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これからの物流業界は? ~ドライバー職の未来を考える~|ランスタッド法人ブログ

作成者: randstad|May 30, 2021 3:00:00 PM

「2024年4月1日」じりじりと迫ってくる日付

 運送に携わる人なら、この日付にピンとくる方も多いはず。『働き方改革』を旗印に改正された労働基準法の残業規制が、いよいよドライバーにも適用され、いっそうの長時間労働抑制が法律によって義務化されるのが2024年4月です

 私の前職は運送会社です。ドライバーが「運ちゃん」と呼ばれ親しまれていた時代、彼らの醍醐味は「長い時間を働き、多くの収入を得る」ことでした。企業に属しながらも一人親方のようなスタイルが一般的で、どこか自由を感じる。私はそんな働き方に憧れて運送業界に飛び込んだ一人です。

 しかし、業界は長く逆境に苦しめられてきました。強くなる規制が「自由」を求める働き手の人気を遠ざけ、人手不足にあえぐ。それがさらに働く環境を厳しくする。皆さまの中には、このジレンマを痛感される方も多いのではないでしょうか。

 だからこそ私は、今改めて考えたいのです。働く人を守るためのルールが、業界を悩ませませる現状をどう捉え、何をすべきなのか。まずは背景から紐解いていきましょう。

■ 何故、今のような状況になったのか?

 運送業界では長時間労働が当たり前とされてきました。
 1984年11月、全日本運輸産業労働組合連合会(以下、運輸総連)が行ったトラックターミナルなどにおける約1万人を対象とした調査では、拘束時間が24時間を超える者が5割強にも及び、96時間以上の方が1割いました。
当時の労働省(現厚生労働省)は、1979年に一日の拘束時間を16時間以内とする通達を出していましたが、同調査では16時間以内としたドライバーは全体の4分の1でした。

 この結果を受け、運輸総連は自動車運転手の労働時間の改善基準の法制化を働きかけます。その結果、1989年には自動車運転者の労働時間等の改善のための基準、いわゆる「改善基準告示」が労働大臣告示として出され、その後も改正が重ねられていくこととなっていったわけです。

 そこから行政の監査体制の強化が始まります。監督実施件数が増加するにしたがって、”長時間労働の改善”は進んだものの、労働時間の減少は、ドライバーの魅力でもあった高収入という図式崩壊をもたらしました。給与水準は求職者が職業を選択する最も大きな動機のひとつ。この魅力が失われたことで、ドライバー職の人気は次第に下降線をたどります。

減らない法令違反 ドライバーの希望と背反

 

 「(多くの収入を得るために)多くの時間を働きたい」。貴社にもこんな申し出をされるドライバーさんはいませんか?当社へ来社される求職者からは、このような希望が多く聞かれます。かつてのように、好きなだけ長く働いて、その分高い報酬を得る。こうした要望は十分理解できます。

 ですが、当社で注力するのは長時間労働ではなく、資格取得やキャリア開発によるステップアップとそれに伴う収入を増やすサポートです。同時に法令の背景やルールのしくみをわかりやすく解説し、働く人が「なぜ」「どのように」「何を目指して」働くのか、納得感のある就業を大切にしています。

 ではなぜこうも複雑な規制があるのか。「国が決めたルールだから」。それだけでは済まされない、違反のリスクとルールの必然を見ていきましょう。

■ 働き方改革と改善基準告示

 一般企業では働き方改革関連法による時間外労働=残業の罰則付き上限規制が2019年4月からスタート(中小企業は2020年4月)し、トラック運送業界においては2024年4月1日から、この上限規制が適用されることになっています。ただし、改善基準告示で定める年間拘束時間の上限は3,516時間、これでは働き方改革による残業の上限規制に比べて216時間長くなってしまいます。

 となると告示における年間拘束時間の上限も短縮されることが予想され、現状でも拘束時間を守ることがままならない運送事業者にとってはますます厳しい時代到来が想定されます。

 しかし、ここで注意が必要なのは、改善基準告示でいう労働者とは、給料をもらって働いている人、ということです。一人親方や社長が自分自身で自動車を運転している場合には対象とはなりません。給料をもらって働いている4輪以上の車両を運転する職業の労働者を対象としているわけです。依って、緑ナンバー、白ナンバーには関係なく、自家用トラックを毎日運転して配達をしている人なども対象になるということです。

【厚労省:改善基準告示のポイント】
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040330-10.pdf

■ 2019年に改正された改善基準の違反による行政処分の書類

 各地方運輸局による監査の結果、悪質な法令違反があった場合、運送会社には行政処分が下されます。監査は輸送の安全確保に影響のある重要な法令違反が疑われる事業者に対して優先的になされ、また過去の監査や行政処分の状況、利用者からの苦情などの観点からも実施されます。
 行政処分の種類としては、車両使用停止、事業停止、許可取消などがあります。車両使用停止は「処分日車制度」と呼ばれ、一定期間、運輸局にナンバーを返納し、車両を使用できなくなるものです。

■ 車両使用停止

 車両使用停止は、帳簿類の改ざん、点呼の一部未実施、健康診断未受診者2名以上などで処分日車制度が適用されます。
 200日車(1台200日間稼働させることができない)を超える車両停止処分を受けた場合は、インターネット上などに違反事業者名が公表されます(ネガティブリストと言います)。また行政処分を受けたのち、3年以内に再び同様の違反をした場合、処分日数は倍になるので注意して下さい。
 企業イメージを広く損なうだけでなく、車両を動かせなくなるため企業収益にも大きな影響を及ぼしますので避けたいところです。

 

2021年を未来へ備えるスタートに。今、「やるべきこと」と「できること」

 クライアント企業様とお話をしていると、長時間労働の抑制のために労務時間を減らしたくても、雇用条件の問題であったり、従業員の収入確保を考えると難しい、というお声を数多く伺います。そこに着手し改善するには、時間も労力も多く、何より気持ちの負担が足かせとなりがちです。

人材サービスを賢く使って、課題を整理してみては
 ・自社では、思うように進まない
 ・わかってはいるけど、何からやっていいか具体的な検討ができていない

 そんな時は、外部へアドバイスを求めてみるのも一考です。人材サービスを提供する会社であれば専門の知見と、第三者の冷静な視点で現在の課題への示唆が見えてくるかもしれません。

 ご利用の派遣会社からの適切な助言を受けられるよう、一度ご相談をしてみてはいかがでしょうか。困った時に正しい情報をきちんと提供し、頼れる相談相手であること。2024年への備え、そしてその先の時代もドライバーが安全で魅力的な職業であるために必要なのは、そんなパートナーの存在ではないでしょうか。

 ランスタッドは、クライアント各企業様の運行状況をお伺いし、それぞれの状況に応じた最適なご提案を行っております。コンプライアンス体制、順法への備え、人材活用に関するお悩み、ぜひお聞かせください。

  • 派遣会社へ適用される法令はもちろん、クライアント企業様の法令順守をサポートします
  • 専門知識あるコンサルタントが貴社の状況に応じたご提案と運用を準備します
  • 健康診断・初任診断・運転記録証明などの必要な書類はすべてご提供いたします
  • ドライバーの安全教育・労務管理サポートもお任せください


【筆者紹介】

狩野 政典 (かりの まさのり)

ランスタッド DR事業部
所沢⽀店 ⽀店⻑

2005年、運送会社からの転職を機にドライバー派遣に出会う。
2008年ランスタッド前身のアイライン入社。以後、DR事業部のさいたま・所沢で多岐に渡るポジションを経験し
DR所沢支店長着任。ドライバー、スポット派遣、製造・物流・事務派遣、請負事業と、幅広く経験!

【ランスタッド ドライバー事業部】

世界最大級の総合人材サービス  ランスタッドで、ドライバーだけに特化した事業を行っています。
運輸・運送業に精通した専任者が採用から教育、フォローまでを行い、徹底した安全への意識を事業の根幹とするプロ集団です。