テクノロジーが急速に進展する中、労働市場環境が人々に継続的なリスキリング(技能の再教育)を促しています。
デジタルビジネスの加速によって多くの人々が多様なスキルを身につけなければ人員整理を免れることはできません。この間、デジタル化が着実に進み、当然のことながら世界の人材に求められる能力が変化しています。
ですがパンデミックがもたらした目下の危機が、多くの市場の通常や予測を一変させています。労働者が新しいスキルを獲得し、変化するビジネスに適応し続ける必要性は従来の比ではありません。
世界的な大量失業を減少させるためには、一時的失業者が長期的失業者にならないための密接な官民連携が欠かせません。リスキリングはもはやキャリアアップの手段ではなく、生き残りのための手段と言えます。
コロナ禍前に存在していた雇用の多くが元に戻ることはなく、そうした幻想を抱くべきでないことは明らかです。最終的に回復できたとしても、コロナ禍以前の水準に到達するには数年単位の時間が必要になるかもしれません。
ホスピタリティ、旅行・観光業などで発生した大量失業は、数百万人が将来の見通しが立たない状況にあることを意味します。各国政府が積極的な支援に乗り出していますが、これらの救済策は一時的であり、理想的とも言えません。であるならば、有意義な正規雇用を求める数百万人が居場所を見つけるために、各市場で何ができるでしょうか。
パンデミックがもたらした影響の一つに、雇用の伸びの劇的変化が挙げられます。数百万の雇用が一晩にして蒸発した一方、一部のセクターでは人材需要が急増しています。医療、スーパーマーケット、個人防護具メーカー、宅配などのエッセンシャルビジネスにおける求人は前例のない水準で増加しました。
ビデオ会議、業務の視覚化、その他のコミュニケーションツールに関わる技術者もニーズが高まっています。これらの求人増だけで雇用全体の著しい落ち込みを埋め合わせることはできませんが、大手小売業、ネット通販、医療関連事業者、一部の製造業による雇用が打撃を和らげていることは確かです。
失業者が成長ビジネスで新たな職を手に入れるために、政府、企業、労働団体には何ができるでしょうか。
世界経済が今必要としていることは、(一時)解雇された人々がいち早く新しい技能を習得し、元の組織または新しい勤務先で応用できる売り物になる能力を身につけるための協調的取り組みです。
サービス業界を中心に、多くの企業はすでに市場性のあるスキルを獲得しています。共感力、チーム志向、顧客サービスの経験はほぼすべての業界で求められる能力ですが、キャリアシフトを促すためには新たな専門的技能の習得が必要かもしれません。
スウェーデンでの最近の事例をご紹介しましょう。ハーバード・ビジネス・レビューによると、 官民が協力し、解雇された航空会社従業員向けのトレーニングプログラムが開始されました。3日半のプログラムの後、コンソーシアムが少人数を対象に准看護師として働くための医学知識教育を行います。プログラムはその後拡大され、介護施設や学校の職員としても採用されています。
こうした機動的、効果的なリスキリングがまさに今、求められています。この他、もっと広範なプログラムの検討も必要ですが、産官学による速やかな対応は関係者全員が協調的努力に本腰を入れて初めて結果となって現れます。
ランスタッドはリスキリングが世界の労働者に与える効果を確信しています。
例えば、当社は近い将来の目標として米国で4万人、オランダで1万人のリスキリングに取り組むことを発表しました。ランスタッド イタリアでは物流、製造、食品・飲料品業界にフォーカスしたリスキリングプロジェクトを実施し、2021年4~5月に1,500人の求職者がトレーニングを受講しました。
二者間基金、Formatempの支援の下、年末までに9,000人のトレーニングを目標としています。オランダでは「ランスタッド・ブースト」を立ち上げ、当社が提供する教育研修・育成プログラムを紹介しています。このキャンペーンではウェブサイトを新設し、複数のメディアチャネルを介して広範なプロモーションを行います。
実地訓練、能力開発、無料オンラインコース、個別コーチングの提供によって、失業者の仕事復帰の一助になればと考えています。
ですが私たちだけでこれを行うことはできません。政府、NGO、企業経営者が時間と労力を注ぎ、失業者のリスキリングに大規模に取り組むことが肝要です。
全員の雇用が元に戻るまでただ待っているのは現実的ではありません。今すぐに行動を起こす必要があります。スウェーデンでの取り組みが実証した通り、協調的取り組みがコロナ収束後も長く続く、持続性のある人材パイプラインの構築につながります。
今、リスキリングに投資すれば、それがたとえささやかな規模でも、将来の働き方、人々のエンプロイアビリティ、社会の福祉において世界中で大きな影響となって現れるはずです。有意義で持続性のある仕事へと人材を速やかに配置転換するために何ができるか、その検討を世界中のリーダーたちに求めます。