「コストセンターからプロフィットセンターへ」というキーワードが一時期はやりました。センターの生産性向上とはそもそも何でしょうか。限られた人数でより多くのコール対応をすること?同じコール量をなるべく安いコストで対応できる組織にすること?それともアップセル・クロスセルに注力して売上貢献をすること?どれも間違ってはいません。しかし、根本的な見方は別のところにあります。
品質と生産性は相反するものと思い込んでいるセンターがまだ多いようです。つまり、丁寧な対応をすれば応答時間が長くなり生産性は落ちる、生産性を上げようとすれば、早口になり、1コールごとの応対は雑になる、という見方です。
実は品質をあげれば自ずと生産性はあがるのだということを理解してください。オペレーションスキルが上がれば、お客様のニーズをすぐさま理解でき(訊くスキル)、説明も手短でわかりやすく納得感のある伝え方ができ(話すスキル・伝えるスキル)、業務知識が身につけばFAQ検索をしなくても即答できます。結果としてトークタイムも短くなり、より多くのお客様対応ができるのです。
コールセンターではさまざまなKPI(Key Performance Indicators:主要管理指標)データがシステムから抽出できます。しかし、毎月の総受電数、応答率、呼損率、稼働率、平均処理時間(AHT・ ATT・ACW)などの月次集計を「センター全体の結果」として報告することのみが目的となってしまっているセンターは少なくありません。
しかし重要なのは、システムからはじき出される膨大なデータの中で、何をメインに見るべきか、それに対してどんな対策を打つべきか、なのです。
そのためには、センター全体の集計報告書とは別に、コミュニケータ個々のデータを分析することをまずお薦めしています。例えば、個々の応対スキル(コールモニタリング評価ポイント等)を縦軸に、応対処理件数やAHTなどを横軸にプロットしてグラフを作ってみると、一人ひとりがどこに位置しているのかが明確になります。それをグルーピングすれば、誰にどんな教育を施せばスキルを伸ばせるかが見えてくるのです。
問題解決のヒントは必ず「現場」に潜んでいます。だからこそデータをつぶさに科学する必要があるのです。
コール量には時間帯別、曜日別、月別、シーズン別に波があります。センター管理者の最も大きな悩みが適正人員配置です。放棄呼を極力出さずにいかに最適な人員シフトを組むか、コール量の山谷に合わせて最低必要人材を配置できれば無駄のない適正コストでセンター運営ができます。
しかし、実態は1時間単位でコミュニケータを雇うことはできません。フルタイムとパートタイムをうまく組み合わせれば理想に近いシフト配置が目指せますが、シフト管理が複雑になり管理コストが上がってしまうというジレンマが発生します。
大規模なセンターではWFM(Workforce Management)という「高価な」システムが自動計算でこれらの問題をある程度解決してくれますが、日本ではまだまだ手作業レベルでコール予測と適正人員配置、シフト調整をしているのが実態です。しかし、WFMシステムの有無に関わらず、パラメータとして元になる入力データはやはり過去データの蓄積から生まれます。
センター生産性向上のための鍵はやはり「現場」に常に潜んでいるのです。
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。