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金融業界における従業員のモチベーション:エンゲージメントの高いチームとはどのようなものか?

作成者: randstad|Jul 7, 2025 2:00:00 AM

長時間労働、厳格な規制、そして高いストレス―金融業界では、従業員のモチベーションを維持することが常に大きな課題です。その結果として、燃え尽き症候群や離職率の上昇が止まりません。企業の多くが「モチベーションの高い人材」の重要性を認識している一方で、その実現には苦戦しているのが現状です。

本記事では、金融業界において「モチベーションが高い状態/低い状態」が実際にどのように表れるのかを掘り下げながら、マネージャーやチームリーダーが今こそ取り組むべき理由について考えていきます。

 

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最新のREBR調査によると、金融業界で働く人のうち、約75%が「やる気がある」または「非常にやる気がある」と感じていると回答しています。しかし、地域によってモチベーションの水準には大きな差があり、その背景にある課題も異なります。
たとえばフランスでは、「マネジメントからの期待が不明確または非現実的であること」が大きな障壁となっており、やる気を感じていない人の42%がこの点を挙げています。一方でベルギーでは、同様の理由を挙げたのはわずか17%でした。

こうした地域差は、金融業界全体に根強く存在する不満の現れでもあります。Raconteurの報告によれば、イギリスでは金融業界で働く人の約71%が「業界外への転職を検討している」と答えており、会計職では約99%がキャリアのなかで燃え尽きを経験したことがあるとしています。

一方、米国の大手企業を対象にしたDeloitteの調査では、「柔軟な働き方やリモート勤務の選択肢」が、従業員のエンゲージメントや定着率の向上に強く影響していることが明らかになりました。これらの結果は、業界全体として改善の余地があること、そしてそのカギが“働き方の見直し”にある可能性を示しています。

モチベーションが高い人が見せる行動とは

金融業界でモチベーションの高い人材は、細部にこだわり、問題解決に前向きで、常に期待以上の働きをしようとします。とくに印象的なのは、自ら進んで業務を見直し、エラーを早期に発見し、厳格なコンプライアンス基準をしっかり守る姿勢です。金融の現場では、些細なミスが大きな損失につながる可能性があることを、彼らは理解しています。

一方で、モチベーションが低下している従業員は、確認を怠ったり、矛盾に気づかないまま業務を進めたりと、注意力の低下が目立つようになります。

特に四半期末の報告業務や監査対応、重要なクライアントの締め切り前などプレッシャーの高い時期には、その違いが顕著に表れます。やる気のあるチームメンバーは、互いに連携しながら目標達成に向けて粘り強く取り組みます。一方、士気が下がっているチームでは、追加業務を避ける傾向が強まり、結果として締め切り遅延やコンプライアンス違反のリスクが高まります。

また、金融業では部門間の業務が密接に関連しており、スムーズな連携が不可欠です。モチベーションの高いチームは、コミュニケーションが活発で、経理と監査の連携もスムーズ、アナリストとマネージャー間の情報共有も的確です。

逆に、モチベーションが低い場合は、部門間の連携が途切れがちになり、孤立した働き方や情報の共有不足、さらには不満の増加やストレスの表面化といったかたちで問題が表れてきます。

金融業務特有のモチベーション低下リスクとは

Quantum Workplaceの調査などでも明らかになっているように、モチベーションは金融業界におけるパフォーマンスや定着率に大きな影響を与えます。しかし、金融の仕事で長期的にモチベーションを維持するのは決して簡単ではありません。

会計や財務分析といった職種は、常に高い正確性と責任が求められるプレッシャーの大きい環境です。こうした状況が続くと、管理や対策を怠った場合、従業員のモチベーション低下や燃え尽き症候群(バーンアウト)につながるリスクがあります。

この章では、金融業界に従事する人たちが直面しやすい、主なモチベーション低下の要因を4つ紹介していきます。

プレッシャーによるストレスと燃え尽き症候群

金融の仕事には、月次・四半期・年次の締め処理、長時間労働、そして一切のミスが許されないという強いプレッシャーがつきものです。こうした過酷な状況が続くと、慢性的なストレスにさらされ、モチベーションの低下につながることも少なくありません。

その兆候として現れやすいのが、疲労感の蓄積、欠勤の増加、離職率の上昇です。優秀な人材ほど、よりストレスの少ない職場を求めて転職を選ぶ傾向があるため、組織としても早期の対処が求められます。


単調で価値を感じにくい業務

財務の仕事には戦略的な側面もある一方で、データ入力や請求処理、帳簿の突き合わせなど、日々繰り返されるルーチンワークが多く含まれます。こうした業務ばかりが続くと、「自分のスキルが活かせていない」「付加価値を生み出せていない」と感じるようになり、モチベーションの低下や仕事への不満につながります。

業務フローが未だに手作業中心であったり、テクノロジーの活用が進んでいない職場では、優秀な人材ほど「このままでいいのか」と悩みやすくなります。

成果が伝わらないもどかしさ

経理や財務のチームは、営業やマーケティングのように成果が目に見えやすい職種とは異なり、「縁の下の力持ち」として業務を支えていることが多くあります。たとえば、コスト削減のために分析を重ねたアナリストがいても、その貢献が社内で表立って認知されることはほとんどありません。

こうした「誰にも気づかれない努力」が続くと、自分の仕事が軽視されているように感じ、やがてエンゲージメントやモチベーションの低下につながってしまいます。

GallupとWorkhumanの調査でも、効果的な従業員の称賛が、従業員と企業の双方にとって前向きな職場づくりに欠かせない要素であると示されています。

厳格なルールが生む息苦しさ

コンプライアンス遵守はもちろん不可欠ですが、ルールが厳しすぎると、現場の裁量が失われてしまうこともあります。社員が常に細かく管理されていると感じてしまうと、自律性が損なわれ、モチベーションの低下につながります。

とくに財務のように正確さと管理が重視される業務では、自由度が限られることが多く、職場の満足度ややりがいを感じにくくなる要因となるのです。

 

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金融業界でモチベーションの高いチームに共通する4つの特徴

ランスタッドではこれまで、金融業界におけるさまざまな企業・チームと協働してきました。そこで得た知見を通じて、意欲的で成果を上げるチームには共通するいくつかの特徴があることが分かってきました。

1. 改善を惜しまない姿勢

数字を扱うだけではなく、日々の業務をより効率的・効果的に進める方法を積極的に模索するのが、モチベーションの高い金融業界のプロフェッショナルに共通する姿勢です。たとえば、レポート作成の自動化や、新たなファイナンスツールの導入を提案するなど、地道な業務の中にも改善の余地を見出し、自ら行動に移します。こうした工夫によって、自分自身の満足度もチーム全体の生産性も高めています。

2. 部門を越えて連携する力

モチベーションの高い金融業界の人材は、決して自分たちだけで完結しようとはしません。たとえば、オペレーション部門と連携してコスト削減の余地を探ったり、人事と協力して給与予算の策定に取り組んだりと、他部門と積極的に関わります。ビジネス全体の成長に責任を持つ「パートナー」としての意識が根付いているのです。

3. 高い倫理観と当事者意識

モチベーションの高い金融業界のプロフェッショナルは、コンプライアンスの徹底や倫理基準の遵守に強い誇りを持っています。自社の財務の正確性に責任を持つ姿勢は、監査時の指摘や不備の少なさにもつながります。手抜きやミスの隠蔽といった行動を避け、問題が起きた際にはしっかり声を上げ、自らの手で改善へと導こうとします。

4. 離職率の低さ

モチベーションの高い金融業界のチームを見極めるうえで、もっとも分かりやすい指標のひとつが「離職率の低さ」です。社員が長く働き続け、組織の中で成長しているということは、自分の役割に価値を感じ、会社に将来性を見出している証拠。離職率が高くなりがちな金融業界においても、エンゲージメントの高い人材は簡単に転職を選ばず、組織への貢献を続けてくれる傾向があります。

なぜモチベーションが重要なのか

正確性、生産性、そして戦略的な貢献―。

金融業界の従業員が高いエンゲージメントを保っていれば、このすべてが向上します。ミスは減り、レポートの提出もスピーディかつ自信を持って行えるように。そして単なる数字の処理にとどまらず、有益なインサイトの提供を通じて、より的確な意思決定につながる可能性も高まります。

反対に、モチベーションが下がった状態が続くと、財務報告に誤りが生じたり、コスト削減の機会を逃したり、最悪の場合は不正リスクが高まることも。従業員が「もうどうでもいい」と感じてしまえば、組織全体にとって深刻なリスクになりかねません。

キャンベルスープ元CEOのダグ・コナント氏が言うように、「市場で勝つには、まず職場で勝たなければならない」 のです。

社員を「コスト(人的リソース)」ではなく「投資(人的資本)」として捉える視点が、これからの経営には欠かせません。人材を戦略の中心に据えれば、おのずと成果はついてくるはずです。

まず着手すべきは、自社のエンゲージメント状況を正しく把握すること。生産性の低下や離職率の上昇といった兆候が見られる場合、早急な対応が求められます。

次回の記事では、金融業界における従業員モチベーションを高める具体的な方法についてご紹介します。

まとめ

  • ストレスと燃え尽きはエンゲージメント低下の主因

高いプレッシャー、長時間労働、厳しい締切といった金融業界特有の環境は、ストレスやバーンアウトを引き起こし、従業員の離職やモチベーション低下につながります。

  • モチベーションの高い従業員は主体的で細部にも強い

エンゲージメントの高い人材は、業務の正確性やコンプライアンスを重視するだけでなく、自ら改善を提案し、業務効率化や戦略的貢献にも積極的に取り組みます。

  • 離職率の低さは高いエンゲージメントの証

従業員が長く組織に定着し、成長を続けている場合、それは高いモチベーションと職場への信頼を示す明確なサインです。

  • 従業員のモチベーションは、業務の精度・生産性・経営成果に直結する

エンゲージメントの高い従業員は、ミスが少なく、より迅速で質の高い仕事を行い、経営判断を支えるインサイトを提供する存在となります。

 

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