CS(Customer Satisfaction)=顧客満足度を向上させることが重要ということが言われ始めて早10年は経ったでしょうか。しかし、商品やサービスを提供する側がお客さまに満足していただくことは商売の原点として当たり前のことで、それがもともとしっかりできている会社がファンを増やし、業績を伸ばしているわけです。
お客さまが満足するか不満のままなのかは個人差があります。つまり期待度の大きさ次第で満足・不満足が決められるわけです。不満足のお客さまは悪い噂を周りの20人に言うと言われています。知人・友人を引き連れてその会社から離反していくわけです。
逆に苦情クレームを言ってきたお客さまにきちんと対応・解決したことで逆にファンになるケースもあります。期待度が高いからこそクレームを言ってくるからで、解決したときにそれが反動として表れるからです。何も言ってこないお客さまのほうが実は企業にとっては脅威だということです。
企業としてCSを考えるときに、お客さまを集団として捉えずに「個客」として受け止めなければCS実現は程遠いものになります。ですから顧客接点の最前線であるコールセンターの役割が重要となるのです。
お客さまは購入した商品やサービスに何か疑問が生じたり、不満を持ったときにコールセンターに電話をしてきます。しかし、「ただいま大変混み合っております。このまましばらくお待ちいただくか、おかけ直しください」とか、「本日は終了しております。平日 9:00から夕方17:00までの間におかけ直しください」いうアナウンスに失望した経験をお持ちの方は大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
コールセンターにアクセスしてくるお客さまが満足する基準とは次の3つに集約されます。
大量のコミュニケータを24時間配置して放棄呼が出ないことが理想ですが、それではコスト倒れになります。また新人コミュニケータがしどろもどろで対応していたのでは不満は募るばかり。もちろん「たらい回し」は論外です。
こういったことを解決するために、「あふれ呼」を第2センターに転送したり、IVRを導入して、回答可能なコミュニケータにコールを振り分けたり、時間外はIVRの音声ガイダンスで誘導し音声情報を提供したりする必要があるのです。
また、誰でも電話がいいとは限りません。人によってはWEBやe-Mailを選びます。アクセスチャネルを選ぶのはお客さまなのです。コンタクト情報が共有化されたいわゆるマルチコンタクトセンターがCS向上に貢献することは言うまでもありません。
ES(Employee Satisfaction)=従業員満足なくしてCSは実現できない、とはよく言われることです。センターでの仕事に不満だらけのコミュニケータが多いセンターはCS実現以前の問題です。コミュニケータがしっかり夢や目標を持ち、働きやすい環境を提供することはSVやマネージャーの職務であり会社の責任でもあります。計画的な採用・教育体制、SV育成プログラム、適正な評価制度、キャリアアップ制度、モチベーションマネジメントなどをしっかり構築しているセンターは離職を防ぎ、応対品質も維持向上できるのです。
また、CS調査(顧客満足度調査)を定期的に実施していくことも必要です。できれば半年に1回は実行したいものです。定期的に行なっているセンターは品質も高く安定する傾向にあります。
CS調査だけでなく、コールセンターには商品やサービス改善のために必要な情報とヒントが大量に蓄積されます。昨今話題のVOC(Voice of Customer)=顧客の生の声をきちんと分類集計し、企業の中枢や企画・開発セクションなどにきちんとフィードバックできる体制を組んでおけば、センターの社内での位置づけは一段とあがり、そこで働くスタッフのモチベーションも高くなるのです。
コールセンター専門コンサルタント 鈴木 誠 (すずき・まこと)
コールセンター新規設立やセンターの現状分析、改革に関するコンサルティング業務の中で、戦略立案、センターマネジメント確立、人材育成、品質向上、生産性アップ、スクリプト開発など幅広いノウハウを実務レベルで提供。セミナー講演やJTAスクール「スクリプト作成講座」の常任講師も担当。
*本記事は過去に公開した内容を再編集して掲載しております。