応募者の将来の成長性から企業文化(※1)との相性に至るまで、採用判断には数多くの検討項目があります。
何を採用基準にするかは募集ポジションの性質や企業としての要望、期待値にもよりますが、必ず確認しておくべき重要ポイントもあります。その一つが、その仕事を高い水準で遂行するために必要なスキルを持ち合わせているかです。
製造業や物流業など技術的知識や経験が大きく物を言う業種においては特に重要な問いです。これに対して最大限正確で信頼できる回答を得るためには、書類選考、面接、リファレンスチェックなどの基本的採用プロセス(※2)だけでは十分とは言えません。
そこで出番になるのがスキルアセスメントテストです。
スキルアセスメントテストは特定職務の遂行能力、ひいては組織への貢献力を見極めるために目的に応じて構成する評価テストです。さまざまな形態があり(後段で説明します)、応募者の強みと能力を測定可能な基準に基づき、詳細に捉えることができます。
求職者の評価手段として主に用いられますが、既存人材のスキルチェックのために活用することも可能です。その仕事で成果を上げるための適切な能力を備えているか、能力開発(※3)すべき領域がないかを確かめる効果的な手段になります。
スキルアセスメントには、候補者が高度な技術職を担うに足るハードスキルを備えていると確信できる、従業員としての長期的成功に欠かせないと言われるソフトスキルを測定できるなどさまざまなメリットがあります。
既存人材に対して能力評価を行うとスキルギャップの現状を把握でき、採用活動(※4)においてターゲットにすべき人物像や募集条件を判断する材料にもなります。
スキルアセスメントテストは特定の技術や能力を必要とする職種を募集する場合に特に有効です。
例えば製造業や物流業などでは、採用を決める前に機械操作や特定手順の知識を確かめておく必要があります。
一定数の有望な候補者が見つかり、絞り込みに入る時にも大いに役立ちます。テストから得た結果や情報を基に優秀な候補者を選り抜くことができます。
スキルアセスメントテストにはこれ以外にも価値あるメリットがあります。応募者の能力をデータに基づき、客観的に評価できる点です。履歴書と面接に頼った方法の場合、能力については本人の口から聞いたことだけで最終判断を下すことになります。自己アピールが得意な方もいますが、だからといって必ずしもそのポジションに対して最も適した人物とは限りません。
本人の売り文句を確かめ、第三者から情報を得るにはリファレンスチェック(※5)が欠かせません。Checkster(※6)などのツールがあれば、このプロセスを効率良く、効果的に行うことができます。ただし、相手から聞いた話はあくまでも主観的意見ですのでそれをお忘れなく。
その点、テストであればすべての感情と偏りが方程式から除外され、アセスメントで示された知識と能力のみに基づき、個人を判断できます。
既存人材の管理においても同じく有用です。既存人材のスキル分析には次のようなメリットがあります。
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スキルアセスメントテストの導入が組織にとって有用と判断したならば、次のステップではどのような種類があるのかを知り、どれがベストかを判断します。
製造業(※7)などの業種では、基本作業を問題なく行い、基幹業務を円滑に運営し続けるために必要なハードスキルを備えているかの確認が必要です。今日の製造業に求められるハードスキルとは例えば、
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フォークリフト運転技能講習修了証、MIG/TIG溶接技能者資格など、技能証明の提示を求めるのが一般的です。
こうした重要分野の技能評価は、回答に具体的な知識と経験を必要とする設問をテストに加えることによっても可能です。例えば、
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Codility(※8)やHR Avatar(※9)などの専用ソフトウェアプラットフォームを利用すると目的に応じたテストを作成でき、上記のような詳細な質問を設けることができます。
もう一つ便利なツールがあります。応募者の性格特性評価とそのポジションでの成功に必要な能力評価を行うために世界中の企業に活用されている16PF Questionnaire(※10)です。
ハードスキルテストでは、架空の状況を想定し、技術的問題が発生した場合の解決方法を説明してもらうなどの試験を行う場合もあります。
ハードスキルは紛れもなく重要であり、業務上、一定レベルの技術知識を必要とする機械・装置類を頻繁に使用する業種では特に欠かせないスキルです。
とは言え、ハードスキルさえ確認できればよいというわけではありません。多くの企業にとって、技能とソフトスキルを兼ね備えた人が理想の人材であるはず。ソフトスキルが高い人はチームに溶け込みやすく、仲間や顧客と強い関係性を築く傾向があります。
LinkedIn(※11)によると、2020年の最も需要の高いソフトスキルは次の通りです。
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応募者の履歴書を見るだけでは判断できないこれらの資質を評価するには専用スキルアセスメントが有用です。
幸いなことにHRテクノロジーは拡大を続け、ソフトスキルアセスメントを正確に行うためのツールやソフトウェアプラットフォームが数多く開発されています。
その一つがランスタッド・イノベーション・ファンド(※12)の支援企業、Pymetrics(※13)が開発したツールです。ゲーム形式のアセスメントを通じて客観的行動データを集め、履歴書だけではわからない応募者の全潜在能力を測定します。こうした画期的アプローチによって次のようなソフトスキルの評価が可能になります。
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16PF Questionnaireはソフトスキル評価においても力を発揮します。応募者の人となりを詳細に把握でき、必要に応じて成長性やリーダーシップ能力、カルチャーフィットなどの特定の側面に着目することも可能です。
特定の状況に置かれた場合に応募者がどのように反応するかを直接知りたい場合は、社内で起きた実例を使うのが良い方法です。
マネージャーかチームメンバー、理想的には採用後に一緒に働くことになる人に、日常業務において過去に遭遇した課題とそれにどう対処したか、その結果どうなったか、具体的に例を挙げてもらいましょう。今から考えると何か別の方法はなかったかを聞いてみるのもよいでしょう。
応募者が同じような解決策、あるいはもっと良い解決策を考え出したら、そのポジションできっと成果を出せるに違いないと自信を深めることができます。
Modern Hire(※14)などのツールを活用すると、ケーススタディや動画などのリソースを応募者に提供し、回答を得る作業を簡単に行うことができます。音声・動画機能付きテクノロジーは、例えば外国語の知識など特定のハードスキルのテストにも有用です。
採用プロセスにおいて複数のスキルアセスメントテストを組み合わせれば、応募者の能力と潜在能力を文字通り詳細に確かめることができます。
例えばハードスキルテストとソフトスキルテストの適正バランスを見つけることによって、まずはその職務の遂行能力の有無、加えて組織や将来の同僚との相性の良さをデータに基づき結論付けることができます。
実務的評価をこうした手法で補い、あるいはさらに認知能力テストなどのツールを組み合わせることによって、必要な度合いの総合評価を行い、スキルアセスメントを有効活用できます。
何をもって「正しい」スキルアセスメントテスト手法とするかは、それぞれの組織のニーズや目標、期待値によって変わります。最も効果的な戦略も同じく、募集ポジションの性質によって変わります。
どのテストを行うべきか判断するには次の項目を検討してください。
これと併せて、評価を行うために使用するツールの性質を考えることも大切です。例えば専用ソフトウェアを使うのであれば、テストフォーマットをどの程度変更できるのか、質問と回答がどのように示されるのかを知っておく必要があります。
スキルアセスメントテスト用ツールやプラットフォームは数多く市販されていますので(※16)、十分時間をかけてリサーチし、オプションを比較し、自社にもっとも適し、有益なものを選び出すことが大切です。
HR機能のさまざまな改革と同様(そして全くのところ組織の大型プロジェクトや大型投資と同様)、スキルアセスメントテストも導入後を追跡し、成果を分析することが重要です。
テストスコアに基づいて人材を採用したら、テストから推測された期待値と実際の仕事ぶりを比較評価できます。採用後にわかったその人の能力に対して当初のスキルアセスメントが不正確であった場合は、今後の成果の改善のためにアプローチの変更を検討すべきでしょう。
今日のビジネスに求められる価値ある資質(※17)の一つは機敏性です。スキルテストは継続的に見直し、正しい採用判断を助けるためにどこを修正し、更新すべきか検討することが大切です。