中国古来のことわざで、時間をかけて地道に努力を重ね、その力を正しい戦略に集中して投入することで、成功の瞬間をつかみとることを意味します。ファーウェイが一意専心の精神を成功の鍵に掲げる理由とは。
すでに世界トップレベルのスマートフォンメーカーの地位を確立したファーウェイ・テクノロジーズが次に目指すのはICT分野のグローバルリーダーです。エリートスポーツチーム同様、妥協のない地道な努力によって成功を手に入れようとしています。良い時も悪い時も、チームを団結させる力強い精神です。
「工場もオフィスも研究センターも、そのすべてが破壊されたとしても、ファーウェイのコアバリューの強さを持ってすれば数日で立ち直り、事業を再開できると確信しています。」同社の人事担当グローバルバイスプレジデント、ハリー・バイ氏はそう話します。こうした使命と精神が人材にとって非常に魅力的に映ることは間違いありません。
ランスタッド・エンプロイヤーブランド・リサーチ によると、ファーウェイは中国の働きたい企業No.1です。ファーウェイはこの成功の方程式をどのように導き出し、さらにはどのように維持しているのでしょうか?
ハリー・バイ氏:将来はすでに始まっています。ロボティクスやAIが可能にするスマートホームや安全な都市作りからビジネストランスフォーメーションに至るまで、私たちはこれまでに誰も見たことのない時代へ突入しています。ファーウェイは完全につながったインテリジェントな世界を構成するすべての人、家、ビジネスにデジタルの力を届けることによって、この進展の先頭に立つと決意しました。
このビジョンを実現する担い手がファーウェイの人材です。技術スキルはもちろん大切ですが、ビジネスの土台にある精神を共有できる人材を集め、定着させたいと考えています。それは例えば、最先端の挑戦的環境で成長できる人材。それから、お客様やチームのために最善を尽くし、自分の仕事に誇りを持ち、自己研鑽を続ける覚悟があることも人材に求める条件です。
これはグローバル共通の考え方です。ファーウェイでは世界170カ国に160の国籍の計18万人が働き、世界の人口の3分の1を超えるお客様に製品やサービスをお届けしています。中国以外の従業員の70%以上は現地採用です。ファーウェイの優秀な人材は世界市民です。地域の社会、経済、文化、生活習慣を理解し、その中に溶け込みます。
私たちはテクノロジー業界の離職率の高さを知っています。その一方で当社のビジョンを実現するには忍耐強さとひたむきな努力が必要です。時間と労力を注ぎ込んでこそ、ブレークスルーが生まれます。
ハリー・バイ氏:ファーウェイは個人の目標達成を後押しし、意欲のある人材に最善の機会を提供する組織です。そのための柱の一つに昇進のファストトラック制度があります。当社のような大企業では上層部にたどり着くまでに少なくとも20年はかかると思われがちですが、有望な人材が見つかり、それに値するとみなされたならば、当社では入社初日から考慮され、2~3年でシニアポジションを獲得することも可能です。2017年には4,500名の成績優秀者がファストトラック制度で昇進し、2018年にはその数、6,000名を目指しています。
キャリアアップを後押しし、可能な限り大きな舞台でアイディアを応用する機会を与えるのも組織の役割です。仮にテクノロジー系スタートアップ企業に就職した場合、仲間は20名ほど、市場での活動範囲もごく限られています。ですがファーウェイには23の研究開発センター、36の共同イノベーションセンターがあり、編み出したイノベーションを世界170の市場に投入できます。
もちろん、金銭的報酬もファーウェイの重要な魅力の一つです。当社の初任給は平均をはるかに超えていますし、成績優秀者は給与、ベネフィット、ストックオプションなどの点で手厚い恩恵を受けられます。
ハリー・バイ氏:意欲の高い人材は常に新鮮な挑戦を求め、今の会社がその機会を与えてくれないとなれば別の場所を探します。ファーウェイは幅広いセクターや国で事業を展開していますので、あえて転職せずとも、キャリアのどの段階でも多種多様なチャンスを与えることができます。優秀な人材はさまざまなポジションを自由に動き、自分にとってベストなキャリアパスを見つけることができます。当社の統合的人事ポリシーとプラットフォームには、こうした自由な異動を可能にする柔軟さがあります。
ハリー・バイ氏:ファーウェイでは自分の成長と能力開発に自分で責任を持つことを従業員に奨励するとともに、それを支えるプラットフォームを用意しています。
この意味で最も重要なプラットフォームが2万5,000ものコースを提供するファーウェイ・ユニバーシティです。新規採用者はもちろん、リーダー職を目指す人向けのトレーニングも提供されています。ファーウェイ・ユニバーシティはキャリア全段階を現場感覚でサポートし、2017年には4万人が受講しました。アプリ、オンライン、クラスルーム形式のトレーニングが提供され、新しい技術進歩を学び、日々の業務に直接応用することができます。各ビジネス部門の管理職やエキスパートが講師や指導者を務めるため、極めて実践的に学ぶことができます。
ファーウェイではイノベーションと従業員の成長を後押しする環境作りにも取り組んでいます。その一例がワイヤレスネットワークプロダクトラインで行われているイノベーションコンテストです。毎年、4,000件を超える応募があります。そのアイディアが画期的かつビジネスと技術面から実現可能であれば、プロジェクトチームを結成してアイディアを磨き、実現するための資金を提供します。これまでにこのコンテストを通じて1,000を超えるアイディアが具体化し、ファーウェイにとってのさまざまな技術的ブレークスルーにつながっています。
ハリー・バイ氏:ファーウェイでは、私たちは「1本の大きな木から大きな森へ」と姿を変えつつあると言っています。大規模で複雑な変化ではありますが、それでも従業員一人ひとりがファーウェイのコアバリューを自分と重ね合わせて考えることが必要だと考えています。共通の価値観があるからこそ私たちの存在があり、それが発展の礎になります。
その一方で、私たちはこうした価値観やファーウェイが働きがいのある会社である理由を知っていただくためにもっと努力が必要であることを認識しています。なぜなら、ファーウェイのエンプロイヤーブランドは、アジア、アフリカと比べて、北米や欧州ではそれほど強くはありません。現在、エンプロイヤーブランドと従業員価値提案(EVP)の構築 に力を注ぎ、その土台としてコマーシャルブランドを強化し、最新のエンプロイヤーブランド管理メソッドを活用しています。さまざまなリージョン、部門のスタッフがオンラインで協力し、一貫性のある明確な戦略の構築に取り組んでいます。まだ道半ばではありますが、エンプロイヤーブランド調査機関からの評価は徐々に高まっています。
ハリー・バイ
ファーウェイ、人事担当グローバルバイスプレジデント
ファーウェイ歴20年以上のベテラン幹部。人事担当グローバルバイスプレジデントとして、採用、配置、従業員関係管理、リーダーシップマネジメントなど幅広い人事領域に広範な知識と経験を持つ。現職以前は、ICT分野の経験豊富なビジネスリーダーとして、中国、後に北アフリカリージョンのバイスプレジデントなどを歴任。
エンプロイヤーブランドとは? 「この企業で働きたい」と思われる 「勤務先としての企業の魅力」を意味します。 エンプロイヤーブランドを高めることは、優れた企業イメージを構成すると同時に、職場環境の改善を重ねることで、「働く人、家族、求職者にとって真に魅力ある企業」を目指すことになります。エンプロイヤーブランドは欧米を中心とした海外では、今や主流の言葉です。 ランスタッドは世界の企業が取り組む「エンプロイヤーブランディング」を日本にも広げ、企業の採用活動や組織力向上、そして働く人と企業の双方が真の力を発揮できる労働市場の創造に貢献することを目指しています。 |