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社員の意欲を引き出すための10の実証済みメソッド

作成者: randstad|Jun 30, 2025 2:00:00 AM

社員のモチベーションは、組織の成果を左右する重要な要素です。生産性の向上、定着率の改善、そして収益性の強化にも直結します。とはいえ、成果につながるモチベーション施策を実現するには、自社の状況や従業員のニーズに合ったアプローチが欠かせません。

本記事では、エンゲージメントとモチベーションの向上に役立つ10の戦略をご紹介します。

それぞれの戦略が、従業員が意欲をもって力を発揮できる環境づくりにつながるヒントになるはずです。

 

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前回の記事でも取り上げたとおり、モチベーションの高い社員は、より良いビジネス成果を生み出す傾向があります。Gallupの調査によると、エンゲージメントが最も高いチームは、顧客評価が10%向上し、収益性は22%増、さらに生産性も21%高くなるという結果が出ています。

一方で、モチベーションが低い状態が続くと、離職率の上昇やパフォーマンスの低下といった課題につながり、ビジネス全体に悪影響を及ぼしかねません。

だからこそ、社員のモチベーションへの投資は「気分を上げるため」ではなく、「事業の成果を高めるため」に欠かせない取り組みなのです。

 

実践的で効果のある10の戦略

モチベーションに万能な解決策はありません。私たちは、チームの状況に応じた包括的なアプローチこそが、最も成果につながると感じています。ここでは、チームのモチベーションとエンゲージメントを高めるために活用できる、実証済みの実践的な10の戦略をご紹介します。

1. 社員をきちんと認める仕組みをつくる

人は、誰かに認められることで力を発揮します。日々の努力を継続的に称えることは、非常に強力なモチベーションの源です。最新のGallupの調査によると、「自分の働きが十分に評価されていない」と感じている社員は、1年以内に退職する可能性が2倍に上るとされています。

表彰の形はさまざまで、「月間MVP」や「社内表彰制度」のような制度的なものから、会議中のさりげない称賛やチャットでの感謝のメッセージなど、カジュアルな方法まで幅広くあります。大切なのは、継続性と誠実さです。

まずはシンプルなことから始めてみてください。たとえば、マネージャーが週に一度、具体的な成果に対して感謝を伝えるだけでも効果があります。また、社員同士で称賛し合える仕組みをつくると、チーム内の連帯感や心理的安全性の向上にもつながります。

さらに、会社のバリュー(価値観)と表彰を結びつけることで、社員の行動と企業文化の方向性を一致させることができます。たとえば、「挑戦」を重視する企業であれば、新しいアイデアを提案した社員を積極的に称えるといった取り組みが有効です。

2. キャリア開発の機会を提供する

キャリアの停滞はモチベーション低下の大きな要因です。毎日同じことの繰り返しでは誰でもやる気を失ってしまいます。しかし、新しいスキルを学んだり、新たな挑戦に取り組んだりすることで、社員はエネルギーを得て、組織へのコミットメントも高まります。

実際に最新のワークモニター調査でも、「学びや成長の機会がなければ退職を考える」と回答した人は全体の41%に上り、1年前の29%から大きく増加しています。この傾向からも分かる通り、学びの場を用意することは、社員のモチベーション維持だけでなく、離職防止にも直結します。

まずは、年次面談の場を活用して、社員と一緒にキャリア開発プランを作成することから始めるのがおすすめです。今後身につけたいスキルや目指すポジションを話し合い、明確な道筋を描きましょう。会社としては、研修予算の提供やストレッチプロジェクトへのアサインなどを通じて、学びと挑戦の機会を支援することが求められます。

また、若手とベテランをペアにするメンター制度は、現場の知見やキャリアの歩み方を学べる効果的な方法です。さらに、社内登用を積極的に行うことで、「成長すれば自分もチャンスを得られる」という希望を社員に与えることができます。

多くのハイパフォーマンス企業では社内研修と昇進の仕組みがしっかり整備されておりそれが社員のエンゲージメントや定着率の向上に寄与しています。

3. 自由に意見を交わせる環境をつくる

社員が意見を伝えやすく、情報がスムーズに共有される職場では、モチベーションやエンゲージメントが自然と高まりやすくなります。ここで言う「オープンなコミュニケーション」とは、単に情報を発信するだけでなく、社員の声に真摯に耳を傾ける姿勢のことです。自分の声が届いていると感じた社員は、会社の成功に対してより強い当事者意識を持つようになります。たとえば、小さなことでも「プロジェクト名の選定」や「オフィス環境の改善案」などに関わることで、モチベーションは大きく向上します。

まずは、定期的なミーティングを実施するところから始めてみましょう。チーム内の定例ミーティングに加えて、経営層とのQ&Aセッションや「何でも聞いてください」形式のタウンホールミーティングを四半期ごとに設けるのも効果的です。こうした場を通じて、会社の方向性への理解や信頼が深まり、自分が「会社の一員である」という実感が生まれます。

また、コミュニケーションの透明性も忘れてはなりません。経営に関する情報は、ポジティブな話題に限らず、難しい状況も正直に共有することが、信頼構築につながります。同時に、社員からの意見や提案を受け取るための仕組みも整備しておきましょう。意見箱、匿名アンケート、タウンホール形式の会議など、さまざまな手段を通じて、社員が安心して声を上げられる環境をつくることが重要です。

反対に、情報共有が不十分だと、社内に噂や不安が広がり、モチベーション低下を招くリスクがあります。だからこそ、双方向のコミュニケーションを日常的に促進する仕組みが求められます。

4. 自主性を尊重し、信頼を示す

社員に「あなたを信頼しています」と明確に示すことは、モチベーションを高めるうえで非常に効果的です。一方で、過度に細かく管理すると、「あなたを信用していません」というメッセージとして受け取られ、エンゲージメントの低下を招く可能性があります。重要なのは、ゴールを明確に設定しつつも、達成までのプロセスは社員に委ねることです。たとえば、カスタマーサービスのチームであれば、ガイドラインの範囲内で、スーパーバイザーの承認を得ずに対応を判断できる裁量を持たせるといった方法が考えられます。

こうした自由度があると、社員は自らの判断で仕事を進められるようになり、責任感と主体性が自然と育まれます。また、柔軟な働き方の導入も、自律性を高める有効な手段です。リモートワークやフレックスタイム制によって時間の使い方を自分で決められる環境が整えば、「自分の仕事を自分でコントロールしている」という感覚が得られます。こうした裁量のある働き方を通じて生まれた成果には、より強い誇りが伴い、たとえうまくいかなかった場合でも学びや改善への意欲が高まります。

これは「内発的動機づけ」を支える重要な要素であり、心理学的にも「自律性」はモチベーションの核を成すとされています。信頼を前提とした環境づくりは、社員の成長と組織の成果、双方にとってプラスの影響をもたらします。

 

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5. 公平な給与と福利厚生を整える

給与だけで長期的なモチベーションを保つことはできませんが、不公平な待遇は確実にやる気を下げてしまいます。社員が「正当な評価を受けていない」と感じた場合、どんな特典や称賛もそれを補うことはできません。だからこそ、業界水準に見合った給与、充実した福利厚生、公正な労働環境を提供するといった、基本的なことが大切です。

ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」でも示されているように、給与や雇用の安定は、仕事への満足感を高めるものではありませんが、これらが不十分であれば不満が生じるのは当然です。最低限、業界水準を満たし、社員に対して「大切にされている」と実感してもらえるような給与体系や健康保険制度、退職金制度などを整えましょう。

市場水準に合わせた給与の見直しも定期的に行うべきです。また、個別ニーズに応じた柔軟な福利厚生も有効です。例えば、育児休暇や在宅勤務制度を重視する人もいれば、研修費補助や追加の有給休暇を重視する人もいます。成果に応じたボーナスや利益分配制度も、貢献を直接報いる手段として有効です。

さらに、給与以外のインセンティブ、フレックスの導入や健康増進の取り組みなどもモチベーション向上に効果的です。そして何より、給与や昇給の仕組みを明確にし、社員がそのプロセスを理解し、納得できるようにすること。その透明性が信頼を生み、組織全体の士気を高めます。

6. ポジティブな職場の雰囲気づくり

職場の雰囲気は、社員のモチベーションに大きく影響します。実際、最新のワークモニター調査によると、ホワイトカラー・ブルーカラー問わず、10人中8人が「職場にコミュニティとしてのつながりを求めている」と回答しています。これは、「良い職場文化」は単なる理想ではなく、エンゲージメントの鍵であることを示しています。だからこそ、社員が価値を感じ、つながりを持てるような、支え合い・包摂的で、楽しく働ける環境づくりが重要です。

取り組みの第一歩としては、チームのつながりを深める機会を設けることです。たとえば、ランチ会やボランティア活動、チームビルディングのワークショップなどを通じて、社員同士が「仕事仲間」以上の関係を築けるようにするのが効果的です。こうした関係は、仕事上の支えにもなります。

また、マネージャーに対しても、尊重とインクルージョン(多様性の受容)を促進できるスキルを提供しましょう。多様性を祝福する文化をつくることで、誰もが「自分らしく」職場にいられるようになります。自分の存在が受け入れられていると感じられる職場では、日々のやる気も自然と高まります。

さらに、職場環境そのものも見逃せません。清潔で明るく、快適な空間は、気分や生産性にじわじわと好影響を与えます。オフィスであれば、無料のコーヒーやリラックスできる休憩スペース、グリーンの設置など、ちょっとした工夫で雰囲気は変わります。製造現場などでも、休憩所の快適さや設備の整備は大きな違いを生みます。

そして何より大切なのは、「助けを求めることが歓迎される」文化を育てること。ミスは責めるものではなく、学びの機会として捉えましょう。そうした職場には、「毎日ここに来たい」と思える空気が生まれ、チームのつながりも強まり、自然とモチベーションも高まります。

7. ウェルビーイングと働きやすさに配慮する

燃え尽きてしまった社員に、高いモチベーションは期待できません。だからこそ、ワークライフバランスと社員のウェルビーイング(心身の健康)へのサポートは、「あれば嬉しい福利厚生」ではなく、持続的なモチベーションへの直接的な投資です。

マネージャーやチームリーダーの立場からできることとしては、まず、社員にしっかりと休暇を取るよう促すこと。そして、業務時間外にメールやチャットの対応を求めないなど、仕事とプライベートの境界線を尊重する文化をつくることが重要です。また、家庭との両立を支援する柔軟な勤務体系の導入も効果的です。

さらに、ストレスの軽減を目的とした健康促進の取り組みも取り入れてみましょう。たとえば、ジムの会員費補助、メンタルヘルスの相談日、マインドフルネス講座などです。実際、ランスタッドではこうしたサポートを通じて、社員がより元気に、集中力を持って仕事に臨む姿を実現できるケースが少なくありません。

エンゲージメント調査でも、社員のウェルビーイングを優先する企業ほど、高い帰属意識と仕事への意欲を得られる傾向があると報告されています。反対に、常に疲弊している社員はモチベーションを失いやすく、やがてはよりバランスの取れた職場を求めて離職してしまうかもしれません。

最近では「ノーミーティング・フライデー」や、会社全体で休みを取る「メンタルヘルス・デー」など、組織として社員の回復を意識した取り組みを行う例も増えています。また、ライフスタイルに合わせた柔軟な始業・終業時間を導入する企業もあります。こうした制度は、社員への共感と信頼を表すものであり、結果的にモチベーションとエンゲージメントの向上につながります。

8. 明確な目標設定

チームのモチベーションを高めるうえで、マネージャーができる最も効果的なことのひとつは、「何が期待されているか」「それがなぜ重要か」を明確に伝えることです。SMART(具体的・測定可能性・達成可能性・現実性・期限)な目標設定は、社員にとって達成感を得られるだけでなく、仕事の方向性に迷わず取り組むための道しるべになります。

加えて、その目標が組織全体の成功とどうつながっているかを伝えることも大切です。たとえば、経理担当に「請求書処理を2日早める」とだけ伝えるのではなく、「キャッシュフローを改善して、新たなプロジェクトへの投資につなげる」という視点を加えると、業務の先にある意義が見え、やりがいがぐっと増します。

進捗が見える化されると、さらにモチベーションが高まります。目標に対する達成度をチームで共有できるよう、ダッシュボードや進捗グラフ、定期的なチェックインなどを活用してみてください。月間目標の達成やプロセス改善の成果など、小さな成功を一緒に喜ぶことが継続的な意欲につながります。

また、目標の設定に社員自身が関われるようにするのも効果的です。自分で関与した目標には、より強い当事者意識を持ち、達成への意欲も自然と高まります。

こうした取り組みによって、業務の目的が明確になり、不安や混乱を防げるだけでなく、「自分の仕事が会社に貢献している」という実感を育むことができます。貢献の実感がある社員は、より主体的で、エンゲージメントの高い存在になっていくでしょう。

9. 目的意識を育てる

社員のエンゲージメントやモチベーション、そして長期的なコミットメントを高めるために欠かせないのが、「自分の仕事には意味がある」という目的意識です。マネージャーやリーダーの立場からは、まず会社のミッションや価値観を明確にし、社員一人ひとりの役割がその全体像とどうつながっているかを丁寧に伝えることが重要です。

たとえば、自社のサービスや製品がどのように顧客や社会、あるいは業界全体に影響を与えているのかを、日頃から継続的に共有することで、日々の業務の先にある「社会的な意義」を実感しやすくなります。

また、ボランティア活動やサステナビリティ施策、地域貢献など、企業の社会的責任(CSR)に関わる機会を提供するのも効果的です。社会貢献の一端を担っていると感じることで、仕事へのモチベーションがより内発的なものへと変わっていきます。

加えて、社員の声に耳を傾け、フィードバックを積極的に取り入れる文化も大切です。成長や学びを重視する企業文化、メンター制度、キャリア開発の機会などがあれば、社員は自分の成長と会社の未来を重ねて考えやすくなります。

10. エンゲージメントの可視化と継続的な改善

モチベーションやエンゲージメントの向上は「一度きりの取り組み」ではなく、継続的に取り組むべきプロセスです。そのためには、定期的に社員の声を集め、現在の状態を可視化する仕組みが必要です。

たとえば、年に1回の詳細なエンゲージメント調査に加えて、四半期ごとの「パルス調査」など、簡易なアンケートを実施することで、タイムリーな状況把握が可能になります。調査項目としては、仕事の満足度、上司からのサポート、認識されている実感などが挙げられます。

さらに、社内の有志メンバーによるエンゲージメント委員会のような形で、現場から直接インサイトを集めることも有効です。部署を超えた視点からのフィードバックは、経営層にとっても貴重なヒントになります。

そして、何よりも重要なのが「フィードバックを行動につなげること」です。たとえば、調査で「成長機会が不足している」という声が多かった場合、具体的な研修プログラムやキャリア支援策を打ち出すなど、社員の声が実際の変化につながることで、組織に対する信頼が深まり、エンゲージメントも向上します。

このように、戦略を実施 → フィードバックを受ける → 改善する、という循環を組織として大切にすることで、モチベーション向上の取り組みはより実効性の高いものになっていくはずです。

まとめ:社員のモチベーションを高める10の戦略

  1. 社員をきちんと認める仕組みをつくる
  2. キャリア開発の機会を提供する
  3. 自由に意見を交わせる環境をつくる
  4. 自主性を尊重し、信頼を示す
  5. 公平な給与と福利厚生を整える
  6. ポジティブな職場の雰囲気づくり
  7. ウェルビーイングと働きやすさに配慮する
  8. 明確な目標を設定
  9. 目的意識を育てる
  10. エンゲージメントの可視化と継続的な改善

結論:まずは一歩踏み出すことから

社員のモチベーションを高めるために、できることはたくさんあります。とはいえ、すべてを一度にやろうとする必要はありません。まずは自社の現状や課題に合った施策をいくつか選び、具体的なアクションプランに落とし込んでみましょう。

たとえば、「月に一度の称賛メッセージを送る」といったシンプルな取り組みから始めても構いません。その一方で、中長期的には「エンゲージメント調査の実施」や「マネージャー向けのトレーニングプログラムの設計」といった仕組みづくりに着手していくとよいでしょう。

モチベーションが高い社員は、仕事への満足度が高く、離職率の低下やイノベーションの創出にもつながります。つまり、「社員の意欲を育む」ということは、そのまま組織全体の持続的な成長への投資でもあるのです。

もし、これらの戦略を効率的かつ体系的に導入したい場合は、ぜひ弊社の実装ガイドをご活用ください!



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