多くの中小企業が、魅力あるエンプロイヤーブランドを構築する可能性を秘めています。必要なのはその方法を知ること。とはいえ、実際にはどのように進めていったらいいのでしょうか?
本コラムでは、エンプロイヤーブランドに関する当社のエキスパートが、その取り掛かり方法についてご説明いたします。
エンプロイヤーブランドとは、そこで働きたいと思う理由です。魅力あるブランドは欲しい人材を惹きつけ、引き込み、定着させる後押しになります。反対に魅力的でないブランドはマイナスになります。人によっては、この会社に応募しようと思っていたのに、興味を失う理由になるかもしれません。
エンプロイヤーブランドとは、自分が自分の会社をどう考え、どう説明するかの話だけではありません。他の人にどう思われ、どう言われているのかも考慮する必要があります。それだけでも、他人任せにすることではなく、雇用主みずからがエンプロイヤーブランドの構築や促進に積極的に取り組む十分な理由になります。
では、働く価値のある組織になるための要素とは一体何でしょうか?高給こそが何にも勝る切り札でしょうか?ランスタッドは20年以上にわたって世界中で調査を行い、 年に1度、働きたいと思われる魅力ある企業へということで、ランスタッド・エンプロイヤーブランド・リサーチとしてまとめています。調査結果によると、もちろんお金も大切ですが、一部の要素でしかありません。事実、トップクラスの報酬を提供しているにもかかわらず、エンプロイヤーブランドがお粗末な企業の例は山ほどあるのです。
調査プログラムの立ち上げに携わったランスタッドベルギーのコーポレートコミュニケーション&パブリックアフェアーズディレクター、ヤン・デニス(英語サイト)は次のように話しています。「働く人々は自分が評価されている実感や潜在能力を十分に発揮する機会がほしいと考えています。親しみやすく、協力的な文化や環境の中で働くことや、ワークライフバランスを保てることを望んでいます。現在のような経済状況が厳しい世の中では、雇用の安定性を求める声も高まっています。こうしたさまざまな要素をすべてまとめたものがエンプロイヤーブランドです。」
つまり、財源に制約があるとしても(おそらく特に今はそうかもしれませんが)、やりがいのある楽しい仕事を提供することによって優秀な人材を惹きつけることは可能です。
中小企業が大手企業のブランドマーケティング予算を相手に闘うのは大変と思うかもしれません。ですがヤン・デニスの考えはこうです。「エンプロイヤーブランディングに関しては、コミュニケーションが重要です。本当に大切なのは従業員をどう扱うか。優れたマーケティングはこのように前向きなメッセージを伝えることができ、ただしそれは文化や支援の土台があって初めて成立します」
同じくエンプロイヤーブランドのエキスパート、ランスタッド・エンタープライズ・グループのグローバルタレントマーケティング担当バイスプレジデント、フランチェスカ・カンパラニ(英語サイト)は、「魅力的なエンプロイヤーブランドストーリーは、この会社で働けることが嬉しいと言えること」だと言います。中小企業やスタートアップ企業には多くの場合、一体感、目的意識、帰属意識があります。大手企業にとっては組織の成長、拡大とともに失ってしまいがちなものです。中小企業やスタートアップ企業には活気や起業家的な土壌もあります。革新的なことに挑戦し、足跡を残したい人を惹きつける強みになります。
では、魅力あるエンプロイヤーブランドを構築し、伝えるための重要な土台とはいったい何でしょうか。
1/ 従業員の声に耳を傾ける
何に興味を持って応募し、入社したのか、どんな時に仲間入りしたことを誇りに思うか、従業員に聞いてみましょう。従業員にとって魅力的だったことは、他の人にとっても魅力的に映る可能性があり、エンプロイヤーブランドとしても説得力のあるものです。こうした従業員との対話によって、自分たちの会社がどのような機会を提供できるかを見つけることができ、そして従業員の処遇の改善にもつながります。
2/ 正直に
真実とかけ離れた会社の姿を見せられると、人々の信頼は薄れ、透明性が求められるようになります。だからこそ、社外に向けてエンプロイヤーブランドを発信する時は、従業員に自分の言葉で自分の物語を語ってもらうのが得策です。会社を良く知っていて、そこで日々過ごす従業員が雄弁に語るものこそエンプロイヤーブランドなのです。
厳しい経済状況の今、多くの企業が減収と解雇の可能性に直面しているかもしれません。こうした環境下で従業員をどのように扱うか、まさにエンプロイヤーブランドの真価が試される時です。 難しい決断を避けることはできません。ですが、透明性をもって影響を受ける従業員をサポートし、リーダーとして犠牲を分かち合うことで約束を果たす努力が必要です。
3/ ソーシャルメディアを味方につける
できるだけ幅広い人へのストーリー発信は、転職サイトやソーシャルメディアの力によってますますパワーアップしています。国内市場や業界の枠を超えて、将来の従業員とつながることもできます。ただし、こうしたソーシャルメディアの輝きの裏には、伝えようとするブランドの現実を反映していなければ、全員にすぐ本当の姿がわかってしまうという側面もあります。
4/ 時勢に乗り遅れない
新型コロナウイルスによって、人々の働き方や働く場所の変化が加速しました。リモートワークが浸透し、働き方も多様化しています。パンデミックによって変わったのはそれだけではありません。自分の価値観を反映した組織(英語サイト)で働きたいという願望が高まっています。エンプロイヤーブランドとそれを支える従業員への約束は、このように時勢によっても変化する期待に対応していることが大切です。
5/ 根気強く
エンプロイヤーブランディングの結果がすぐ出てほしい、結果が出ないなら諦めるというケースが多々あります。ですが、社内の現実を変えることができなければ、そのイメージを一朝一夕に変えることもできません。成功している企業はずっと以前からエンプロイヤーブランディングにリソースを注ぎ、時間をかけて徐々にその恩恵を受けてきたのです。
<出典>
本コラムは、ランスタッドのオリジナルコラム(英語版/English Ver.)「playing to your strengths: five ways SMEs can create a winning employer brand.」に加筆・修正した内容となります。