コミュニケータも人間ですので、当然気持ちの乱高下があります。モチベーションアップのためには、自社のセンターではどの時期にどんな理由でコミュニケータのモチベーションが低下するのか、という「モチベーションカーブ」をまず把握することが重要です。これは初期教育期間をどれだけみるべきか、という指標にもなります。
センターによっても異なりますが、一般的にモチベーションダウンが多く見られる時期は、初期研修が始まって1カ月目、次がデビューしてから3カ月目くらい、その次が6カ月後と、3カ月クールくらいでアップダウンがあることが多いようです。しかし、一度ダウンしてしまったら最後、モチベーションを元に戻すだけでも大変な苦労が伴います。ですから、このアップダウンの波の傾向をつかみ、低下し始める前に先手を打ち、適切な対策を講じる必要があるのです。
初期研修の時期でのモチベーションダウンは自信喪失型が多いと言えます。
といった理由でデビュー前に脱落してしまうのです。これを防ぐには、座学一辺倒の一方的な詰め込み型長期研修は避け、バリエーション豊かなカリキュラムで飽きさせない研修体系を組む必要があります。
たとえば、
といったことも有効でしょう。スキルベースルーティングを導入しているセンターであれば10のうち3つ覚えたら顧客対応で実践、次の3つを覚えるための研修訓練、そしてまた実践と、段階的に業務を体得してもらうことです。また、大切なのは業務を覚えさせるのではなく、どこに回答があるかすぐ検索できるように育てることです。
また、3ヶ月、6ヶ月とある程度慣れてくると、自信はついてきますが、逆に、
といった声が聞こえ始めるのです。実はこの類のモチベーションダウンを防ぐのは、初期教育の中でどれだけ帰属意識や同期意識を刷り込めたかにかかってきます。インセンティブは実はその場しのぎであることが多いのです。会社の方向性やビジョン、センターの方針やポリシーをしっかりと根付かせれば「心の揺れ」は少なくなります。そのロイヤルティの醸成を前提とした上で、さらに、
といったことが施行できればかなり有効な対策として活きてきます。
モチベーションカーブ把握の基本となるのは、一人ひとりの不平や不満の発生兆候をつかむことから始まります。コミュニケータとの日々のコミュニケーションの中でモチベーションダウンの兆候をすばやくつかむことが重要ですが、例えば「日報制度」の活用をすることで不平不満のアラームを早期に発見することも有効です。そして不安や不満はその日のうちに解消させ、翌日以降に絶対に持ち越さないこと。「不平の芽は早めに摘み取る」、これを怠ってしまうと不平不満はどんどん積もって取り返しのつかない事態に陥ります。管理社員やSVの日々の気遣いとマメなマインドフォローによる早期対応を実行するだけでかなりのモチベーションダウンは防げるのです。
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。