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[離職率改善方法]就業定着率を高めるにはどうすべきか?離職率抑制のための改善ステップ|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|May 11, 2021 3:00:00 PM

従業員の離職は、採用や教育コストといった金銭的損失だけでなく、社内のモチベーションや生産性の低下も招きます。定着率を改善するためには、何をどのようにすすめればよいのでしょうか?

離職を抑制したい人事担当者向けに具体的な改善ステップをご紹介します。

Step1:本当の離職原因を探るための事前準備

従業員や退職者の本音には、自社の離職率を抑制するためのヒントが隠されています。業務内容とのミスマッチや待遇・環境への不満、人間関係におけるストレスなど、そこに現れるのは自社のリアルなネガティブポイント。それを知ることは、離職率を改善させたい人事担当者にとって貴重な学びの機会とも言えるでしょう。

しかし、退職予備軍や退職者は、得てして建前上の理由のみを並べがち。本音を引き出し、何が不満要因になっていたのかを丁寧にヒアリングできなければ、真の退職理由を見極めることはできません。従業員のヒアリングを行う際のポイントは以下の4つです。

  1. 本音を話せる環境を整える
    従業員の本音を引き出しましょう。従業員が身構えたり不安を感じたりすることがないよう、周囲の環境に配慮し、落ち着いて本音が話せる場所を用意します。

  2. しがらみのない担当者が面談する
    人間関係に悩んで退職を決めているケースもあるため、通常業務で関わりのない人事担当者などがヒアリングを担当すると良いでしょう。人材会社のコンサルタントなど、社外の第三者に依頼するのも方法です。

  3. 反論せずに寄り添って傾聴する
    現在困っていること、具体的にどのように困っているのか、問題が起こったきっかけや気持ちの変化、背景などをヒアリングしていきます。この際、会社への不平・不満があっても、他の従業員の肩を持つような反論や説教は絶対にしてはいけません。状況が悪化してしまうことを懸念したり、信用してもらえなかったりすると、従業員は心を閉して本音を話してくれなくなってしまいます。

  4. 退職者にヒアリングする
    退職に至ってしまった場合は、退職手続きをすべて終えてから「改善のために意見を聞かせて欲しい」と明確な趣旨を伝えて本当の退職理由をヒアリングしましょう。
    また、過去の退職者の退職理由を見直すことで、今後同じ理由で退職者が出るのを防げるかもしれません。

従業員ヒアリングのレポート結果は、定着改善のための貴重な財産となります。しっかりとデータを蓄積・分析し、会社のネガティブポイントを潰していきましょう。

 

Step2:何を聞くのか?コミュニケーションやサーベイで離職予兆を捉える

従業員の離職を防ぐには、年1回の人事評価面談や従業員満足度調査だけではなく、月1回〜週1回という高頻度で行う1on1ミーティングやこまめなパルスサーベイ(簡単な質問を短期間に繰り返し行う従業員アンケート)も有効です。

1on1ミーティングは会社との信頼関係を構築し、従業員の成長を促すことができます。それと同時に、退職者ヒアリングで浮上したネガティブポイントに関連する不満を従業員が抱いていることをキャッチできれば、離職の芽を事前に摘むことも可能です。コミュニケーションの頻度を高め、レポートをデータとして蓄積していきましょう。
重要なポイントは、継続して行うことで本音を言いやすい関係性を築くこと。その後の関係悪化や人事評価への影響を懸念して本音が言えない、上手く言語化できない、という状況では意味がありません。以下のような質問を投げかけたり、パルスサーベイの結果についてヒアリングするのも良いでしょう。

〈質問の例〉

  • 最近の仕事でうまくいったことは?その理由は?
  • 最近、現場で何か困っていることは?
  • 先輩やメンバーとの人間関係はどう?
  • 今後はどのように成長していきたい?

〈コミュニケーション対応〉

  • 人間関係が原因で離職に至ることが多いため、折り合いが悪い職場の場合本音を聞けるように関係を構築します。
  • 従業員に寄り添い、業務で困っていることや従業員からの指導について聞き取り。課題があればすぐに派遣先に報告し、月次の面談で継続的に状況を確認します。
  • 従業員と派遣先、どちらかだけの話を全面的に信じるのではなく、中立の立場として双方の話を客観的にヒアリング。必要であれば第三者が入り改善に努めます。

Step3:原因を解明するための2つのアプローチ

多くの場合、退職に至る背景はシンプルではなく複合的な要素が絡み合っているものです。従業員ヒアリングから情報が集まってもどのように課題を分類し、どのように解釈すればよいかに迷うかもしれません。問題を明確にし、どこから優先順位をつけて取り組めば良いのかと判断していく必要があります。そんな時に参考になるのが「二要因理論」です。

アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」によると、仕事における満足・不満足を引き起こす要因は「衛生要因」と「動機付け要因」の2種類。
給与や労働条件、人間関係といった基本的な労働環境にまつわる「衛生要因」が満たされないと従業員は不満を感じるため、改善が必須です。しかし衛生要因はある一定以上満たされると、それ以上の満足にはつながりません。一方、達成や承認、成長といった仕事のやりがいに関わる「動機付け要因」が満たされると、従業員は仕事に高い満足感を得られるのです。

ヒアリングで得られた回答からのネガティブポイントを潰していく際、衛生因子ばかり改善しても従業員のエンゲージメント向上には限界があります。従業員が自己の成長や、やりがいを感じられる動機付け要因についても、バランスよくアプローチしていく必要があるのです。

 

Step4:不満足の原因がどこにあるのかを明らかにする

現従業員とのコミュニケーションや退職者アンケートから、離職率の高さの原因となるネガティブポイントが可視化されたら、その原因に応じて対応していきます。

以下の例を見ていきましょう。

<衛生要因>

人間関係への不満 (人間関係)

従業員同士の対人関係のトラブルは非常に多い退職理由(※)の一つです。人間関係で困っていることをすべて挙げてもらい、相関関係を図にして可視化するのも良いでしょう。不満を抱えている本人からだけではなく、周囲の関係者に幅広くヒアリングすることで、どこに問題の本質があるのかが浮かび上がるはずです。根本的原因を一つずつ解決していきましょう。

業務に関するミスマッチ・不安 (労働条件)

「入社前に思っていた業務と違った」「やってみたら上手くいかなかった」といった業務内容に関する不満がある場合、相談したくても言いづらいということも。気軽に相談しやすい関係性を築き、サポート体制を整備しましょう。

仕事の進め方・雰囲気の悪さ (職場環境)

ベテラン従業員が知識を共有したがらない、派閥があり雰囲気が良くない、指導を担当する従業員が忙しくて教えてもらえないなど、組織としての体制に課題があるケースも。単に「仕事がうまくいかない」「人間関係がストレス」と表現される場合もあるため、慎重に問題の原因を突き止めなければ解決には至りません。

<動機付け要因>

評価・待遇に対する不満 (承認)

「頑張っても正当に評価されない」と感じている場合、動機付け要因が満たされていない可能性があります。透明性の高い評価制度を導入する、インセンティブを付与するなど、社内で承認や賞賛をする仕組みづくりを行います。頑張れば報われるという感覚、自分は必要とされているという感覚が、会社へのエンゲージメントへとつながります。

 

不満足の原因に応じて対応策を考える

原因が明らかになったら、原因に応じて対応策を考えましょう。
例えば原因が人間関係であれば、コミュニケーションの活性化を図るなどの対応策が必要です。コミュニケーションが希薄になると疑心暗鬼となり、メンタルヘルスを低下させたりコミュニケーションの齟齬を招く可能性が高まります。教える側が伝えたつもりでも教わる側が理解できていない、教えても反応がない・聞いても無視されたと感じるなど、きっかけは些細なことでも、しこりになったり問題に発展するケースもあります。

こまめなコミュニケーションは人間関係を良好に保ち、離職率を抑制するために非常に有益ですが、「日常業務に追われ手が回らない」という実情も。パルスサーベイは外部サービスや委託を検討する、きめ細やかな対応ができる人材会社を選んで任せるなど、アウトソーシングを活用する方法も検討すると良いでしょう。

また、一見、人間関係の問題に見えても、実はフォローや受け入れ体制・応対にかけられる時間が無いことが原因であるケースも。下記のようなロジックツリーで再度見直すのもよいでしょう。

人間関係がこじれてしまった場合は、人員配置変更や新規人員投入で改善できることもあります。原因を見極めることで、適切な対応が可能になるのです。

 

Step5:定着に向けた改善ステップまとめ

従業員ヒアリングにより本当の退職のきっかけとなる原因を知ることから、離職率抑制のための取り組みは始まります。浮上したネガティブポイントは、不満につながる「衛生要因」と満足につながる「動機付け要因」の2つの側面から、バランス良く改善していきましょう。

従業員の本音を受け止めることでエンゲージメントを高め、長期的に働きたい・友人に紹介したいと思えるような会社になることが、定着率改善と採用力向上につながります。