「2028年には日本のトラックドライバーは約28万人不足する。」
これは2018年に鉄道貨物協会が試算したドライバーと物流の需給バランス予測によるもの。深刻なドライバー不足を物語る数字です。
有効求人倍率の推移を見ても、全産業に比して特に顕著な不足が見られます。
増え続ける物量に対し、ドライバーの高齢化や新規就業者数の伸び悩み。近年はドライバーの人材確保は、ますます逼迫した課題となっていました。
コロナ禍がやってくるまでは。
緊急事態宣言が発令されると、多く経済活動、社会活動がストップ。これに伴い一部のEC関連、日用品などを除き、物流の動きもいっきに鈍化します。運ぶモノがないのなら、それを運ぶドライバーも必要ない。あれだけ不足が叫ばれたドライバーが、一転買い手市場となりました。
緊急事態が解除され、国を挙げた回復の動きが見えてきた現在でも「元どおり」というわけにはいきません。
with コロナ。「長期戦」とも「リーマン超え」とも言われるこれからの物流業界を取り巻く環境はどうなるのでしょうか。
不透明な先行きを、ドライバー需要の視点で考えます。
冒頭のグラフに話を戻します。
2020年の現在まで、一貫して右肩上がりの傾向を示す2本の曲線に1か所、大きな凹みが見られるのが平成20年(2008年)のリーマンブラザーズ破綻を端緒としたリーマンショックです。
この時期、やはり雇用が大幅に冷えこみました。トラックドライバーも需要が減少し、2009年には有効求人倍率が全産業の平均をさらに下回る水準を記録しています。
ただその後の回復は目覚ましく需要の底だった平成21年(2009年)から2年後には全産業平均を上回り、翌年には有効求人倍率1.0を回復しています。リーマンショックから、その回復期にかけての物流業界の環境を整理してみましょう。
需要 | 人材 |
経済拡大による物量の回復 | 物流事業参入企業の増加 |
IOTの発展に伴うEコマースの普及 | 新規就業者の増加→ベースとして潤沢な人材 |
つまり、リーマンショックからの景気回復に呼応して物量が戻りはじめると、それ以前の規制緩和による事業者増加に伴い、だぶつていたドライバーがそれに対応して運送・輸送を担うようになり、物流業界全体の需給バランスをうまく保つことができたのです。
では、今回のコロナショックではどうでしょう。
労働市場 |
リーマンショック |
コロナショック |
生産年齢人口 | 約8,149万人 | 約7,341万人 |
人口に占める高齢者割合 | 約23% | 約29% |
トラックドライバー需給バランス | 約▲8万人不足 | 約▲14万人不足 |
平成23年(2010年)トラックドライバーの需給は不足に転じ、以降、全産業を上回るペースで人手不足が加速していきます。
背景にあるのは人口構造の変化です。上の表のとおり、リーマンショック時と比べ働く人の全体数が減少しており、そこに輪をかけてトラックドライバーへの新規就業の減少が影を落としています。
労働市場における圧倒的な「なり手」の不足。これがリーマンショックとコロナショックの大きな違いです。
この後の景気回復が急激な物量の増加をもたらしたとしても、リーマンショックからの回復期と同じように、需給のバランスを図ることは容易ではありません。さらに今回のコロナ禍を契機にとしたドライバー離職が増加すれば、これからのドライバー探しはいっそう難しくなるでしょう。
とはいえ物流は市場の動きに連動するもの。運ぶモノが減少すれば、それを運ぶドライバーもそう多くは必要ありません。今後のために、採用費と人件費を投じて人材を確保するには相応のリスクも伴います。感染拡大の第2波が警戒される現在、需要拡大の時期も不透明と言わざるを得ません。
間断なく変化する需要への対応と、機動的な人材の確保。難しい舵取りには、「柔軟な人材の活用」がひとつの糸口になるかもしれません。
「柔軟性」だけではありません!
ランスタッドのドライバー派遣は、万全の研修と管理システムで、安全と生産性をお約束します。
運輸、運送、ドライバーに関する課題、ぜひ一度ご相談ください。