優れたエンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)力を誇る5つの組織に、人材を惹きつける企業になる方法について、それぞれの知見をうかがいました。
エンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)とは、その企業で働くことに対して人々がどう感じるか、ということです。魅力のあるブランドには自然に人が集まってきますし、魅力がなければ新しい人材が集まらないばかりか、今いる従業員までが退職する日を心待ちにカウントダウンをするようになります。
では、魅力のあるエンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)とは、どのようなものなのでしょうか。また、実際にそれを構築するには、どうすればいいのでしょうか。ランスタッドでは毎年、エンプロイヤーブランド・リサーチを実施し、調査で常に高いエンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)を示している企業の幹部の方々にインタビューを行っています。*1
今回のインタビュー『Standing Out』では、「メルク」、「コルリュイトグループ」、「BTハンガリー」、「TAPポルトガル航空」、「ニューサウスウェールズ大学」の5つの組織にインタビューを行っています。加えて、ランスタッド・ベルギーの広報・渉外部門ディレクター、ジャン・デニスの見解も紹介しています。デニスは、エンプロイヤーブランド分野で世界有数の専門家です。これらのインタビューを実施したのは、新型コロナウイルス感染症が世界に与える影響が顕在化する前でしたが、従業員の幸福度やエンゲージメントに関する数々の知見の重要性は、現在、さらに高まっていると考えられます。
今回の『Standing Out』インタビューでは、次の5つの重要ポイントが明らかになりました。
1.自社の本当の姿を知ってもらう
心情的なつながりが、単なる事実や数字よりも、幅広い訴求力を発揮することがあります。
メルクグループでエンプロイヤーブランディングおよびソーシャルメディア採用のグローバルリーダーを務めるクリス・ディンウィディ氏は、次のように話しています。「テクノロジー、イノベーション、技術発展について語ることは、これまでも当社の得意分野でした。しかしこれからは、さらに一段レベルアップしたいと考え、社員に対し、なぜメルクに入社したのか、どんなことに刺激を受けているか、メルクで働くことをどう感じているかを話すよう、推奨しています。すなわち、当社が何をしている会社かを知らせるだけでなく、どんな会社なのかを知ってもらいたいのです」
またニューサウスウェールズ大学の人材採用責任者、マーカス・クラーク氏も、「構築するブランドを通じて、我々が自らをどんな大学だと考えているのかを発信したいと考えています。これまでの直接的で機械的なコミュニケーションから、心のつながりを感じられる温かいコミュニケーションに変えていくつもりです」と語っています。
2.言葉よりも行動が多くを語る
エンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)を構築する際、自社の良い話を語ることだけを重視し、その背後にあるものに目を向けない企業も多いものです。しかし実際にブランドを左右するのは、従業員との関わり方、働きやすい職場づくり、従業員との約束の遵守といった要素です。
ランスタッドのジャン・デニスは、「従業員は、自分が大切にされていると感じれば、そのことを友人に話しますし、顧客に笑顔で接します。それこそが、エンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)構築の王道であり、最も効果的な方法です。確かに、優れたマーケティング活動や広報活動もプラスにはなりますが、その前提として、企業としての文化と行動の基盤が整っていることが不可欠です」と話しています。
3.顧客体験と従業員体験は、深くつながっている
エンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)は、企業のブランドそのものに大きな影響を及ぼします。そして、その逆も同様です。
TAPポルトガル航空のグループHRディレクター、ペドロ・ラモス氏は、次のように語っています。当社ではビジネスとしてのブランドとエンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)を一貫して管理しています。両者は強力な相互補完関係にあるからです。お客様に忘れられない体験を提供することを目指していますが、それを実現するにはより良い従業員体験が不可欠なのです」
またコルリュイトグループのエンプロイヤーブランド・マーケター、カサリジン・ヴァンハウト氏は、「スタッフがにこやかでフレンドリーであれば、それを見たお客様は、再度来店したくなります。人材の募集についても同様で、スタッフが楽しそうに働いていることが応募の後押しになることも分かっています。職場の雰囲気の良さは、企業の文化や価値観を目に見える形で表す大切なものなのです」と語っています。
4.調査をする
逼迫した人材市場の中では、何が自社の強みになるのかを知ることが重要です。
ハンガリーにあるBT(ブリティッシュテレコム)のリージョナル・オペレーションセンターは、さまざまな年代や属性の人を対象に、それぞれがキャリアに何を求めているかを詳細に調査してきました。そして、調査結果を元に、これらのさまざまな要求に焦点を当てたメッセージを開発しました。一例として、高校や大学の卒業生が企業に期待している給与と、企業がスキルや知識を持った人材に提供できるものとのギャップを明らかにし、Z世代*1の人材に対する訴求力強化に成功しました。
ニューサウスウェールズ大学が行った人材に関する調査では、素晴らしい人材こそがより良い人材を惹きつけることが明らかになりました。同大学のマーカス・クラーク氏は「過去には、ここシドニーでの生活の魅力を強調したこともありましたが、我々が求める人材が主に注目していたのは、どんな同僚と働くのか、同僚と共に働くことで自身の希望がどう進展するのか、という点でした」と話しています。
5.忍耐強く待つ
エンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)構築に向けた取り組みに対しては、すぐに結果が出ることを期待する企業が多く、結果が出ないと早々にあきらめてしまうことがよくあります。しかし、競争力のあるブランドを構築するには、十分な時間が必要です。
そのことをよく表しているのが、ベルギーのコルリュイトグループの事例です。ランスタッドがエンプロイヤーブランド・リサーチを開始したのは20年ほど前ですが、当時、ベルギーの住民でコルリュイトグループへの就職を検討してもいいと考えている人の割合はわずか20%でした。以降、同社は地道に魅力向上の取り組みを続け、長期にわたって努力を続けた結果、勤務先としての企業の魅力度は、当時の2倍を上回る45%になりました。
コルリュイトグループで人材採用および労働市場調査を担当するセンター・オブ・エクスパタイズの責任者、デビッド・コーネリス氏は、「大切なことは、忍耐強く取り組むことです。当社はエンプロイヤーブランド(勤務先としての魅力)を強化するため、10年以上にわたって本当に粘り強く投資を継続してきました。そして今、ようやく結果が出始めています」と語っています。
エンプロイヤーブランドとは? 「この企業で働きたい」と思われる「勤務先としての企業の魅力」を意味します。 エンプロイヤーブランドを高めることは、優れた企業イメージを構成すると同時に、職場環境の改善を重ねることで、「働く人、家族、求職者にとって真に魅力ある企業」を目指すことになります。エンプロイヤーブランドは欧米を中心とした海外では、今や主流の言葉です。 ランスタッドは世界の企業が取り組む「エンプロイヤーブランディング」を日本にも広げ、企業の採用活動や組織力向上、そして働く人と企業の双方が真の力を発揮できる労働市場の創造に貢献することを目指しています。 |
ランスタッドはエンプロイヤーブランディングを通じて、企業の採用活動や組織力向上、そして働く人と企業の双方が真の力を発揮できる労働市場の創造に貢献したいと考えております。長年にわたりエンプロイヤーブランド・リサーチを行なっていますので、その最新レポートをぜひご活用ください。
<出典>
■learning from the leaders: five ways to enhance your employer brand