法人向けHRブログ workforce Biz

従業員のスキリング(スキルの習得)、リスキリング(再訓練)、アップスキリング(スキルの向上)|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|Sep 7, 2020 3:00:00 PM

業界ニーズの変化スピードに対応するには?いま今、企業に求められていること

世界は時に、未曾有のスピードで変化しているように見えます。毎週のように新しい技術やアプリ、トレンド、あるいは働き方が現れ、今までのものはどんどん時代遅れになっていきます。ましてや、新型コロナウイルスで世の中が大きく変化したように、企業はあらゆる変化に備える必要があると言えます。

これまで日本企業は、今後業界にどのような変化が起きるかを予測し、従来必要としてきたスキルと異なるスキルが必要となる場合は、新しいスキルを保有する人材の採用や、新卒者を一括採用して育成したりすることで、変化に対応してきました。

しかし、今や多くの業界にとってそれが不可能になっています。変化のペースが非常に速いため、従来の新しいスキルを保有する人材を採用するというアプローチでは、頻繁に採用を繰り返すことになり、実務に支障をきたしてしまいます。

そもそも、コロナ禍で業績が不安定な中で採用にコストをかけることが難しい上に、各企業が求めるような「新しいスキル」を持った人材の獲得は、熾烈な競争となることが予想されます。

日本では少子高齢化による人口減少や、技術進展が進む IT分野での需要構造の変化に伴い人材に求められるスキルや能力も変化していることから、特にIT分野では人材確保が難しく、新しいスキルを持つ人材の獲得に苦戦している企業も多いことでしょう。

では、この急激な変化と困難の時代を泳ぎ切るために、企業は何をすればよいのでしょうか。一つのアプローチとして、「スキリング」(スキルの習得)、「リスキリング」(再訓練)、「アップスキリング」(スキルの向上)といった方法で、従業員の専門性やスキルアップをを図ることが考えられます。このアプローチにより、新たな人材を雇うことなく、現在就業している従業員のスキルを底上げし、今日企業が直面する課題により適切に対処することができるでしょう。

 

 

「スキリング(スキルの習得)」とは

スキルのギャップは世界のさまざまな業界が直面している問題です。フランスのIT・電子機器業界では、2020年までに8万人の労働者が不足し、米国ではデータサイエンティストが25万人不足すると推定されています。英国では新規雇用のうち約90%で基本的なデジタルスキルが必要とされているにもかかわらず、そのスキルを持っていない人の割合が23%に達しています。

日本でもIT人材が不足すると言われており、経済産業省が2019年3月に発表した「IT人材需給に関する調査(概要)」によると、今後もIT需要が毎年3~9%伸び続け、ITの生産性の伸びが毎年0.7%の場合、2030年には最大で78.7万人のIT人材が不足すると試算されました。IT需要の伸びが毎年2~5%で、ITの生産性が毎年2.4%伸びた場合においても、2025年には20.1万人のIT人材が不足すると試算されています。

では、どうするのが正解なのでしょうか。まず、社内の既存の従業員にスキルを習得させるという方法があります。その結果、企業は新しいスキルを持つ人材を探す必要がなくなるだけでなく、従業員は自己開発ができ、活躍の場が広がるというメリットが生まれ、会社で働き続ける動機になります。

しかしそのためには、新卒を含めた採用に対するアプローチを変える必要があります。熱心さや学習能力など個人の資質に着目し、スキルの伸びしろがありそうな人物を中心に採用するのです。今後、新しいスキルを備えた人材がますます不足し、採用できる難易度が高まるだろうと考えると、今後の採用活動においては、これが一番現実的な解決策かもしれません。

 

 

「リスキリング(再訓練)」とは

テクノロジーの進化やデジタル化により、重要性が失われていく仕事もあれば、突如として重要性が高まる仕事もあります。

例えば仮想通貨は急激に伸び、関連業務も急増しましたが、時間の経過とともに衰退してきています。企業では、注目されるようになったばかりの技術を持っている人材の採用が難しくなってきています。

この問題を回避する一つの方法として、新たなスキルを身に付けるリスキリング(再訓練)方針の導入が挙げられます。有能な従業員であっても、彼らの専門分野が企業にとってあまり重要ではなくなってきている場合、彼らが次の活躍の場を見つけて現在の職場を去るまでひたすら待ち、その後新たな人材を採用するといった方法は好ましくありません。

それよりも、そうした従業員に再び教育を行い、自社で新たなスキルが必要とされるポジションで彼らの能力を活かしてもらう方が、時間の面でもコストの面でもはるかに得策です。従業員にとっても、雇用が継続されながら新しいスキルを手にすることができて、双方にとってメリットがあると言えるでしょう。

リカレント教育や生涯学習は、大人の学びという点ではリスキリングと類似していますが、リカレント教育は教育と就労を繰り返すこと、生涯学習は自発的な意志で学び続けることであるのに対し、リスキリングは企業に属しながら企業が求める新たなスキルの習得を目指すという点に違いがあります。

企業内でのスキル取得にはOJT(On-the-Job Training)がありますが、OJTは既存の業務で既存のスキルを身に付けることであり、リスキリングは新規のスキルや保有者が少ないスキルの習得を目指すという点で違いがあります。

仮想通貨の例で言うと、仮想通貨そのものの勢いは衰えつつあるかもしれませんが、ブロックチェーン(仮想通貨と密接な関連を持つ技術)は、まだ新しいテクノロジーであると言えます。仮想通貨を担当する従業員にとって、ブロックチェーンを扱うために必要なスキルの獲得は容易であり、従業員のスキルの習得は企業の人材基盤の強化となります。

 

 

「アップスキリング(スキルの向上)」とは

もう一つ、企業が準備しておくことは、アップスキリング(スキルの向上)※1です。根本的に仕事の内容が変わるリスキリングとは異なり、アップスキリングでは職務内容は変わらずにトレーニングだけが行われます。アップスキリングが必要な理由はいくつかありますが、最大の理由としては、企業には有能な経営陣が不可欠であることが挙げられます。

テクノロジーだけでなく、コロナ禍という未曾有の事態によって、我々のビジネス環境はめまぐるしく変化しています。このような状況下において、企業として生き抜いていくためには、最も大きな潜在能力を秘めた従業員を特定し、リーダーとして育てていくことが不可欠であり、スキリングとリスキリングの必要性を理解している有能なリーダーが企業を育てていくのです。

 

企業のリスキリング導入事例

先駆者としてリスキリングを導入したのは米国の情報通信企業AT&Tであり、従業員にリスキリングを実施したことで、社内技術職を社内異動によって補いました。世界的なネット販売企業のAmazonもリスキリングを導入し、非デジタル系の人材をデジタル部門に移行する取り組みも行っています。日本では、日立製作所や富士通などのメーカー企業、三菱商事や丸紅などの総合商社もリスキリングに取り組んでいます。

 

リスキリングの研修に役立つコンテンツ

デジタル化に伴いIT知識を獲得するリスキリングは急務ですが、スキル習得のための研修ではどんなことを準備したらいいのでしょうか?

社内に適切なコンテンツがない場合は、社外コンテンツを活用します。一例として、経済産業省主導の「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」では、新たにデジタルスキルを学ぶきっかけとなるオンライン講座が紹介されています。その他にもリスキリングサービスを提供する企業は多々あります。このような時代だからこそ、あらためて社内に目を向け、今すぐそこにいる有能な人材を見極め、彼らが育っていくために必要なあらゆるトレーニング提供することが大切なのです。

将来の成功に欠かせない要素であるスキリング・リスキリング・アップスキリングについてまとめました。各企業がどのように取り組んでいるのか、どのように実施すればよいかなどをご紹介していますので、すぐに参照できるようにぜひダウンロードしてお手元に置いておいてください。


 
 
[参照]
※1:   the technology genie is out of the bottle, are you prepared for upskilling?
 
<出典>本コラムは、ランスタッドのオリジナルコラム「skilling, reskilling and upskilling.」に加筆・修正した内容となります。