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生成AIが採用活動にもたらす影響

作成者: randstad|Aug 25, 2025 12:00:00 AM

AI技術が急速に進化する現代において、人事担当者たちは採用活動における生成AIの可能性を見出し始めています。オリジナルなテキストや動画、音声コンテンツを生成できるAIツールは、強力で安価(または無料)なものが多く、すでに採用担当者や求職者の間で広く利用されています。

世界的な人材不足が続く中、限られたリソースでより多くの成果を出すために、採用担当者はあらゆるツールを活用したいと考えているでしょう。技術がより洗練され、ユーザーのスキルも向上するにつれて、人事におけるAIの活用はさらに普及していくはずです。

生成AIはすでにその存在感を示しています。Gartnerが2023年に実施した採用と人事に関するAI調査[※1]によると、人事担当者の81%がすでに生成AI採用ソリューションを導入、または導入を検討していることが分かりました。また、Canvaが5,000人の求職者を対象に行った調査[※2]では、約半数が職務経歴書の改善にAIを活用していることが明らかになりました。

多くのリーダーが人事分野でのAI活用に興味を持っている一方で、具体的な活用方法が分からずにいる担当者も少なくありません。本記事では、採用プロセスをいくつかの基本的な段階に分け、それぞれの段階で生成AIがどのように活用できるか、そして何を注意するべきかを具体例を挙げてご紹介します。

 

AI活用でスキルギャップを特定

採用を成功させるための最初のステップは、自社に何が本当に必要なのかを理解することです。どの分野を改善すべきか、現在どのような重要なスキルが不足しているのか[※3]を把握する必要があります。また、新しい正社員が必要なのか、それとも単一のプロジェクトを支援する一時的なリソースが必要なのか、選択肢を比較検討することも重要です。

この段階で正しい答えは、社内の情報から導き出されます。生成AIツールは、適切なプロンプトを与えれば強力なツールとなりますが、万能ではありません。多くのAIはインターネット上の公開情報で学習しており、企業のニーズを正確に定義するために必要な社内情報にはアクセスできないからです。[※3]

それでも、公開されているLLMは、アイデアの源泉や意見交換の場として役立ちます。例えば、自社の状況に関する基本的な情報を入力し、潜在的なスキルギャップの提案を求めるプロンプトは、社内議論の良い出発点となるでしょう。ただし、AIの回答を鵜呑みにすべきではありません。AI採用ソリューションは、企業の深い知識を持つ専門の採用担当者を完全に代替することはまだできません。

しかし、一部のプラットフォームは、AIが外部データだけでなく、企業システムと連携して社内情報にアクセスできるように進化し始めています。これにより、AIの回答はより具体的で価値のあるものになっています。

 魅力的な求人票の作成

求人票に記載する基本的な内容(給与、主要な職務内容、必要な資格など)は、社内の専門家が提供する必要があります。ただし、生成AIツールを意見交換の場として活用することも有効です。

生成AIが真価を発揮するのは、これらの基本的な詳細情報を、優秀な人材を惹きつける魅力的で説得力のある求人票に仕上げる段階です。基本的な情報を生成AIチャットツールに入力し、トーンやインクルーシブな言葉遣いといった要件を指示すれば、AIが魅力的な求人票を瞬時に作成してくれます。出力された内容には調整が必要ですが、この方法でAIを活用すれば、求人票作成のスピードと質が向上します。特に、ライティングスキルに自信のない採用チームにとっては非常に有効です。

また、生成AIは職務分析を行い、その役割に役立つスキル、学歴、経験を特定するのにも役立ち、人材プールの拡大に繋がります。さらに、成果ベースの求人票作成にも役立ち、候補者の質と量の両方を向上させることが可能です。これらの活用法は、採用担当者、人事チーム、そして採用マネージャーの誰もが実践できます。

 

人材の検索とマッチング

汎用的な無料の生成AIツールは魅力的ですが、プライバシー保護の観点から、履歴書選考には使用すべきではありません。しかし、プライベートで安全なAI採用ツールを候補者のスクリーニングに活用すれば、手動での検索作業を大幅に強化できます。

過去にも、要件に基づいて候補者のプロフィールを検索・フィルタリングするツールは存在しました。しかし、今日のAIツールが持つ高度な言語能力は、従来のツールでは見過ごされていたかもしれない候補者とも、より正確なマッチングを可能にします。

大規模言語モデル(LLM)は、入力された自然言語(テキストや音声)を理解できるため、LLMを搭載した検索・マッチングツールでは自然な言葉で検索をすることができます。これにより、複雑なBoolean検索が簡単になり、専門家は自社が必要とする人材像をより具体的に伝え、関連性の高い候補者をより多く見つけることができます。

ただし、AIはあくまで手動での人材検索を補完するツールであり、完全に代替するものではないことを忘れてはなりません。多くの開発者がAIツールのアルゴリズムバイアスの修正に苦慮しており、AIに過度に頼ると、意図せず特定の候補者に対する差別につながるリスクがあります。

しかし、この深刻な問題は将来的に改善される可能性があります。例えば、あるグローバル金融サービス企業が開発したLLM搭載のマッチングソリューションは、バイアスに関するテストにおいて、3つの一般的な(非LLM)マッチングソリューションよりも優れた結果を出しました。この企業は、候補者データをLLMに渡す前に、氏名やその他の個人情報を削除するという賢明な対策を講じました。

AI研究企業のAnthropicが行った調査[※5]でも同様の結果が出ています。LLMに「差別は違法である」と伝え、個人データを無視するように指示するだけで、バイアスをほぼ完全に排除することに成功しました。

人材の検索とマッチング 候補者の事前選考とスクリーニング

AIとの協働は、応募者を選別し、トップ候補者に絞り込む際にも役立ちます。チャットボットは、「運転免許を持っているか」「必要な学歴を満たしているか」といったシンプルなスクリーニング質問には十分対応できます。しかし、従来のLLM非搭載のチャットボットは人間味がなく、候補者によってはコミュニケーションが難しいと感じることもありました。

生成AIを既存のチャットボットに統合[※6]することで、その応答性は劇的に向上します。多くの採用ツール提供企業が、すでにこの取り組みを進めています。これらのAIチャットボットは、単純な二択の質問だけでなく、多言語にわたる幅広い応答を理解し、「人間らしい」回答を提供し、複雑なタスク(自動音声通話での面接予約など)もこなせるようになっています。

 

面接の実施 

生成AIツールは採用プロセス全体をサポートできますが、ほとんどの採用関係者は、最終的な採用決定の前にやはり対面での面接を望んでいるでしょう。AIを活用して面接を完全に自動化[※7]することも可能ですが、これは求職者やメディアから批判されることもあります。

しかし、面接の準備段階でAIを活用すれば、新鮮なアイデアやすぐに使用できるフィードバックを得ることができます。候補者の経歴に合わせた鋭く、示唆に富んだ質問を一人で考えるのは難しいものです。シンプルなプロンプトを使えば、AIが質問リストを生成してくれるため、それを元にニーズに合わせて質問を調整・応用できます。また、候補者もAIとのロールプレイングを通じて面接練習をすることができます。

新入社員のオンボーディング  

面接を終え、採用が決定した後も、生成AIには興味深い活用法があります。第一印象は重要ですが、オンボーディングプロセスは、特にリモートで働く社員にとって時間と手間がかかるものです。そこで、自社の社内プロセス、ポリシー、組織構造に関する専門知識を持つ生成AIバーチャルアシスタントを作成することを想像してみてください。このアシスタントは、新入社員の信頼できるガイドとして、どんな質問にも答え、必要な研修を案内し、書類手続きを支援し、バディ制度に繋げ、初週のスケジュールを設定するなど、スムーズな立ち上がりをサポートします。

このようなAIオンボーディングエージェント[※8]は、新入社員にとって強力なサポートとなり、専任の人間メンターを代替するのではなく、その役割をサポートする存在となります。

AIを活用した採用をぜひ大変してみてください

本記事でご紹介した活用事例は、ほんの一例に過ぎません。より多くのソリューションや、具体的な導入方法を知りたい人事担当者のために、私たちは「採用における生成AI活用事例ガイド」をご用意しました。

このガイドをダウンロードして、AIが貴社の組織パフォーマンスをどのように向上させ、採用活動に新たな価値をもたらすか、そのヒントをぜひ見つけてください。

[出典・参考資料]

本記事は以下の情報を参考に作成しました。

[1] Gartner記事「Artificial Intelligence in HR」より
[2] TECH.CO記事「Half of Job Seekers Using AI」より
[3] ランスタッドブログ記事「Identifying & Closing Skills Gaps in Your Organization」より
[4] IBM記事「What are large language models (LLMs)?」より
[5] arXiv.org掲載論文「Are LLMs a Threat to Fair and Unbiased Hiring?」より
[6] ランスタッドブログ記事「Chatbot Takeover: What AI Brings (and Doesn't Bring) to Recruitment」より
[7] The Guardian記事「AI interviews: the job applications that watch you back」より
[8] The Verge記事「Microsoft's new 'AI agents' will automate your tedious desktop tasks」より