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【採用の未来】AIは採用担当者を「代替」するのか?協働で成果を最大化する方法

作成者: randstad|Aug 18, 2025 12:00:00 AM

近年の生成AIをはじめとするAI技術の目覚ましい進化は、採用業界に大きなインパクトを与えています。AIと人間が協働する時代はすでに到来しており、多くの企業や候補者が採用活動や就職活動にAIを活用し始めています。採用業務の自動化や効率化にAIの能力を取り入れる組織も増えてきました。

今日のAIツールは、膨大な情報を理解し、まるで人間が書いたかのような新しいコンテンツを生成できます。その精度は日々向上しており、多くの企業や採用担当者はこう自問しているのではないでしょうか?


ー「AIが採用プロセスを担うようになったとき、私たちはどのような役割を果たすべきなのか?」

本記事では、採用担当者がAIに取って代わられることはない、という私たちの考えをお伝えします。AIが採用にもたらす影響は計り知れませんが、それは採用担当者を「代替」するものではなく、彼らの能力をさらに「強化」するものなのです。

 

 

AIには作れない「信頼関係」が、採用成功の鍵を握る

採用活動は、本質的に「人」を中心とした仕事です。

採用担当者には、企業のビジョンやカルチャー、そして候補者のキャリアに対する希望や潜在的なモチベーションを深く理解することが求められます。

この双方のニーズを的確に捉えるためには、明確なコミュニケーションに基づいた強固な信頼関係が不可欠です。そして、こうした人間同士の密な関係性こそが、採用の成功を左右すると言っても過言ではありません。

たとえプロフェッショナルな関係性であっても、候補者が「この人となら一緒に働きたい」と感じるような、人間的な温かさや繋がりが、より良い結果を生むことは多くの人が同意するでしょう。これは単なる感覚ではなく、科学的にも裏付けられています。

人事関連の学術誌『Personnel Review』に掲載された研究では、実験条件下において、親しみやすい採用担当者に対して、候補者がより好意的な反応を示すことが証明されました。

その研究結果によると、模擬面接で友好的な採用担当者と対面した参加者は、「採用担当者に強く惹かれ」「その職務をより魅力的に感じ」「入社したいという意欲が向上する」という結果が示されました。

AIツールが採用担当者の定型業務を効率化してくれるのは事実です。しかし、採用成功の鍵となる「人間的な繋がり」を築くことは、AIには不可能です。

この点が、次のテーマへと繋がります。

候補者はAIよりも「人間」の採用担当者を信頼する

人々がAIとの長期的な関係構築に前向きになれない主要な理由の一つは、単純に「AIを信頼していない」からです。

この傾向は、多くの調査で明らかになっています。その代表例が、KPMGとクイーンズランド大学が2023年に発表した国際調査「Trust in artificial intelligence」です。

この調査によると、回答者の5人に3人がAIシステムを警戒しており、67%がAIの受け入れ度合いを「低い」または「中程度」と回答しています。

大多数の回答者はAI技術の利点を認めつつも、「メリットがリスクを上回る」と信じているのは半数に留まりました。

 

 

この調査では、AIの用途別に信頼度も分析しています。興味深いことに、医療診断の改善にAIを利用することには比較的寛容な一方で、最も信頼度が低かったのが「人事(HR)」領域でした

調査レポートには、人事領域におけるAIへの不信感の原因は明記されていません。しかし、候補者がAIの採用プロセスに抵抗を感じているのは明らかです。近年、AIが特定の候補者に対して差別的な判断を下したというニュースが報じられることもあり、この不信感は今後も払拭されにくいでしょう。

これらの数字が示す通り、企業も候補者も、AIに過度に依存した採用担当者と関わりたいとは考えないはずです。

専門性の高い採用は、AIには担えない

ChatGPTをはじめとする今日の生成AIツールは、なぜこれほどまでに多才なのでしょうか?

その理由は、インターネット上のあらゆるコンテンツ、書籍、研究論文といった、膨大なデータセットで「学習」しているからです。

これにより、あらゆる質問に対して、この巨大な知識のデータベースから瞬時に情報を引き出し、有用な回答を生成することができます。

しかし、特定の専門職やニッチな職種の採用で求められる知識は、一般的なデータセットには含まれていません。

例えば、企業の独自のニーズ、候補者や採用側の目標、特定の製品やサービス、そして事業戦略といった深い情報は、大規模言語モデル(LLM)が収集・整理できるものではないのです。

採用におけるAIの未来は、定型業務の効率化や反復作業の自動化、そしてリアルタイムでのフィードバックやアイデア出しのサポートにあります。

AIと人間が協働することで、採用担当者は多忙な業務環境において強力なサポートを得られます。しかし、候補者や企業と信頼関係を築き、最適なマッチングを実現する仕事は、今後も人間が担っていくでしょう。

将来的には、採用担当者の業務は事務作業から脱却し、深い専門知識を活かして企業と候補者を導く、より戦略的な役割へとシフトしていくはずです。

HR分析企業のAptitude Researchの調査によると、すでに採用担当者の42%が、AIによって日々の業務から解放され、より戦略的な採用計画に集中できるようになると考えています。

採用におけるAI活用をさらに深く学ぶために

AIは、他の多くの産業と同様に、採用にも大きな影響を与えています。

しかし、AIを正しく理解し、責任を持って導入する企業は、その変化を恐れる必要はありません。

今回ご紹介した内容をさらに深く学びたい方は、ぜひ「AIと労働市場に関するポジションペーパー(要約版)」をダウンロードしてご一読ください。

この資料では、AIに対する候補者の本音、採用におけるAIの具体的なユースケース、そしてAIの可能性を最大限に引き出したい企業への提言をまとめています。