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【基礎知識】リファレンスチェックとは?採用成功に不可欠なその役割と重要性

作成者: randstad|Nov 3, 2025 11:00:01 PM

多くの企業では、新たに採用する候補者に対して「リファレンスチェック(採用時の照会)」を実施しています。
しかし、その本来の価値を十分に理解し、効果的に活用している企業は決して多くありません。多くの場合、内定前に候補者の経歴や発言内容を最終確認する“形式的な手続き”として扱われているのが実情です。

もちろん、候補者の経歴や実績を裏付けることはリファレンスチェックの重要な目的のひとつです。
ですが、それだけではありません。活用の仕方次第で、採用の精度を高め、入社後のミスマッチを防ぐための貴重な情報を得ることができます。

本記事では、リファレンスチェックの基本的な仕組みや目的を整理しながら、なぜ採用プロセスにおいて欠かせないステップなのか、そして他の採用前チェック(バックグラウンドチェックなど)とどのように異なるのかを解説します。

 

リファレンスチェックとは?

リファレンスチェックとは、企業が採用候補者の前職の同僚や上司に連絡を取り、候補者がその職務に必要なスキル[1]や資質を持っているか、そして人柄や働きぶりについてより深く知るために行う調査です。

 

採用における目的

最も基本的な目的は、「在籍期間」[2]や「役職」など、候補者が申告した雇用情報の事実確認を行うことです。

しかし、その本質は、候補者の応募書類や面接で得たポジティブな印象を、第三者からの偏りの少ない客観的な情報によって裏付け、より立体的で完全な候補者像を把握[3]することにあります。

これは通常、内定通知を出す直前の最終ステップとして位置づけられ、企業にとって重要な意思決定の根拠を提供します。

リファレンスチェックと”バックグラウンドチェック”の違い

リファレンスチェックと似て非なるものにバックグラウンドチェックがあります。この二つには大きな違いがあります。

リファレンスチェックの特徴

情報源: 候補者が選んだ前職の同僚やマネージャーからのインプットに完全に依存します。

内容: 候補者が一緒に働いた際のパフォーマンスや職務上の行動についてのフィードバックが中心です。

バックグラウンドチェックの特徴

情報源: 企業が自ら行う調査が多く、候補者が選んだ情報源への依存度が低いです。

内容: 詳細な調査を含む場合があり、以下のような項目が含まれることがあります。

  • 学歴の検証(卒業校や学位の確認)
  • すべての前職の雇用履歴の確認
  • 職務経歴の空白期間の調査
  • 犯罪歴や信用情報の調査(国やポジションによる)

プライバシーとコンプライアンスの注意点

リファレンスチェックによるデータ収集は、採用活動における「正当な利益」として認められやすい一方、バックグラウンドチェックやソーシャルメディアスクリーニングといった調査では、健康状態や私的な人間関係など、機密性の高い個人情報(センシティブデータ)に触れるリスクが高くなります。

これらの機密情報を企業が保管することは、特定の状況を除き厳しく規制されています。バックグラウンドチェックを実施する前に、「企業として収集する正当な利益がある情報」[4]を明確にし、不明点があれば必ず専門家(弁護士など)に法的助言を求めましょう。

 

リファレンスチェックが重視される3つの理由

1. 虚偽申告を見抜き、事実を裏付ける機会

履歴書や職務経歴書における虚偽申告の割合は、SHRMの調査によると36%[5]とされていますが、Forbsの調査によると70%[6]と幅があります。しかし、その発生が一般的であることは間違いありません。

リファレンスチェックは、これらの虚偽を見抜き、候補者が本当にスキル、経験、信頼性を備えているかを確認する最良の機会の一つです。これにより、採用に値する人物であるかを客観的に判断できます。

2. 甚大なリスクを回避する防波堤

採用コスト[7]が高く、人材不足が続く現代において、たった一度の「バッドハイヤー(採用の失敗)」は、組織の士気低下、生産性のダメージ、そして財務的な損失という深刻な損害[8]をもたらします。

リファレンスチェックは、この脅威を完全に排除はできませんが、魅力的に見える候補者が「見かけ通りに優秀な人物であるか」を見極め、リスクを低減するための重要な安全装置[9]として機能します。

3. 「カルチャーフィット」を確実に評価する

必要な資格や経験をすべて満たしている候補者でも、あなたの会社の固有の企業文化に馴染めず苦労することがあります。そうなると、パフォーマンスが低下し、早期に転職活動を始める可能性が高まり、既存チームにも悪影響が及びます。

カルチャーフィットの可能性を評価するには、「一人の従業員として彼らがどのような人物であるか」[10]について、多角的かつ正確な情報が必要です。前職の同僚やマネージャーは、この情報を得るための不可欠な情報源となります。

 

“人物紹介(パーソナル・リファレンス)”との違い

パーソナル・リファレンスやキャラクター・リファレンスという用語は、上で述べた職務関連のリファレンスと混同されることがありますが、厳密には意味が異なります。

これらは、候補者の職務遂行能力や実務スキルではなく、人柄や倫理観に焦点を当てた推薦書・意見書を指します。

一般的な職務リファレンスでも人柄の一部は含まれますが、パーソナル・リファレンスは、セキュリティクリアランスが必要な職種など、候補者の高い倫理観や人格が特に重要視される組織で求められる傾向があります。

多くの組織では必要ありませんが、候補者とのコミュニケーションの明確性を確保するために、これらの違いを理解しておくことが重要です。

 

まとめ:採用前調査の全体像を把握する

リファレンスチェック、バックグラウンドチェック、ソーシャルメディアスクリーニングなど、採用前調査には様々な種類があり、混同されがちです。

チーム内のコミュニケーションを改善し、候補者とのやり取りで混乱を避けるためにも、各種調査の明確な定義を理解しておくことが重要です。

当社のリファレンスチェックのインフォグラフィックは、採用前調査の全体像の整理にお役立ていただけます。オフィスへの掲示や、プレゼンテーション資料としてぜひご活用ください。


[出典・参考資料]
本記事は以下の情報を参考に作成しました。

[1] スキルアップとスキル再習得によって、ビジネスを将来の成功に備える方法より
[2] 従業員の定着 より
[3] 採用担当者が尋ねるべき面接の質問より
[4] 企業のセキュリティ確保:身元調査のベストプラクティスより
[5] 履歴書の嘘を見抜く方法 より
[6] 労働者の70%が履歴書に嘘をついている、新たな調査で判明 より
[7] 雇用主は採用コストの上昇にどう対処すればよいのでしょうか? より
[8] EUにおける労働力とスキルの不足への取り組み より
[9] 従業員の離職にかかるコストの高さに焦点を当てていますより
[10] 従業員のエンゲージメントより