えます。政府は「女性活躍推進法」の趣旨を理解してもらい、企業に積極的に取り組んでもらうことを期待し、さまざまな支援ツールを設けています。


・女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000614010.pdf

・女性の活躍推進企業データベース(厚生労働省)
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/

・改正女性活躍推進法の基本≪全体版≫(東京労働局)
https://www.youtube.com/watch?v=-2tMteY_zaw

 

ランスタッドでは本記事に関連した最先端のトレンドや人材サービス事例集などをご用意しております。
お気軽に ご相談、資料請求ください。
 
 
 
 

関連セミナー

女性活躍推進、どこから取り組めばいい?
ジェンダーインクルーシブな組織開発とキャリア意識改革

2022/06/29 (水) 14:00〜15:00
オンライン開催【募集終了しました】